伝統の寿司をお好みで 世界を結ぶ江戸前の味
東麻布の日本料理店「寛心」の中井甚恭さんからバトンを受け継いだのは、大森海岸の寿司屋「松乃鮨」の手塚良則さん。創業時から100年以上の時を経てもなお変わらず、一人ひとりに寄り添う食体験を提供する。
Text_SAYAKA NAGASHIMA. Photographs_YASUHIRO TAKEDA.
ご自身の寿司の技術と知識をもって日本文化を世界へ広げ、各国の人々とつながっていらっしゃる。その真摯な姿を尊敬しています。
寛心|中井甚恭さんより
Profile
手塚良則さん
東京都生まれ。幼少の頃から父の魚の仕入れに同行して目利きを学び、学生時代から包丁を握る。大学卒業後、ヨーロッパや北米でプロスキーガイドとして活動。帰国後、家業である「松乃鮨」に携わり、のちに4代目を継承。アメリカ、スイス、イタリアなど世界各国で出張握りを行い、訪れた国は60ヶ国以上にのぼる。
世界中で親しまれ、海外出店も進む寿司店。その一方で、日本で味わうからこその価値を大切にする江戸前の老舗がある。大森海岸の「松乃鮨」だ。
「東京が観光都市として成長する中で、海外のお客さまにもきちんと対応できる店でありたい。そのため、ハラールやベジタリアンなど宗教や体質に配慮した対応を行っています。そのうえで『やっぱり本場は違う』と感じていただけるよう、できる限り江戸前の技術で提供しています」
そう語るのは4代目の手塚良則さん。先代の背中を見て育ち、小学生の頃から寿司一筋。店を継ぐ以前から海外客の受け入れを見据え、ヨーロッパや北米でプロのスキーガイドとして活動しながら、異文化への理解と感覚を磨いてきた。
「海外ではカリフォルニアロールなどが寿司として親しまれていますよね。そのような中で、江戸前の象徴だからといって赤貝やコハダを『これが本物だ』と押し付けるのではなく、その方が食べたい寿司を自由に楽しんでいただきたい。これは海外のお客さまへの特別な対応ではなく、創業時からの『コースを設けず、お客さまの好みに合わせて出す』という伝統の延長です」
同店ではその日に最も良い状態の「季節の酒肴」を3品用意。続いて、客の好みや気分に合わせて握る「お好み」と、職人が厳選した素材を順に提供する「おまかせ」という2つのスタイルから選択できる。海外客向けには「英語解説付きおまかせコース」も用意されており、歴史や文化、魚の産地の違いなどの説明付きで提供される。
「これからも積極的に寿司文化の発信をしていきたい」と語る手塚さん。器選びにも心を配り、鮨を通じて日本文化の奥行きまで伝える試みを、子ども寿司教室や大学での授業、講演などを通じて続けている。
「寿司文化の素晴らしさを世界に伝えるのはもちろんですが、日本の若い世代にもきちんと伝えていきたいですね。そうすることで本当の寿司文化が次世代に伝わっていくと考えています」
RESTAURANT INFO店舗情報

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松乃鮨
(まつのずし/大森海岸)電話番号: 03-3761-5622
交通: 京浜急行線大森海岸駅より徒歩1分 住所: 東京都品川区南大井3-31-14
▶︎MAP営業時間: 18:00~22:00 ※完全予約制 休業日: 水曜日、日・祝日 ※サービス料10%