伝統を受け継ぎ後世に残す 継ぎ人 匠

継ぎ人 その二十三

創業以来のこだわりが繋ぐ、江戸前天麩羅の味

ISSUED | 2019.03

てん茂 四代目 奥田 秀助さん

  • 伝統ジャンル | 天麩羅 継 承 歴 | 四代目
  • 1960年東京生まれ。東京農業大学農学部卒業。2年間の会社勤めを経て、1986年より家業に入る。白衣に蝶ネクタイは、父の代から続く“てん茂スタイル”だ。

創業以来のこだわりが繋ぐ、江戸前天麩羅の味

 日本橋のオフィス街から一本路地を入ったところにある、趣ある木造の佇まい。明治時代から変わらぬ江戸前の味を守り続ける天麩羅屋「てん茂」だ。創業は明治18年、日本橋の中央通りに出した天麩羅の屋台がはじまりだった。明治40年に店を構え、現在の建物は昭和22年に建てられたものだ。引き戸をくぐると何ともいえず香ばしい胡麻油の香りが漂う。揚げ場に立つのは、四代目の奥田秀助さんだ。

「中学生の頃には、将来は家業を継ぎたいと考えていました。でも、大学卒業目前に改めて父に話すと、なんと答えは『ノー』。継いでから『こんなはずではなかった』ということにならないように、外の世界を見てほしい、と考えたのかもしれません」。

 そこで一般企業に勤めたが、思いは変わらず2年後に店に入ることに。そんな奥田さんが常に心に留めているのが「仕入れ先を大切にしなさい」という父の教えだという。

「良い材料が入らなければ、いくら頑張っても良い料理をつくることはできません。仕入れ先と信頼関係を築き、良い素材を選んでもらう。それが結果としてお客様の満足に繋がります。父からは、お客様の代わりに仕入れ先に行くという気持ちを大切にしなさい、と言われました」。

 エビ、キス、アナゴなどを中心に、季節折々の旬の魚介や野菜を提供。天麩羅に用いる揚げ油は、創業以来変わらず、炒った白胡麻を絞った胡麻油だ。風味豊かで酸化しにくく、油切れも良いためカラッと仕上がる。

 昨年からは日本橋の料理飲食業組合と協力し、糖質オフメニューにも取り組んでいる。時代の流れに合わせて新たなチャレンジをしつつも、伝統の味にこだわる。そこにあるのは「最上の天麩羅を」という、代々受け継がれてきたまっすぐな思いだ。

  • 味

  • 匠の言葉

    「味」
    明治18年の創業以来、胡麻油で揚げる昔ながらの江戸前の味を守り続けてきた。時代の流れと共に素材も少しずつ変化していくが、「『これがてん茂の天麩羅』と胸を張って言えるような変わらぬ味をご提供したい」と、奥田さんは語る。

店舗情報

てん茂

  • てん茂
    住所 中央区日本橋本町4-1-3▶︎MAP
    電話番号 03-3241-7035
    営業時間 月~金12:00~14:00/17:00~20:00、 土12:00~14:00/17:00~19:00
    休日 日祝、8月の土曜日(土曜の夜は前日までに要予約)

    キスは一度開いて骨を取り除いた後、再び身を合わせて揚げることで、素材本来の味をしっかりと楽しめる。香りとほろ苦さが絶妙なパセリの天麩羅も人気の一品。

    天麩羅を揚げる油は、創業時から変わらず胡麻油100%。油の音や動き、箸を通して伝わる感触などで、最適な揚がり具合を見極める。

    右)「火の用心」の提灯も年季が入っている

    衣をつくる大きな鉢は奈良の赤膚焼で、50年以上使い続けているという。専用の太い箸は先代のお手製。

    アナゴの天麩羅などを切る包丁は、先々代の祖父による特注品。ユニークな形の刀身には刃がなく、軽い力で身を崩さず天麩羅を切ることができる。

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