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企業価値を左右する戦略的不動産活用のススメ

ISSUED | 2018.10

 
少子高齢化や働き方改革といった国内問題はもちろん、アジア諸国が台頭するIT関連事業での国際的な競争激化など、日本企業は大きな変革を迫られている。
これまで以上に精緻な企業運営が求められる中で、今、不動産を戦略的に活用する機運が高まっているという。不動産価値を最大化することで得られる、企業価値向上のためのヒントを探る。

変革の時代に有効な企業の不動産対策不動産への意識を変えより積極的な活用を

専門家からの情報を積極的に活かした不動産の活用で、生産性を向上させ変革の時代を生き抜く

Profile

東急リバブル株式会社 代表取締役社長

榊 真二 氏

1957年1月23日生まれ。1980年一橋大学社会学部卒業。同年、東急不動産株式会社に入社、2006年より同社執行役員。2007年より株式会社東急ハンズ常務執行役員を努め、2011年より同社代表取締役社長。2015年4月より現職。

今は変化が激しく先の見えにくい時代。生き抜くために不動産戦略を

 少子高齢化によって労働人口が減少し、マーケットの縮小が進む中、技術革新やグローバル化が重なる変化の激しい時代にあって、企業はさまざまな難題を乗り越えていかなければならない。企業の事業用不動産を全国で扱う大手不動産流通の東急リバブル榊真二社長は、今はこれまでにない大きなパラダイムシフトが起こっている時代だと話す。今、企業は所有する不動産をどのように活用するべきか、優良な不動産に投資をしたほうがよいか否か、判断が難しくなっている。

「自動化技術やAIの進化など、以前は想像もできなかったようなことが、次々に現実化する時代になっています。また、産業がグローバル化していますから、生産拠点をコストの安い国に移しても、商品のクオリティに大きな差がなければ、すぐにコモディティ化して競争力を失ってしまいます。今は新しい技術やノウハウによる製品、あるいは新しいビジネスモデルをもった企業が、ボーダレス化の流れの中で世界シェアをどれだけ握るかによって、産業構造が大きく変わってくるのではないでしょうか。

 不動産のバリューはもともとドメスティックなマーケットの中での需給バランスで決まっていくものですが、ここでもボーダレス化が進み、不動産の相場観や取引にも影響を与えています。さらに、事業構造の変化を受けて、これまでの不動産対策を見直す企業も増えてきました」。

 先が見えにくい時代を生き抜くには、戦略を立て不動産を活用していくことが必要なようだ。

専門家の力を借り不動産活用の発想を転換する

 世の中の激しい変化にともない、不動産の評価も大きく変わっていく。所有または売買する不動産の正確な価値や今後の推移など、専門的な知識を要する情報の判断は不動産を専門としない企業には困難だ。

「企業が不動産をどう考え、どう利用したらいいのかについては、企業の資産のポートフォリオや業績、あるいは資金調達の状況によって大きく違いがあるので、一律に言い切れるものではありませんが、不動産の将来的な資産性や不況抵抗力としてのニーズには根強さがあり、不動産を持つこと自体に価値があると考え、使わなくなった社宅や事業所などをそのままにしておく企業が多く見られます。中には、所有する不動産の情報や資産価値を正確に把握できていない企業もあります。 

 しかし、今は発想を転換して、最善の利用法を積極的に考えなければならない時代です。たとえば、老朽化した自社ビルから賃貸オフィスに切り替えて資金化するとか、事業所を継続して使用したい場合にはリースバックする方法も考えられます。社宅など本業に影響のない土地なら、マンション用地として売却したり、アパートに転換する方法もあります。当社でもそのような事例を扱っていますし、企業から要望を受け、全国各地の遊休資産をまとめて買い取るケースもあります。

 いずれにしても、持っている不動産をより有効に使うためには正確な情報が必要です。企業の状態によっても、外部環境によっても事情は変わってきます。正しい情報を得るために、人が定期的に健康診断を受けるのと同じように、所有不動産についても定期的に専門家に相談をし、そのアドバイスを活用して常に見直すことが大切です」。

オフィスも自社ビルにこだわらず自由な発想で考え直すことが必要

 最近は「働き方改革」という言葉が生まれ、オフィスのあり方についても考え直す必要が出てきている。これまで日本企業の多くは、会社を大きく育てて、やがて自社ビルを持つということを1つの理想としてきた。働き方が多様化している今、これからのオフィスはどうあるべきだろうか。

「オフィスについても今は大きく変わる節目にきています。日立は10万人規模のテレワークを提唱していますし、コワーキング出来るビジネスオフィスのような業態があちこちに出来ています。また、ベンチャー企業などは他の企業とコミュニケーションを図りながら付加価値を生むような、新しいオフィス空間を必要としていて、今後企業のオフィス事情が変わってくることは間違いないでしょう。大型オフィスビルに対する志向は依然として強いものの、最近は中小ビルでも非常に優れた付加価値機能を持つビルが出来てきており、多様化する企業のオフィスニーズに合わせて棲み分けが進んでいくのではないでしょうか。

 地方でも中核都市には人が集まる傾向にあって、土地の価格も上がっています。コールセンターのようなバックオフィスを比較的コストの安い地方に作って、業務を外注していくという動きもあります。里山オフィスとよばれているものもその1つで、鯖江や仙台など数ヵ所に出来ています。人材の確保が難しいと言われるIT技術者を地方で採用するケースも増えているようです。IT化が進んでくると地方と東京のハンデ差は小さくなるわけですから、コストバランスの中で地方都市がもう少し見直されて、不動産のニーズが高くなってくることは十分にあり得ることだと思います。地方の活性化にもつながるので、非常にいい傾向ではないでしょうか」。

事業承継でもキーとなるのは不動産。専門家からの情報を有効活用し最善の選択を

 今、企業がおかれている課題の1つに後継者の問題があり、ここでも企業が所有する不動産がキーを握っているケースが多い。最適な解決法は、どのように考えたらいいのだろうか。

「今は、後継者難で事業承継の悩みを抱えている企業も少なくありません。会社を売却する場合、所有する不動産が正しく評価されているか正確な価値を把握することが重要で、それによって売却対象となる企業の価値が大きく変わることもあります。当社でもM&A仲介を展開し、譲渡企業が所有する不動産の評価を行っていますが、実勢価格に基づく評価によって当初想定していた企業価値を上回るケースがあります。また、税務会計事務所や法律事務所とも連携し、事業承継時や、相続でも、不動産に関わる最適なご提案ができるようサポート体制を整えています。専門家からの意見を活かし、常に不動産の価値を見直すことで生産性を生む活用をしてほしいです」。

 時代の変化により、企業の不動産に関わる課題やニーズも多様化している。事業の効率化や生産性の向上は企業にとって非常に大きなテーマで、そのソリューションとして大きな比重を占める不動産。専門家から得る正しく適切な情報は、不動産の「もったいない」を見直し生産性を生んでくれるだろう。

東急リバブル株式会社

1972年設立。売買仲介業に大手不動産企業として初めて進出し、以来、多角的に事業を発展させ、総合不動産流通企業へと成長。企業や個人投資家向けサービスを提供するため、業界に先駆け2000年に不動産ソリューション事業を開始し、現在、法人向けの不動産仲介事業で国内トップクラスの実績を誇る。

住所:東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー33階

URL:https://livable.co.jp/solution/




不動産価値を最大化することで企業の生産性を確実に高める

不動産価値を正確に把握するためには、専門家によるサポートが不可欠だ。眠っている不動産が思わぬ資金源になる。そんな不動産の持つ可能性について、専門家に話を聞く。



不動産が持つ収益力を正確に把握し企業活動に100%活用すべき

企業の生産性を高め、将来性を確保するため所有不動産で利回りを得る

 様々な分野で変化の激しい現代ですが、本業が順調で資金的に余裕があるなら、不動産は所有したほうがいいと思います。事業を次の世代に引継ぐ場合も、M&Aをする場合も、あるいは事業を整理する場合も不動産は有効に働くからです。ただし、注意すべき点は「利回り」をしっかり把握することと、良い立地の不動産を選ぶことです。

 不動産を所有することは意義のあることですが、企業はさらに所有不動産の有効活用を図るべきだと思います。不動産の専門的な知識無しに利回りを高く運用することは困難です。信頼できる専門家を選び、プロのノウハウを取り入れ、意見を聞くだけでなく積極的に任せていくことで収益性を高めていくことが肝要でしょう。たとえば、賃貸物件にした場合、入居率が90 %でうまく行っているといっても、実際はもっと高い数字を目指せる可能性も少なくありません。利回り重視という点では、1%も見逃せる数字ではありません。不動産は持つことだけに価値を認めず、そこからどれだけの利回りを上げられるかということが重要です。

 最近は後継者不在による事業承継問題が注目されていますが、これは経営者がブレーンを育ててこなかったことがいちばんの原因だと思います。普段から将来のためにしっかりした人材を育てることが大切ですが、残念ながら会社をたたまなくてはいけないという場合も、不動産を処分に限らず運用、活用まで含めて検討することを推奨します。M&Aの場合でも、土地は残して事業だけ売ったほうがいい場合もありますし、残した不動産を分譲マンションにするなど、専門家と相談して自分の土地をしっかり有効活用してほしいと思います。

 2022年に生産緑地法の期限切れにより大量の土地が放出され、所有する不動産の価値に影響が出るのではないか、という心配の声を多く聞きますが、生産緑地法は基本的に固定資産税を安くするためのもので、相続税の納税猶予もあります。期限切れ後も、土地を持ち続ける人は多くいると思いますし、政府も一度に大量の土地が放出されて、バブル期のように価格が暴落することのないように、いろいろな対策を打つはずなので、過度に心配する必要はないと私は思います。しかし、蓋を開けてみなければわかりませんので、そういった状況の際にも正しい判断ができるように、専門家の情報に耳を傾け、所有不動産を正しく把握することが大切でしょう。

Profile

税理士法人 深代会計事務所 理事長〈公認会計士・税理士〉

深代 勝美 氏

資産税のプロ集団として豊島区池袋を拠点として活動。相続税の申告業務にとどまらず、相続・事業承継対策やお客様の財産管理のサポートまで幅広く対応。お客様の声に沿い一緒に解決していくことを信条に運営している。




税金過払いの可能性も不動産所有コストを最小限に

多発する過払い税金所有不動産のコストを見直し、生産性の向上へつなげる

 あまり知られていませんが、所有不動産にかかる固定資産税の払いすぎにより、還付金を受け取るケースが多発しています。2012(平成24)年8月28日に総務省が発表した報道資料、「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」で、評価額に多くの誤りがあったことが明らかになりました。報告書によると、平成21年度から平成23年度の3年間、調査対象は東北3県を除く全国1592市町村で、固定資産税の取り過ぎによる減額修正、税金還付がなんと25万件以上もありました。その後も課税額の誤りは後を絶ちません。

 これらの原因は、税額の決定の仕組みにあります。固定資産税額の決定の流れは、まず建物のオーナーが、登記後に施工図面などを課税庁に任意提出します。課税(評価)額を決定する担当者は提出資料を元に、該当の建物を再建築する想定で必要な費用を点数化し、「固定資産税評価額」を算出します。その評価額に一定の税率をかけて課税されたのが固定資産税です。問題は、評価を行う課税庁の担当者の多くは「建築・設備」に関する正確な知識を有しておらず、さらに、この評価額をどのように算定したかは説明義務が無く、私たちはその詳細な内訳を知ることが出来ないという現実です。

 誤った評価の原因の一例として、建築資材の評価では、同じ鉄骨でも主体構造部として使用しているか、補助部材として使用しているかで評価が異なります。実際には補助部材で使用されている鉄骨を、主体構造部として評価している場合は主体構造部の過大評価となります。評価額はその点数の積み重ねで算出され、固定資産税評価額が大きな物件では億単位の過払い税金となっていることも多いにあり得るのです。

 不動産は企業の重要な資産です。税金でさえ過徴収される可能性があり、それを見逃している例が多く発生しているわけですから、所有不動産の正確な価値を把握し直すことは、企業にとっての急務だと思います。自社の所有する不動産がどのような部材や部品で構成されているかを記録し、資産の運用管理にも活用できる「建物資産管理台帳」を作成するのも有効です。

 不動産価値を正しく把握するためには専門家の力を積極的に利用していくことも必要です。所有する不動産の価値、メリットをいかに最大化し、企業運営に反映させていくか。今、企業に求められているのは、そんな不動産に対する意識の変革だと思います。

Profile

株式会社建物鑑定 代表取締役

佐藤 雅宣 氏

建物鑑定を専業としている一級建築士事務所。日本で初めての建物鑑定専門の会社として「建物」の収益向上や建物に起因する諸問題を予防したり、解決することにより消費者の保護・顧客満足・不動産価値向上を目指す。



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