34歳にして様々な事業経営に携わってきた若き実業家の林 大貴さんが、
母親の突然死をきっかけにたどり着いたのは、「世界で一億人の命を救う」
という大きな使命。未知の医療業界に飛び込んだ、その歩みの理由とは。
Text_YUKI KATORI.
Photographs_HISHO HAMAGAMI.
PROFILE

林 大貴
1991年熊本生まれ東京育ち。大学在学中に起業し、これまで個人事業主のほか、代表取締役として3社、取締役4社、顧問3社を経験。大学卒業後、父の不動産会社に入社。 2017年6月にはカンボジアに不動産開発会社を設立し、社会貢献活動にも尽力。2021年11月、母親の死をきっかけに、「病気で後悔する」人がいなくなることを願い、株式会社ココロミルを設立。
母親の死をきっかけに
医療業界に進出
〝一念岩をも通す〞という諺を絵に描いたような人だ。門外漢による医療業界への参入には様々な障壁があるが、若さと行動力でそれを克服し、長時間検査が可能な心電図解析サービス「ホーム心臓ドック®」と、医療機関向け完全使い捨てホルター心電計「eclat」で、突然死の予防に取り組む林 大貴さん。そこには一人でも多くの命を救うという強い信念がある。「今でこそ医療機器メーカーとして、40を超える都道府県の病院にクライアントになっていただいていますが、最初は話すら聞いてもらえないこともありました。ならばと、第二種医療機器製造販売業という国から発行される医療機器メーカーの資格を取得して、その10ヶ月後には「eclat」をローンチし、そこからやっと価値を認めていただけるようになりました。ココロミル設立のきっかけは、私の母の突然死です。ストレスによる心臓の不調からくる脳出血で、まだ50代でした。
とてつもない後悔を抱え、こんな辛い気持ちになる人を少しでも減らしたいと思ったのが始まりです。健康診断や人間ドックなどの一般的な心電図検査は計測約30秒で、不整脈検出率は例えば50代で約11%。一方、弊社の「ホーム心臓ドック®」なら、病院に行かず自宅で9時間以上の連続計測が可能で、検出率は48.8%になります。50代の約半数の方が不整脈リスクを持っています。心臓は健康の要です。日本人の突然死の約65%は心臓に起因するといわれていますので、万が一のことを考えて、読者の皆さんにもしっかりケアしていただきたいです」
半径5mから世界へと広がる
健康と幸せの輪
林さんは2017年からカンボジアで沼地を整地して安心安全に住める街をつくる事業や、孤児院から経営者を育てるプロジェクトなども行っている。広く社会に貢献する事業を手掛けるモットーは、〝半径5m以内の人を幸せにする〞だという。
「僕は、どこかずっと〝ヒーローになりたい〞って夢を見ているところがあって。すべての人を助けたかった。だけどそれは無理だと気づいて、じゃあどうしようと思っていたときに『ペイ・フォワード』という映画を見たんです。人から人に善意を連鎖させていく話で、それと同じように、僕が半径5mの人を幸せにできたら、その人たちがまた半径5mにいる人を幸せにする。その輪がどんどん広がっていくと信じています。社会貢献を意識したことはあまり無いですが、同じように自分が「正義」だと思うことを仕事の判断基準にしていけば、結果として社会貢献につながる仕事ができるとは思ってます」
半径5mどころか、ココロミルのウェアラブル心電計は、世界中の人々を救おうとしている。
「日本では6分に一人、ヨーロッパでは3分に一人、アメリカでは34秒に一人が心臓病で亡くなっているといいます。僕たちのプロダクトを一刻も早く広めなければならないので、来年にはASEAN市場とヨーロッパ市場、再来年にはアメリカ市場に展開予定です。最終目標は世界で一億人の命を救うことです」
Memorable Words
人の倍動き、一番つらいところを僕が引き受けます。
その理由は、責任を自分が背負い、矢面に立つことで、
仲間が挑戦できる土台をつくるためです。
経営者の家系に生まれ、父からは「人と同じことをしていても人と同じにしかなれない」と言われて育ちました。人と同じことをしつつ、人と違うこともするので、行動量は1.5倍以上です。行動力だけの人間なので、僕に足りないものを埋めてくれる仲間は欠かせません。「同じ夢を見て、一緒に夢を叶えよう!」と巻き込めるのも強みかもしれません。同じ船に乗ってもらったからには、一番つらい部分は僕が引き受けようと決めています。
医療機関でも使用される高精度な「ウェアラブル心電計」。睡眠時無呼吸症候群とストレスのチェックも可能だそうだ。
林さんが〝正しい仕事〞として手がける、カンボジアでの事業。

創業のきっかけとなったお母さまとの別れが、今は大切な家族や仲間を守る覚悟に。