
継ぎ人 その二十一
箸を通じて森と作り手のストーリーを紡ぐ
ISSUED | 2019.01

はし藤本店 四代目 上中 康成さん
- 伝統ジャンル | 箸 継 承 歴 | 四代目
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1982年東京生まれ。法政大学卒業後に家業に入り、2016年に四代目を継承。国産の素材で作られた箸を広く伝えるため、2018年にはニューヨークでの展示会に出展するなど、海外に向けても精力的な情報発信に取り組む。
箸を通じて森と作り手のストーリーを紡ぐ
国内のみならず、世界からも注目が集まっている和食。その和食をはじめ、日々の食卓に欠かすことができないのが「箸」だ。浅草かっぱ橋道具街に店を構える「はし藤本店」は、国産の木や竹を用いた割箸・木地箸を中心とした箸の専門店だ。
「原点は、明治43年に曾祖父が販売を開始した奈良県吉野杉の割箸です。私も物心がついた頃には家業を継ごうと決めていました。箸だけでなく商売というものに興味がありましたし、何より家族が好きでしたから」
そう語るのは、四代目の上中康成さんだ。大学卒業と同時に家業に入り、営業として実務経験を積んだ。そんな上中さんには、今でも忘れられない営業時代のエピソードがあるという。
「ある取引先から『割箸なんかゴミじゃないか』と言われたんです。本当に悔しくて、父や祖父にも申し訳ない気持ちでいっぱいでした。でも振り返れば、あの経験がモチベーションを高めるきっかけになりましたね」
上中さんは今、箸の背景にあるストーリーの発信に力を注いでいる。国産というだけでなく木の産地にまでこだわった箸選びもその一つだ。店頭に並べる商品に関しては自ら生産現場に足を運び、材料の特性や作り手の思いをとことん理解する。
「例えば同じ杉であっても、九州産と秋田産では香りや特徴が全く違います。野菜の産地にこだわるように、箸も産地別の違いを知れば、使う楽しみがもっと広がるはず。日本の豊かな自然と職人の技を、多くの方に感じていただけたらと思います」
「夢は、はし藤本店が箸の〝ブランド〞になること。やりたいことはたくさんあります!」という上中さん。身近でありながら奥深い箸の魅力を伝えるため、これからも挑戦は続いていく。
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匠の言葉
「和」
国産の箸にこだわり、他にはない産地別の割箸などを展開する上中さんは「業界では変態と言われているんですよ」と笑う。また、この言葉は「変化・変身」の意味も持つ。「今はまさに変化の途上。最近は、次世代にどのような形で引き継ぐか、ということも考えるようになりました」。
店舗情報
はし藤本店
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はし藤本店 四代目
住所 台東区西浅草2-6-2▶︎MAP 電話番号 03-3844-0723 営業時間 9:00~17:30 定休日 日祝 手の甲から中指までに約4cmを足した長さが使いやすい箸のサイズだという。店頭にはさまざまな長さの箸が揃うほか、オーダーにも対応。
茅ぶき屋根の古民家で屋根の骨組みや天井に使われた、貴重な「煤竹(すすだけ)」で作られた箸。永い年月を経て自然にできた茶褐色の濃淡模様が特徴だ。
全国各地の素材で作った割箸が並ぶ。
平安時代から竹の都として知られてきた京都。その京都産の竹を使った箸は、上中さんが何度も職人の元に通い、販売にこぎつけたという逸品だ。
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