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世界最高峰のウィーン国立歌劇場が贈る非日常へ誘うオペラの世界

ISSUED | 2016.09

 

photo:Wiener Staatsoper/Michael Poehn、Wiener Staatsoper/Axel Zeininger

古くからヨーロッパの貴族を中心に愛されてきたオペラ。 舞台を構成するすべてのものが調和したとき、その空間は素晴らしい感動に包まれる。 優雅で、贅沢で、非日常。オペラは究極の芸術といっても間違いないだろう。

音楽評論家 石戸谷 結子さんが語るウィーン国立歌劇場の魅力

オペラの頂点といえば「ウィーン国立歌劇場」。 その魅力を知ってこそ、オペラを語るにふさわしい。

「オペラの殿堂」ウィーン国立歌劇場

ベートーヴェンやモーツァルト、シューベルトやブラームスといった楽聖たちが活躍した音楽の都ウィーン。
かつてはハプスブルグ帝国が華やかな宮廷文化を花開かせた栄光の都。そのウィーンの街の中心に、今も昔も変わらない姿で威容を誇っているのが、ウィーン国立歌劇場だ。馬に乗ったミューズ象を左右の肩に載せ、頭上にはハプスブルグ家の紋章と王冠が飾られている。まさに「オペラの殿堂」にふさわしい堂々たる歌劇場だ。

歴史を遡ると、1868年にオーストリー=ハンガリー二重帝国の宮廷歌劇場として、フランツ・ヨーゼフ1世の命により建設。しかし第2次世界大戦中の1945年には空襲を受けて破壊され、1955年に再開場した。これまで歴史に名を残した総監督は、作曲家のグスタフ・マーラーやリヒャルト・シュトラウス、指揮者のカール・ベームやヘルベルト・フォン・カラヤンなど錚々たる顔ぶれが並ぶ。そして2002年から2010年までは、我らが小澤征爾が音楽監督を務めた。

歌劇場の外観はちょっと厳めしいけれど、一歩中に足を踏み入れると、そこには日常を超越した優雅な空間が広がっている。吹き抜けの中央階段を上ると、豪華な絵画に彩られたサロンやロビーが続く。かつては王侯貴族たちが集い、いまはドレスアップした市民たちが、オペラ談義に花を咲かせる。劇場内部は、黄金色と赤をふんだんに使った絢爛たる空間だ。5層に分かれた馬蹄形の桟敷席からは、客席の姿が良く見える。オペラハウスは、結婚相手や不倫相手を品定めする社交の場としても機能していたのだ。

いまもその伝統は続いていて、2月のオペラ座舞踏会では1階の客席が取り払われ舞踏会場に変身。社交界デビューする盛装した120組の紳士、淑女によって、左回りの優雅なワルツが披露される。

ウィーン国立歌劇場が、オペラの殿堂と呼ばれる理由はいろいろある。9月から6月までのシーズンにはほぼ毎日、オペラかバレエが上演される。プラシド・ドミンゴやアンナ・ネトレプコといったスーパースターが常時登場し、公演の質の高さは折り紙つき。そしてオーケストラピットに入る歌劇場管弦楽団は、世界最高のオーケストラ、ウィーン・フィルの母体。柔らかく典雅な響きは、他の歌劇場では決して味うことのできない贅沢な楽しみだ。

その世界に冠たるウィーン国立歌劇場が、この秋日本にやって来る。オーケストラから合唱団、バレエ団に名ソリストたち、そして裏方まで総勢450名を超える大集団による、まさに「引っ越し」公演だ。指揮者には、あの世界最高人気を誇るリッカルド・ムーティの名も挙がる。オペラは総合芸術。歌手はもちろんのことだが、オーケストラ、指揮者、合唱団、演出と舞台装置、その全てのクオリティが調和してこそ、感動が生まれるのだ。

そうとなれば、この機会を逃さない手はない!オペラファンもそうでない方も、この秋はぜひともオペラ鑑賞に没頭してみよう。

心地よい緊張感の中、オペラの世界が幕を開ける

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