敷居が高いと思われがちなオーディオルームづくりだが、実は意外と簡単に始められる。
今回は自宅でより良い音楽を楽しむための基礎知識を学んでみたい。
Edit&Word_effect. Association_DYNAMIC AUDIO.
監修いただいたのは

ダイナミックオーディオ
今年で創業60年を迎える家庭用オーディオ装置専門店。体験、感動、販売の3ステップを重視し、様々な試聴シーンを用意。店舗スタッフは家で音楽を聴く文化が日本に訪れた頃から蓄積、継承されてきた知識を駆使し、お客様が理想とする音楽環境を提案する。
音楽機器のプロに聞く
オーディオルームの基礎知識
オーディオ機器の進化でより身近な趣味に
日本の家庭でオーディオが親しまれるようになったのは1960年代以降のこと。オーディオブームの全盛期と呼ばれ、現在でも製造されている真空管やトランジスタアンプなどが登場した。その後数十年にわたり様々なオーディオメーカーやシステム機器が誕生。次第に音響と防音の対策を自室に施したオーディオルームを自作する音楽ファンが現れる。そしてオーディオ機器の性能は向上を続け、現在ではより手軽に高品質な音響環境が手に入るようになり、オーディオルームづくりへの関心がさらに高まっているという。
そこで今回は、オーディオルームづくりのサポートを行う音楽機器のプロ「ダイナミックオーディオ」のスタッフさんに監修いただき、既存の部屋で手軽により質の高い音楽を楽しむための基本を、これからオーディオルームづくりを始めるビギナーでも手軽に挑戦しやすい「スピーカー」「アンプ」「プレーヤー」「周辺アイテム」の4ステップで解説する。既に取り組み始めている方は自身のレベルに合わせてチェックしてほしい。また手に入りやすく機能性も高い商品を紹介。自宅での音楽鑑賞をより充実させられるよう、オーディオルームづくりの第一歩として役立てていただきたい。
オーディオルームづくりの二大要素
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環境編
奥行のあるサウンドを実現するためにはほど良い音の反響が必要となる。インテリアが多すぎると反響がなくなる一方、少ないと残響が生じクリアな音から遠ざかる。家具の配置でも音の響き方は変わり、ソファや絨毯など表面積の大きい物は反響をより抑制する。また布製品は吸音効果が高いなど素材によっても特性が異なるため、スピーカーや家具の配置を変えるなどして音の響き方の変化を確認してみよう。工夫次第で音楽環境は向上する可能性がある。
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機器編
サウンドの質を上げるために機器の性能は重要だが、いきなり全てを完璧に揃える必要はない。購入順も自由だが、音響システムへの影響が大きいスピーカーから選ぶことを推奨する。部屋の環境、予算や所有機器などの状況に応じて、どの機器のランクを上げるのか考えながら少しずつ充実させていくのがおすすめだ。オーディオルームはじっくりと自分好みに揃えていくのも楽しみ方の一つなので、機器の拡張性を意識しながら専門家と検討しよう。
手軽な工夫で音質が変わる5ポイント
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◯ 絨毯や本棚などのインテリアを整えて反響を調節
◯ 音の反響を意識して左右のスピーカーの位置を調整する
◯ 音楽再生時は換気扇や空調を切り、環境ノイズの発生を防ぐ
◯ 左右のスピーカーの高さを聴く人の耳の位置に合わせる
◯ 音楽を聴く場所の後方に布製品を置き、低音の響きを整える
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【STEP1】スピーカー
音質に最も影響を与える音響システムの軸
機器選びは、音の変化を手軽に感じられるスピーカーから選ぶのが一般的。サイズは部屋の広さに合わせるのがセオリーで、リビングダイニングのような広々とした部屋なのか、書斎のようなコンパクトスペースなのか、ベースとなる空間の広さで選ぶべきスピーカーが決まってくる。また、同じサイズのスピーカーでも能率の違いや個々が持つ周波数特性で再生音が異なる。今回は比較的手軽に設置しやすいブックシェルフ型を紹介する。
DALIOBERON 1
超小型サイズのスタンダードスピーカーで手軽に設置しやすく小さな部屋や壁掛けに適する。近距離でのリスニングで高いパフォーマンスを発揮。
サイズ:H274×W162×D234mm ¥74,800 ※2025年7月1日(火)より¥82,500に価格改定
TANNOYAutograph mini/GR
コンパクトサイズながら躍動感のある高音質を実現したアイテム。スピーカーの存在を忘れるほどの自然な音場を再現する。
サイズ:H356×W209×D155mm ¥396,000
Sonus faberLumina Ⅰ
環境に囚われず精度が高いダイナミックな低域再現ができるため配置によるストレスが少ない。木材を使用した高いデザイン性も魅力。
サイズ:H280×W148×D220mm ¥148,500
JBLL100 Classic MK Ⅱ
手軽に設置しやすいブックシェルフ型の中ではハイクラスなスピーカー。能率が良くアンプの性能に左右されにくいため比較的良音を楽しみやすい。
サイズ:H643×W390×D365mm ¥704,000 ※スタンドは別売り
ELACELEGANT BS312.2
スリムな形状で設置場所に困らないインテリア性とハイクオリティな音質を両立。小型スピーカーとは思えない幅広い表現力が特長。
サイズ:H208×W123×D282mm ¥385,000
※価格は全てペア・税込み
【STEP2】アンプ
音の表現力を増幅するオーディオのエンジン
スピーカーを購入したら次はアンプを決める。既に所有するスピーカーが再生する音領域において、音のバランスが崩れない性能を持つアンプを選べば、スピーカーの性能が活かせる。またアンプにはトランジスタや真空管などのタイプが存在し、手軽に扱いたいビギナーにはメンテナンスが容易なトランジスタタイプがおすすめだ。自分好みの音を気軽に探求したい方は、真空管を交換するだけで音質が変化する真空管タイプにチャレンジしてみるのも良いだろう。
TRIODERuby
AccuphaseE-3000
marantzMODEL 60n
LINNMAJIK DSM/5
McIntoshMA252
※価格は全て税込み
【STEP3】プレーヤー
音楽との付き合い方が表れる再生デバイス
レコードやCDなど様々なメディアを電気信号に変換するプレーヤーは、それぞれのリスニングスタイルに合ったものを選ぶのが基本。例えば、ネットの配信サービスを利用し幅広い音楽を楽しむユーザーはストリーミング対応のデジタルプレーヤーが適している。一方で、とにかく音質にこだわるならCDプレーヤー、アナログコレクションをじっくりと満喫したいならレコードプレーヤーと、これからの音楽との付き合い方を想像して検討したい。
圧縮形式による音の違い
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音楽配信など現代の音楽フォーマットの多くを占めるデジタル音源は、ファイルの圧縮形式によって音質が異なり、データサイズが小さいほど音質劣化が激しくなる。良質なサウンドにこだわるならデータサイズが最も大きくなる非圧縮ファイルの「WAV」や、再生時に元のデータサイズに戻るため音質が低下しない可逆圧縮ファイルの「FLAC」がおすすめだ。
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LINNMAJIK LP12
LUXMAND-03R
TechnicsSL-1300G
※価格は全て税込み
【STEP4】周辺アイテム
さらなる良音を追求するためのアクセサリー
もっと良い音を!という欲求が生まれたら、周辺アイテムも活用しよう。例えば、吸音材は反響音を軽減しクリアな音質に補正する。対して部屋全体に綺麗な反響を生むためには、音を様々な方向に反射させる拡散体が便利だ。また配線はグレードを上げることで信号に影響するノイズを低減できるので、より質の高い音を追及できる。
QRDBAD
厚さ3.6cmの薄型サイズで目立ちにくく、壁などに簡単に取り付けられる音響パネル。拡散と吸収のバランスに優れており本格的な音響処理が可能。
サイズ:H600×W600×D36mm ¥99,000
OYAIDEVONDITA-X
日本音響エンジニアリングANKH-Ⅲ
卓上置き型でありながら金具等を使用することで壁面にも設置可能な拡散体。自由度が高いため手軽に音の奥行きや広がりを補正できる。
サイズ:約H300×W660×D110mm ¥121,000
※価格は全て税込み