シェアリングビジネスという 新時代のキーワード

ISSUED | 2018.07

日本市場にシェアの考え方は馴染まないのではないか。そんな声がある中で、シェアリングビジネスは確実に市場を拡大している。変革に抵抗はつきものだが、今後シェアリングビジネスは消費者にどのような価値観を提供し、企業に変革の意識をもたらすのか。すでにユーザーから多くの支持を得ているサービスから、その将来を探ってみる。

シェアリングビジネスという大きな変革の波に乗る

元年と言われる2016年以降、シェアリングビジネスが日本でも猛威をふるっている。従来の商習慣に一石を投じるシェアリングビジネスの隆興は、日本経済にどんなインパクトをもたらすのだろうか

海外から押し寄せる新サービスの波で、国内にも広がる変革の機運

 世界的に見ても、本格的な普及が始まってまだ10年にも満たないといわれ、そもそもの定義すらまだ不明確であるこのシェアリングビジネスだが、黒船のごとく日本市場に登場したライドシェア最大手の「ウーバー」や、民泊事業を展開する「エアビーアンドビー」などが、着実に日本市場で変革の機運をもたらしている。

矢野経済研究所の調査によると、その国内市場規模は2016年度に約503億円であったものが、2021年にはおよそ1071億円まで拡大すると予測されている。モノを所有することを良しとしてきた従来の消費行動や、君子危うきに近寄らずではないが、日本人は個人間の商取引に少なからずネガティブな印象を持っているし、岩盤規制に守られた既存の商習慣もある。さらにシェアリングビジネスの普及によって不安定な働き方が定着し、ワーキングプアの増加を懸念する声もあるなど、シェアリングビジネスを取り巻く国内環境は、決して歓迎ムードばかりではない。

シェアリングビジネスの可能性

 しかし、企業が収益的な問題から手を出さない場所や商品を、個人がカバーすることで生活の利便性を高め、新たなビジネスや価値観につながるシェアリングビジネスの可能性には、大きな期待が持たれているのもまた事実だ。既に海外では多くのサービスが成功をおさめ、既存のビジネスをリプレースするなど、市場に新たな価値を定着させている。あくまでもそのサービスに価値があるか、それを継続的に利用したいと思えるかを決めるのは、消費者だということだ。

着実に実績を積み上げている企業の事例を紹介

 今回の特集では、そんなシェアリングビジネス市場で先行的にサービスを投下し、着実に実績を積み上げている企業の事例を紹介する。時代の流れ、ニッチなニーズを的確にくみ取り、素早くサービス化したことで、既に多くのユーザーの支持を獲得している各社のサービスには、どんな可能性が秘められているのか。これまでの既成概念や商習慣にとらわれず、新たなビジネスモデルを展開する各社のサービスから、シェアリングビジネスのこれからを探ってみたい。

東急バケーションズ熱海の客室。70㎡~90㎡と広めの客室を用意し「疲れないリゾート」を提案。コンセプトにこだわった独自の施設を展開することで、付加価値の高いシェアリングサービスを提供している。

グループの経営資源を活用してポイント制シェアリングリゾートを展開 [株式会社東急シェアリング]

企業が持つ資産を有効活用し、新たな価値を生み出すシェアリングで実現するライフスタイル改革とは

Profile

株式会社東急シェアリング 代表取締役社長

金山 明煥 氏

1984年に東急電鉄グループ入社以来、東急グループの多様な事業分野における事業推進及び経営企画に従事。現在も現職以外に東急電鉄においてリゾートを主体としたホスピタリティ事業の運営及び構造転換を担当している。早稲田大学理工学部、米国マサチューセッツ工科大学大学院(修士)、東京大学大学院(工学博士)を修了。米国都市開発協会(ULI)評議委員、国際記念物遺跡会議(ICOMOS)委員。



シェアすることは、先進的であり合理的な価値観

 全国17カ所の専用宿泊施設のほか、約4300ヵ所にのぼる提携施設を利用できる会員制シェアリングリゾートが「東急バケーションズ」だ。契約時に購入するシェアリングポイントを使って、気軽に施設を利用できるフレキシビリティの高さを武器に、会員数を着実に増やしている。

サービスを提供するのは株式会社東急シェアリング。その前身である株式会社東急ビッグウィークステーションが設立されたのが1999年で、このサービスを新規事業として提案したのが、現社長の金山氏だ。「タイムシェアリゾートの考え方は、1960年代にフランスアルプス地方で始まり、欧米を中心に広まりました。1980年代に当時住んでいたアメリカでこの仕組みを知り、別荘やリゾートマンションなど利用頻度の高くない場所をシェアするという仕組みが、実に合理的で先進的だと感じました。東急グループは国内外にホテルやリゾート施設を多数保有しており、それをシェアという考え方で活用すれば、新しいビジネスが展開できると確信しました」

金山氏の提案で設立されたのが東急ビッグウィークステーション

 そして金山氏の提案で設立されたのが東急ビッグウィークステーションだ。金山氏は異動によりスタートアップには携わらなかったそうだが、軌道に乗りきれない事業を立て直すため、2011年に社長に就任。ポイント制導入などで、就任初年度で黒字転換、分かりやすく社名も東急シェアリングに変更し、「シェアリング」という言葉の商標登録も行ったそうだ。

「所有することを好む日本人に、シェアリングビジネスは根付かないのではないかという声が一部にありますが、私はそうは思いません。所有の欲求というのは、製造業が主役となった高度経済成長期に刷り込まれた価値観です。社会が成熟し、雇用や格差問題など新たな課題が生まれ、『所有しなくても必要な時に使えればいい』という、モノ消費からコト消費への価値観の変化が起こり、シェアという発想が自然な流れで生まれたのです。だからこそ、シェアリングビジネスは大きな流れになると思いますし、年齢や性別に関わらず、シェアがスマートだという価値観が定着すると思えるのです」

マルチに広がるシェアリングビジネスの可能性

 シェアリングビジネスの拡大は、消費の減速を招くと懸念する声もある。しかし考えてみれば、鉄道やホテルなど、公共性の高い事業を手がける東急グループは、元々がシェア事業のプロである。そんな有用な経営資源を持つ環境でビジネスを展開する金山氏は、今後どのような構想をもっているのだろうか。

「シェアによる消費減速を心配するのは、所有することを前提とした20世紀的な経済基準の発想だと思います。モノを購入しなくても、高頻度で利用されるサービスがあれば経済は活性化するはずです。シェアリングで経済活動自体が変わると考えればよいのです。例えば、当社では現在、『anywhere』というキーワードを掲げています。IT化が進み、どこにいても仕事ができる時代になったので、それならリゾートで仕事をしてもよいだろうと考え、ワークとバケーションを合わせた『ワーケーション』というライフスタイルを提案しています。シェアリングビジネスで経済も消費スタイルも、そして働き方や人生も、どんどん変わってく時代なのだと思います」

Company

株式会社東急シェアリング
TEL:0120-830-109
http://www.tokyu-vacations.com

ソーシャルレンディングのサービスイメージ。投資家はサービス提供会社が運営するファンド(匿名組合)経由で、事業やプロジェクトに投資する。投資先が匿名のため、サービス提供会社の信頼性は要チェックだ。

フィンテックが生んだ新たな投資スタイルソーシャルレンディング [SBIソーシャルレンディング株式会社]

金融のシェアリングビジネスとして注目されるソーシャルレンディング。
IT時代の投資は、どんな可能性を秘めているのか

Profile

SBIソーシャルレンディング株式会社
商品開発部 部長

澤田 響 氏

2005年SBIグループ入社後、ファイナンス・オール(株)経営企画部にてIR・広報担当、SBIホールディングス(株)イー・ローン事業部にて営業・企画・マーケティング部門を統括。社長室次長も兼務し、ビックデータやAIなどSBIグループ事業に横断的に携わり、部長職を経て現職。



急速に市場を拡大する貸付型クラウドファンディング

 ソーシャルレンディングとは、インターネットを通じて「投資したい人」から資金を集め、ファンド経由で「借りたい人」に貸し付ける、フィンテック時代の新しい金融商品だ。

「お金のシェアリングビジネスといわれるクラウドファンディングの中で『貸付型』と言われるのがソーシャルレンディングです。他の種類のクラウドファンディングとの一番の違いは金融商品として投資家に販売される点です。少額からの投資が可能で、日々の値動きを気にせず資産運用ができる商品として、急速に市場が拡大しています」

ソーシャルレンディングにも大きな可能性がある

 シェアリングビジネスが新しい価値やサービスを生み出しているのと同様に、ソーシャルレンディングにも大きな可能性があると澤田氏はいう。

「当社では、投資家の方々に社会的な貢献を意識していただけるファンドを積極的に扱っています。例えば太陽光発電やバイオガス発電の再生可能エネルギー事業などに対するものです。他にも地域の金融機関と提携して、地域に貢献するプロジェクトを支援する取り組みや、個人向け貸付事業として日本で働くカンボジア人技能実習生を支援するためのローンファンドなども提供しています。こういったファンドは、資産運用で得られるファイナンシャルリターンに加え、社会貢献というソーシャルリターンも感じていただけると考えています。また、従来の金融機関では満たせない資金調達ニーズにお応えできるので、借手企業の新たなビジネスチャンスや実習生等個人のスキルアップにもつながります。今後もこういった社会的意義のある金融商品を積極的に開発して、投資家と借手双方に、新しい価値やサービスを提供し続けることが重要だと思っています」

個人と個人を結ぶP2P(Peer to Peer)投資の可能性

 欧米などと比較すると、日本のシェアリングビジネスはまだまだ発展途上段階である。シェアリングビジネスは日本文化に馴染み、今以上に普及していくのか。澤田氏は今後の可能性をどう捉えているのだろうか。

「欧米や中国など海外では、資金使途や属性情報、信用情報などが開示された個人やグループなどの借手に対して、投資家がその情報を元に投資する『P2Pレンディング』が普及しています。しかし日本では、貸金業法により借手の匿名性の制約があるため、ファンドスキームの融資にせざるを得ず、この方法ではインターネットを利用したサービスの特性を最大限に活かしきれない可能性があります。また、日本の個人ローン市場は、銀行やノンバンクなど従来の金融機関によって席巻されている一方で、多重債務者問題や上限金利問題など様々な課題を抱えています。さらに日本人はお金の貸し借りに対して少なからずネガティブなイメージも持っています。しかし、シェアリングビジネスやソーシャルレンディングには、そういった仕組みやイメージをポジティブなものに変える勢いがありますし、P2Pを含めて、これまで実現できなかった新しくシンプルな金融の形を提案できる可能性もあるのではないかと思っています」

取材後の6月17日、日経新聞が貸付型クラウドファンディングでの借手の匿名性の制約を撤廃するという金融庁の発表を報じた。シェアリングビジネス同様、ソーシャルレンディングは黎明期のサービスであるがゆえに成長の余地があり、新たなサービスを生み出す可能性がある。規制緩和後の展開にもぜひ注目していきたい。

【投資に際して】
SBIソーシャルレンディングの取扱商品は借手の貸し倒れ、借手やSBIソーシャルレンディングの経営破綻等によって元本割れが生じ、最悪の場合には元本が0円になる可能性があり、実際の運用利回りを確約するものではありません。投資のリスクと手数料については、SBIソーシャルレンディングWebサイトの各商品ページ等に記載する事項、投資の際に交付される各種書面を十分ご理解いただいたうえで、投資にあたっての最終判断はお客様ご自身でお願いいたします。

SBIソーシャルレンディングの取扱商品に関する表示事項について
https://www.sbi-sociallending.jp/pages/koukoku_hyoji

Company

SBIソーシャルレンディング
TEL:0120-104-168 (平日9:00 ~17:00)
https://www.sbi-sociallending.jp/

タイムチケットのトップ画面。サービス開始4年で登録者数は10万人を突破。今後は個人の時間の価値を定量的に評価するトークン「タイムコイン」を発行し、タイムコインプラットフォームを開発し、登録者数100万人を目指すそうだ。

個を磨き新たなビジネスチャンスを生む起業家育成シェアリングビジネス [株式会社グローバルウェイ]

個人の時間を個人のために販売する、シェアリングの王道ビジネスは、日本の環境にどんな刺激を与えてくれるのだろうか

DAISAKU YAMAMOTO

株式会社グローバルウェイ グローバルウェイラボ 室長

山本 大策 氏

1978年生まれ、広島県出身。株式会社リクルートメディアコミュニケーションズ在職中にマッチングサービス「コーヒーミーティング」を制作したことを機に独立し、2012年に株式会社レレレを設立。その後2014年に「タイムチケット」をリリースし、2016年に株式会社レレレの全事業を株式会社グローバルウェイに譲渡。現在はタイムチケットを運営管理するグローバルウェイラボの室長として、新規プロダクトの開発にも従事している。



空き時間を活用して 才能やスキルをシェア

「わたしの30分、売りはじめます」。これは、今注目のシェアリングビジネスとして多くのメディアでも取り上げられている「タイムチケット」のキャッチフレーズだ。自分にできることを時間単位で値付けし、チケットとして販売するという仕組みで、販売されるチケットの中身は実に多彩。「写真撮ります」といった分かりやすいものから、副業指南などのビジネス系、悩み相談やお手伝い代行などなど、見ているだけでも楽しめるチケットが販売され、個人の才能やスキルをシェアする場として活用されている。

タイムチケットを作ったきっかけ

 タイムチケットの開発・運営の責任者である山本氏がこのサービスを作ったきっかけは、以前に手掛けた、「コーヒーミーティング」というコーヒー1杯分の時間をシェアするマッチングサービスだったそうだ。

「コーヒーミーティングを通して多くの方にお会いしたのですが、その中に面白い方がたくさんいて、彼らの才能や個性を、もっと広めたいと思ったのがきっかけです。日本人は自分の才能や個性をアピールするのが苦手で、それでお金を取るとなると、さらに腰がひけてしまいます。それなら誰もが気後れすることなくアピールできる、”時間を売る”という仕組みにすれば、シェアの場が広がるのではないかなと思ったのです」

信頼性を得ることがシェアリングビジネス最大の課題

 タイムチケットは、個人のスキルや能力を、それを必要とする個人に時間単位で販売するという、シェアリングビジネスの王道ともいえるビジネスモデルだ。しかし、個人間での商取引には信用という面でリスクが伴い、それがシェアリングビジネスの課題だといわれる。この点を山本氏にぶつけてみた。

「もちろん、安全性は最大の課題だと考えています。タイムチケットでは、まずFacebookに登録されている実名での利用を原則として、本人確認書類の提出可否や、利用者からの評価をサイト上に記載して、取引相手がどういった方かを確認できる仕組みを設けています。また、われわれ運営メンバーが実際にホスト(売る側)に会い、スキルや経験、ゲスト(買う側)に対するホスピタリティなどを確認して、問題無いと判断した方には『ゴールド認証済みチケット』を授与しています。いわゆるお墨付きです。他にも、ゲストがアポイントに連絡無く現れなかったといった場合には、即刻登録解除といった厳しい対応もしています」

タイムチケットは、副業として最適

 ちょっとした空き時間に稼げるタイムチケットは、副業として最適だ。実際にタイムチケットで販売されるチケットでも、人気は副業に関するものだそうで、これは政府も後押しする副業解禁の流れが影響していると山本氏は分析する。

「会社員は会社の名前でビジネスをしますが、タイムチケットのホストは、個人の力で勝負するにはどうしたら良いか、ゲストに信用されるには何をすべきかを常に考えます。そうした取り組みは、起業家精神を養うことにもつながると思っています」

シェアリングビジネスが注目を集める背景には非正規雇用や格差問題など社会的な課題が見え隠れするが、タイムチケットのホストのようにシェアリングビジネスに真剣に取り組むことで、日本にも起業を目指す人が増え誰もにビジネスでの成功のチャンスを掴める環境が整えば、日本のビジネス環境は大きく変化していくのかもしれない。タイムチケットというサービスを通して見たシェアリングビジネスに、そんな大きな可能性を感じることができた。

Company

株式会社グローバルウェイ
TEL.03-3433-5085
https://www.timeticket.jp/


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