伝統を受け継ぎ後世に残す 継ぎ人 匠

継ぎ人 その十二

ものづくりの今を生きる下町職人

ISSUED | 2018.04

長澤製作所 三代目 長澤 利久さん

  • 伝統ジャンル | 金属たんきん 継承歴 | 三代目
  • 1968年東京生まれ。高校卒業後、美容師を経て、1988年に家業である長澤製作所に戻り鍛金工芸士としての道へ。現在、荒川区伝統工芸技術保存会 江戸下町職人会のひとりとして活躍中。

ものづくりの今を生きる下町職人

銀や銅、真鍮など、一枚の金属板を槌で叩き締めながら、表面に霰あられと呼ばれる突起状の細工を施し、急須や茶筒などの茶器や、花器を手作業で作り上げる「鍛金」。失われつつある日本の伝統工芸のひとつだ。そんな鍛金の技術を後継するのが長澤利久さんだ。

長澤製作所は、故・長澤金次郎さんが創業し、二代目の武久さん、そして利久さんと三代続く下町の職人一家だ。 「若い頃は下町が嫌で、早く家を出たくて。高校を卒業してすぐ、美容師見習いとして働き始めました。基盤がない美容師という仕事に限界を感じたとき、ふとものづくりに目がいって。外から見て初めて、うちって大したことをやっているんだと気 づきましたね」

天才肌の初代、人付き合い上手な二代目ともに荒川区無形文化財保持者に認定された下町職人の名門だ。長澤さんが修行に入った頃は、親子孫、三代揃って仕事をするという光景が珍しがられたものだった。 「この仕事はおそらく自分の代で途絶えるでしょう。伝統を忠実に守るだけではなく、時代に合わせた職人の生き方というのがあると思います。昔なら問屋に納めていればそれだけで成り立っていて、百貨店の店頭に職人自らが立って接客をすること なんてあり得ませんでした。買い手が作り手の顔を直接見られるというメリットもありますが、その分、職人にも接客するスキルが求められます。美容師の時の接客経験が活きているかもしれませんね」

下町の職人は、家族総出で家業を手伝うというのが当たり前。でもいまは外の力や知恵を借りて、最終的にお客様が望むものを作り上げることが職人です、と長澤さん。最後に、ものづくりでの一番の喜びを聞いてみた。「自分が良いものができたと実 感したときに、ユーザーさんにそれが反映されることですね。私が作るものは、芸術品ではなくて実用品。毎日使ってもらって喜んでくれることが何よりも嬉しいです」

長澤さんの作品は、とにかく美しい。輝き、色合い、シルエット、デザイン、どれをとっても芸術品と言っていいほど。
昨日よりも今日、今日よりも明日、今よりもっと良いものを作りたい。職人という仕事には終わりがない。

  • 今 出来る最高を 常に行う

  • 匠の言葉

    「今 出来る最高を 常に行う」
    かつてミハエル・シューマッハが語った言葉をオマージュ。常に自分の限界へと挑戦するアスリートには、職人と通ずるものがあるのだとか。

店舗情報

長澤製作所

  • 住所 荒川区荒川3-7-4▶︎MAP
    電話番号 03-3891-4907
    交通 JR常磐線三河島駅より徒歩5分
    ※訪問の場合は必ず事前にご連絡ください

    [1]使い込むほどに心地良さが増す長澤さんの作品。
    上:銅製急須 丸型(大・600cc)つる付 タテゴザ目もよう32,400円。
    下:銅製急須 丸型(中・380cc) 彩細もよう 21,600円。
    [2]代々受け継いでいる道具の数々。長澤さんの祖父でもある初代は、道具もすべて手作りをしていたのだとか。

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