伝統を受け継ぎ後世に残す 継ぎ人 匠

継ぎ人 その一

伝統の味を未来へ繋ぐ。桜肉料理の伝道者

ISSUED | 2017.04

創業110年『桜なべ 中江』四代目店主 中江 白志さん

  • 伝統ジャンル | 馬肉料理 継承歴 | 30年
  • 大学卒業後、約2年間の社会人を経験。転勤をきっかけに家業を継ぐ。「桜肉は美容と健康、ダイエットにも良いもの。心身共に健全な人々が増えれば争いごとのない世の中になるはず。桜肉を広めて世界を平和にしたいですね」。そんな願いを込めながら、日々仕事に取り組んでいる。

伝統の味を未来へ繋ぐ。桜肉料理の伝道者

 文明開化の中、ハイカラなグルメとして誕生した桜鍋。当時、桜鍋を売る店が二十軒ある中、明治38年に吉原大門(現在の台東区千束4丁目付近)の近くに暖簾を掲げた「桜なべ 中江」。牛鍋同様に割下で煮ていた桜鍋に、初代当主が桜肉に合う味噌ダレを加えて使い始めたことでその味が定番に。現在の桜鍋の元祖が「中江」というわけだ。

 中江白志さんが4代目店主を襲名したのは若干24歳。「流れに身を任せていたら、いつの間にか家業を継いでいた。正直、今でも継いでいるつもりはないのですが(笑)。私にとって家業を継ぐことは空気みたいなものですね」。幼い頃から店を遊び場としていたり、下足番や皿洗いなどの手伝いなどで慣れ親しんだ店。日常にある当たり前の存在だったからこそ、家業を継ぐことを“空気みたいなもの”と捉えている。

 優しい笑顔で語る中江さんだが、家業を継いだ頃はバブル崩壊後の苦しい最中。まさに爪に火を灯すような節約をして厳しい時代を乗り越えた壮絶な体験をしている。「うまくいくことのほうが少ないので、敢えて自ら大変にしている。そしてその大変さを楽しいと思ってやっていくことが、長く続ける秘訣なのかも知れません」。本人の意思を尊重し、10年後には息子さんに店を継がせたいと中江さん。「自分が今、自由にやれているように、息子にも自由にやって欲しい。家業を継ぐことをプレッシャーだとは思わずに」。家業を継ぐことは想像以上に大変なもの。しかし、それを楽しさに変える力を持つ中江白志のDNAが在る限りその伝統は永遠に引き継がれるであろう。

  • 共同体感覚 中江白志

  • 匠の言葉

    「共同体感覚」
    中江さんが大切にしている言葉。自分は共同体の中で生きているという、アドラー心理学の考え方。

店舗情報

桜なべ 中江

  • 90年の歴史を誇る有形文化財に指定された建物。関東大震災に被災し建て直した後、東京大空襲を奇跡的に免れた貴重な建造物だ。

  • 住所 台東区日本堤1-9-2   ▶︎MAP
    電話番号 03-3872-5398
    営業時間 平日17:00~21:30(LO)
    土日祝11:30~20:30(LO)
    ※ランチは土日祝の11:30~13:00
    毎週月曜 祝日は営業

    右:純国産の生肉のみを使用 決して譲らない桜肉へのこだわり
    美しい紅色の桜肉は新鮮な証。通常は1~2歳で食肉にされるところ、6~8歳まで生きながらにして熟成させた肥馬を使用。さらに、冷凍が主流の中、チルド状態で産地から直送された、より新鮮な肉のみを扱う徹底ぶり。
    左:創業から変わらぬ味を守る 門外不出の味噌だれ
    淡白な桜肉にコクを与える味噌だれは、米麹をたっぷりと使用した独特の甘みが特徴の「江戸甘味噌」がベース。先代と店主のみが知る一子相伝の味噌だれは桜鍋の味の決め手。

    名だたる文化人が虜になる 由緒正しい伝統の味
    現在も幅広い分野の著名人の舌を満足させる中江の桜鍋。“芸術は爆発だ!”の岡本太郎さんのリクエストにより生まれた「タロタロユッケ」は三代目が考案した名物。ほかにも、一品料理がたくさん。

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