トップバトン

トップバトン VOL.2

株式会社日建設計 代表取締役社長 亀井忠夫 氏

ISSUED | 2018.10

いつまでも美しく心地よい街づくりその答えを求めつづけて

リレー形式で経営者をつなぐ「TOP BATON」。YKK代表取締役社長 大谷裕明氏からバトンを受け取ったのは日建設計の亀井忠夫氏。日本を代表する組織設計事務所の社長であり、建築家でもある亀井氏の素顔に迫った。

PROFILE

亀井忠夫

1955年兵庫県生まれ。77年早稲田大学建築学科卒業。米ペンシルバニア大学大学院修士課程、早稲田大学大学院修士課程、HOKを経て、81年日建設計に入社。2015年から現職。建築家として大規模プロジェクトを中心に担当し、東京スカイツリーRの設計統括も担当。これまで手掛けてきたプロジェクトは、国内外で、多くの賞を受賞。一級建築士。

 

世界屈指の設計事務所として果たすべき役割

 東京のランドマークとしてお馴染みの東京スカイツリー®や、東京ドーム、ザ・リッツ・カールトン京都など、日建設計が手掛けた施設は枚挙にいとまがない。2016年にはスペインの名門サッカークラブFCバルセロナのホームスタジアム「カンプノウ」の改築設計コンペで、世界中から集まった26社がしのぎを削るなかこれを勝ち取っている。英国の建築雑誌「BD」が毎年発表している世界設計事務所ランキングでは2位にランクイン。世界でも指折りの組織設計事務所が日建設計なのだ。その日建設計を率いるのが、亀井忠夫氏。建築家として数々の実績を誇る亀井氏が、2015年の社長就任以来キーワードとして掲げているのが、「豊かなパブリック・スペースの創出」だ。

「当社の仕事には、社会や環境への影響が大きい公共的なプロジェクトが多く、単に施設や建物をつくるだけではなく、いかに人々が快適に過ごせる空間にできるかが課題になります。例えばカンプノウでは、バルセロナの街の象徴的な施設になりますので、街に開かれたイメージのスタジアムとしました。デザインの特徴である外周部の大きなバルコニーでは、人々が食事を楽しんだりでき、そのようなアクティビティそのものが、街の景色になります。


FCバルセロナのホームスタジアム「カンプノウ」の改築計画

仕事の質を高めるためのコミュニケーション

 趣味は6年ほど前から始めたサックスで、社内の夏祭イベントでジャズバンドの一員として参加したこともあるそうだ。若い社員にもフランクに話しかけている。

「彼らからはバリアを感じることがあるようですが、 僕は常にオープンマインドでいます」。 亀井氏は若かりし頃、一体どんな建築家だったのだろうか。

「自分ではあまり認識がないのですが、『こうしたい』という思いが強かったようです。でも、設計は建築家の想いだけで進められるものではないですし、さまざまな条件・状況に応じて答を出していくものです。そのことを学んでからは、新たな発想を出せるようになりましたし、やはりさまざまな方々とのコミュニケーションが重要だと実感しました」。

今も昔も変わらない建築家が目指すべき指針

「紀元前の建築家ウィトルウィウスは、『建築十書』という著書で、〝用・強・美〞が重要だと説いています。〝用〞は雨や風がしのげるシェルターとしての機能、 〝強〞は十分な強度、〝美〞は文化に寄与するものを示しているのですが、その考え方は紀元前から今も変わっていません。古い建物が保存されるかどうかについては、「美しい」とか「愛されている」とかが、〝用・強〞に加えて、一つの大きなカギになると思います。東京スカイツリー®は、難しい条件下で、〝用・強・美〞をギリギリまで追求した私たち日建設計の代表作です。今後もこのような誇れる仕事をしていきたいと思っていますし、〝用・強・美〞を大切に考えてくださるクライアントと、後世に自信を持って遺せる仕事をしていきたいですね」。

時代の変革に対応する柔軟な発想とチャレンジ精神

「設計や建築の仕事は、完成までに5年、10年と長い時間を要します。しかし、世の中はIoTやAIの時代。非常に変化の早い時代です。計画から完成までの間に世の中が変わってしまう可能性もありますので、その変化に柔軟に対応していくためにも、私たちもIoTやAIの知識武装をしていかなければいけませんし、知識を持った人材の確保も重要です。その分野の人材はどこの業界でも取りあいの人気ですから、その方々にも『設計』の仕事の魅力をこれまで以上にアピールしていく必要があると思っています」。

 現在日建設計は世界第2位の設計事務所ではあるが、今後の国際競争力維持にも課題があると亀井氏はいう。「若い人はもっともっと海外に出て、チャレンジしてほしいですね。海外で得た知識やネットワークは、5年後、10年後の仕事に確実に効いてきます。当社は中国の仕事を数多く手掛けていますが、中国にも環境のことを考え、高いクオリティを求めるお客様が増えています。現在、海外で設計を学ぶ中国の若者が本国に戻り仕事に就くことを考えると、あと5年もすれば中国の設計レベルは飛躍的に向上して、グローバルなレベルになると思います。その時に当社がどう差別化できるか、今から考えておかなければいけませんよね」。

オンリーワンの答えに導く設計者のマインド

亀井氏は、かつて早稲田大学と東京電機大学の建築学科で非常勤講師を務めたことがある。「建築家を志す学生以外にも、さまざまな道に進む学生がいましたが、すべての学生に〝設計者のマインド〞を忘れないで欲しいと伝えていました。それは、先入観に囚われず、新しい物事を生み出そうとする精神です。私自身今も心がけていることです。人は経験から培った方法が最善と思い込みがちですが、課題や条件は時代とともに変化するので、経験値だけではベストになりません。先入観にとらわれずに向き合い、いかにして唯一無二の答えを出せるかが重要です。とても難しいですよ」。

 難しいと言いながらも、どこか楽しんでいるように聞こえる亀井氏の言葉。日建設計ならその答えが出せるという自信があり、課題や条件が難しければ難しいほど、オンリーワンの答えにつながるチャンスがあることを、経験的にご存知なのだろう。現在も日建設計では数々のプロジェクトが進行中だ。次はどんな空間づくりで私たちを楽しませてくれるのか。その期待はこれまで以上に膨らみそうだ。

OUR WORD

Less is more
――亀井 忠夫

モダニズムの建築家、ミース・ファン・デル・ローエの言葉。余計なものがなく、より少ないもので構成されたものの方がより豊か。いろいろな解釈が可能な言葉ですが、個人的には、余計なものがないデザインを心がけています。モノに満ち溢れた状況の中で、「禅」にもつながるこの言葉が好きです。

 

日建設計

1900年(明治33年)に設立された、住友本店臨時建築部を起源とする、100年を超える歴史を持つ総合設計事務所。社会環境デザインの先端を拓く専門家集団として、設計・監理、都市計画を中心に、建築と都市のライフサイクル全般にわたる調査・企画・コンサルティングを世界規模で行っている。



END

THIS BATON FROM...


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