AFFLUENT monthly features 特集記事

新春浅草歌舞伎でニッポンを楽しむ

ISSUED | 2017.11

 

今や世界中の人々を魅了する、日本が誇る伝統芸能「歌舞伎」。
日本には、「侘び寂び」のように、感性を大事にする文化がある。
歌舞伎の華やかさ、ユーモア、そして美しさは、そんな私たち日本人の感性をくすぐり続け、
誕生から400年を経て、「クールジャパン」の代名詞的存在として、ますますその注目度が高まっている。
今や歌舞伎を観るということは、日本人のたしなみだと思う。

2017年「新春浅草歌舞伎」より「棒しばり」(右・次郎冠者:尾上松也、左・太郎冠者:坂東巳之助)舞台写真提供:松竹株式会社

ショービジネスの街 浅草が華やぐ! 浅草から始める歌舞伎ライフ!

日本文化を感じられる街として、海外からの観光客にも人気の浅草。 実はこの浅草、伝統芸能の歌舞伎とは、切っても切れない縁があるのだ

歌舞伎初心者にもおすすめ新春浅草歌舞伎の楽しみ方

伝統芸能と聞いて「歌舞伎」と答える人は多い。歌舞伎は演者を含めていつの時代も常に注目を集める、日本を代表するエンターテイメントだ。しかし、「歌舞伎は難しい」「敷居が高い」などの理由から、実際に公演を観たことが無い人が多いのも事実。気になる存在ではあるが観たことはない。歌舞伎とは実に不思議な存在だ。そこで今回の特集では、歌舞伎未体験の方におすすめの、「新春浅草歌舞伎」をピックアップする。

今でこそ、歌舞伎=浅草と連想できる人は少ないと思うが、江戸時代、浅草は江戸随一の繁華街として栄え、現在の浅草公会堂のある場所からほど近い猿若町には、江戸三座と呼ばれる幕府公認の芝居小屋があり、日常的に歌舞伎が上演されていたのだ。
戦後、浅草での歌舞伎興行はしばらく途絶えていたが、もう一度浅草に歌舞伎を呼び戻そうという機運が高まり、昭和55年に「初春花形歌舞伎」として興行を復活。以降、花形(若手)役者が出演する、初心者でも気軽に楽しめる歌舞伎として定着し、現在は「新春浅草歌舞伎」として、新たな歌舞伎ファンを増やしながら、新春の風物詩として親しまれている。

  • お客様をお出迎えする浅草の芸者衆。 この「浅草総見」も楽しみの一つだ。

  • 「着物で歌舞伎」の日には、劇場スタッフも着物でお客様をお出迎え。着物で観劇すると記念品がもらえる、お正月公演ならではの催し。

  • 「浅草総見」のために、浅草の芸者 衆が人力車で会場に乗り付ける。

  • 会場となる浅草公会堂前には、上演演目 の場面を描いた「絵看板」や、役者の名前を書いた「招き看板」が掲げられる。

普段は観ることができない花形役者演じる大役がみどころ

伝統芸能である歌舞伎では、経験を多く積んでこそ一人前と認められるため、大役はベテランの俳優が勤めることが多く、若手が演じることは少ない。そんな歌舞伎公演の中で、「新春浅草歌舞伎」では若い俳優に大役を任せ、〝若手歌舞伎俳優の登竜門〞として上演が行われている。若手が古典歌舞伎から新歌舞伎、舞踊の大役に取り組み、成長・飛躍の場として活躍する。そんな次代の歌舞伎界を背負う俳優たちを観られるのが、「新春浅草歌舞伎」の楽しみの一つなのだ。

最近の出演者をみても、市川猿之助、片岡愛之助、中村獅童、中村勘九郎、中村七之助や市川海老蔵など、今では大舞台で主役をはるスターたちばかりだ。そして、平成30年新春の出演者には、4年連続の出演となる最年長の尾上松也を筆頭に、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人という7人の花形が決定。早くも話題となっている。公演の第1部、第2部の開幕に先立ち、出演する俳優が公演ごとに交代で登場し、年始のご挨拶を行う「お年玉 〈年始ご挨拶〉」。これも通常の歌舞伎公演では見ることのできない、「新春浅草歌舞伎」ならではの楽しみだ。25日間の公演期間、浅草の街中には公演ポスターが飾られ、まさに浅草あげての催しとなる「新春浅草歌舞伎」。

歌舞伎には、日本人が好むユーモアがあり、ぞくっとするような美しい立ち居振る舞いがあり、それが私たちの心にズンと響く面白さがある。日本の伝統、しきたりが色濃く残る正月に、日本を代表する伝統芸能の歌舞伎を楽しむ。そんな華やかな新春の過ごし方なら、きっと良い一年が過ごせるに違いない。

公演概要

会期: 2018年1月2日(火)~1月26日(金)
第1部: 11:00~/第2部: 15:00~(予定)
※1月20日(土)第2部は、「着物で歌舞伎」の日

 
  • チケット情報 11月20日(月)午前10時より電話予約・Web販売開始●チケットホン松竹(10:00 ~18:00) ナビダイヤル 0570-000-489または03-6745-0888 ●窓口販売所 11月22日(水)~歌舞伎座、新橋演舞場、大阪松竹座、サンシャイン劇場 12月20日(水)~浅草公会堂
  • 観劇料金 1等席 9,000円/2等席 6,000円/ 3等席 3,000円※すべて税込お問合せ:チケットホン松竹(10:00~18:00) ナビダイヤル0570-000-489

2017年公演より「双蝶々曲輪日記 角力場(ふたつちょうちょうくるわにっきすもうば」の一場面。江戸時代も随一の人気を誇った「相撲」を題材にした庶民の話「世話物」の芝居で、松也さんが演じるのは、放駒長吉(はなれごまちょうきち)という素人相撲取り。

[二代目 尾上松也インタビュー]
これで良いと思ったら役者はそれで終わりその多才さで、多方面に活躍の場を広げながら、常に観客を魅了するための〝熱量〞にこだわる若き歌舞伎俳優

大好きな歌舞伎の舞台だからこそどんな仕事にも全力で取り組む

2018年1月の「新春浅草歌舞 伎」で、4年連続6回目の出演が決まった尾上松也さん。テレビドラマやミュージカル、声優としても活躍するなど、人気、実力ともに若手をけん引する存在となった松也さんは、今年もリーダー的な立場で「新春浅草歌舞伎」に取り組む。
松也さん「『新春浅草歌舞伎』は正月の公演ということもあり、その年最初の目標となる舞台です。盛況で終えられるかどうか、その後の一年につながる、私にとってとても重要な舞台です」

今回松也さんへの取材を行ったのは10月の初旬。テレビドラマ出演に加え、歌舞伎座での新作公演で多忙を極める中時間をいただいたのだが、そもそも歌舞伎は、一つの公演が休みなく25日間続き、それが毎月繰り返される。当然人気俳優である松也さんは毎月公演があり、さぞコンディションを維持するのが大変だろうと思い、質問をぶつけてみた。

松也さん「正直コンディションはなかなかコントロールできません。特にテレビの撮影と歌舞伎の舞台が重なると、かなりハードですし、きつい。それに気を付けていたって風邪はひくときはひきますしね。ですので、コンディションを維持することよりも、いかにモチベーションを高く保つかを意識しています。たとえば、その日の演技に満足せず、もっと良い演技をするためにはどうしたらよいか、明日はこうしてみようと考えるんです。それを繰り返していると、25日間はあっという間に過ぎていきます」

5歳で歌舞伎の舞台に立って以来、大好きな歌舞伎を日々楽しんでいるという松也さん。どんな仕事にも全力で取り組む気持ちには、歌舞伎に対するある思いがあるようだ。

松也さん「伝統芸能である歌舞伎の世界では、代々続く世襲制が一般的ですが、私の父は(二世)尾上松緑さんのところに部屋子として入りましたので、二世代のみの家系です。その父も私が20歳の時に他界しまして、まだまだ学ぶことの多かった時期でしたので、その時に覚悟ができたというか、とにかく自分の力で進むしかないと思いました。ですので、まずは頂けるお仕事はどんなものでも全力で取り組んで、少しずつ名前を憶えていただく。そうすることで大好きな歌舞伎の舞台に立つチャンスを広げられればと考えました。自分の立場は保証されたものではないという自覚を持っていますし、常に危機感を持って仕事に臨んでいます。変に落ち着いてしまったらおしまい。『常に瀬戸際!』と思ってやっています」

忙しい中の取材であっても、こちらの質問にひとつひとつ丁寧に受け答えするその姿勢には頭が下がる。そこには他者には分からない、仕事、そして歌舞伎に対する強い想いがあるのだ。

松也さん「お客様に楽しんでいただくための熱量・情熱は常に持っていたいですよね。それから、仕事を成功させるためには、現場が楽しいことも大事だと思っています。たとえ喧嘩をしても、それが成功のためであればOK。そういう意識を共有できる仲間と成功を目指せる現場であれば、きっとお客様にも楽しんでいただける作品ができると思っています。『新春浅草歌舞伎』でも、そういう環境、現場作りをして、大成功させたいですね」

本当は現場でもはしゃぐのが大好きで、はしゃぎすぎて反省することも多いと笑いながら話す松也さん。歌舞伎への想いを熱く語りながらも、そんな心和む一面をのぞかせる松也さんに、人としての魅力を感じる。

松也さん「歌舞伎初心者の方へのアドバイスですが、まずは若い俳優が中心の公演をお勧めします。若い俳優の公演は、初心者の方にも分かりやすいよう工夫がされているものが多いのです。それから、演目的には『世話物』という、主に江戸時代の庶民文化を題材とした作品が分かりやすいので良いと思います。歌舞伎は入り口が大事です。最初に難しい作品を観てしまうと、どうしてもその後足が遠のいてしまい続かないこともあります。ですので最初はできるだけシンプルで分かりやすい作品を観ていただきたい。そういう意味でも、『新春浅草歌舞伎』は初心者の方にピッタリの公演です。きっと歌舞伎にハマると思いますよ」

歌舞伎俳優の自分には、後の世代に芸を継ぐ使命がある。そしてそのためには、先輩たちが受け継いできた技や演技を、しっかりと学ぶ必要があると語る松也さん。日本を代表する伝統芸能 歌舞伎の世界で、その存在感を確実に高めているのは、松也さんの歌舞伎に対する真摯な想い、そして実直さの結果に他ならない。次代を担う歌舞伎俳優 尾上松也さんに、ますます注目していきたい。そのためにも、まずは「新春浅草歌舞伎」に足を運ぶとしよう。

PROFILE

尾上松也(おのえまつや)

二代目/屋号:音羽屋

昭和60年1月30日生まれ。六世尾上松助の長男。平成2年に二代目尾上松也を名乗り初舞台。新派公演やミュージカル、テレビや舞台など多方面で活躍しながら、若い世代を率いる力を備えた華のある立役。新春浅草歌舞伎には4年連続6回目の出演となる。

END

SHARE THIS ARTICLE この記事をシェアする

RELATED ARTICLESこちらの記事もおすすめです