TOP MAGAZINE特集 トーキョートラディショナル 新しい伝統工芸品の魅力

トーキョートラディショナル
新しい伝統工芸品の魅力

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「伝統工芸品」というと、日本各地に古くから伝わる美術品。そんなイメージをお持ちの方も多いようだが、その多くは日常生活を便利で豊かにするために生まれた「道具」である。生活の道具として機能性や使いやすさを追求し、職人たちの手によって技術・技法が確立され今も残されているのだ。そうして100年以上受け継がれてきた伝統工芸品が、東京都にはなんと41品目もある。しかも、単なる伝統の道具としてではなく、現代の技術やセンス、アイデアと融合し、 “新しい伝統工芸品”へと進化を遂げているのである。

「日常の中で生まれ受け継がれ時代に合わせ進化した伝統工芸品

伝統工芸品とは。そして、東京の“新しい伝統工芸品”とは? その魅力を紹介する前に、まずは伝統工芸品の歴史と“今”について確認をしておこう。

全国各地に千余り存在する伝統工芸品とは何か?

そもそも伝統工芸品の明確な定義はなく、一般に、伝統的に用いられてきた素材を元に、手作業を主として、伝統的な技法・技術をもってつくられてきたものを指す。各地で手に入る材料を利用し、独自に発展してきた伝統工芸品は全国各地に存在し、その数は千を超える。多くは、日々の暮らしの用を足すための生活必需品であり、伝統工芸品の魅力は、使ってこそわかる「実用の美」にあるといわれる。

こうした伝統技術の保護と、各地の工芸品産業の振興を図るため、1974年に制定されたのが「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」だ。一定の要件を満たしたものを「伝統的工芸品」として、経済産業大臣が指定し、2022年3月現在、全国に237品目がある。

ほかに、都道府県や市区町村などの自治体独自で指定を行っているケースもあり、東京都知事が指定する「東京都の伝統工芸品」が現在、41品目。そのうち江戸切子や江戸鼈甲(べっこう)など18品目は、国の「伝統的工芸品」にも指定されている。

江戸の歴史と文化が育んだ東京の伝統工芸品

東京の伝統工芸品が大きく発展したのは江戸時代。幕藩体制の中心地として栄えた江戸は一大消費地となり、さまざまな生活用具などを生産する職人たちは欠かせない存在だった。次第に経済の中心は武士から町人へと移り、「粋」や「洒落」を好んだ町人のニーズと、それに応えようとする江戸職人の心意気によって、その技術はさらに磨かれ、洗練されていった。

同時に、豊富に物を所有できない時代でもあり、“もったいない”という日本人の精神が、丈夫につくるのは当然のこと、壊れても何度でも修復し、リサイクルする、単なるものづくりの技術にとどまらない、手仕事の技を向上させたともいえる。しかし、時代が進み、機械工業が主流になる中で道具の質の高さよりも、効率的に、安く、大量に生産できることが優先され、需要が減少。生産量も職人の数も徐々に減っていった。

とはいえ、手仕事のよさが完全に忘れ去られたわけではない。連綿と受け継がれてきた江戸職人の匠の技を活かし、今の時代に必要とされる製品を生み出そうという動きも活発化している。例えば職人の手仕事の魅力を国内はもとより世界にも発信していこうというプロジェクト「東京手仕事」では、職人とデザイナーがタッグを組み、東京らしい感性溢れる工芸品を生み出している。今回はその中から、今の時代にふさわしい“新しい伝統工芸品”を紹介しよう。

<「東京手仕事」に注目>

「東京手仕事」とは、伝統の技で現代の消費者が求める伝統工芸品の新商品を創り出し、国内外に新たな市場を切り開くことを目指して、2015年度より、東京都及び東京都中小企業振興公社が推進するプロジェクト。職人とデザイナーがアイデアを出しあい、元々の形や用途にこだわらず、斬新な発想で今の生活を豊かにする商品を生み出している。

現在、中央区日本橋の日本百貨店にほんばし總本店内に、「東京手仕事」期間限定販売コーナーが設けられており、商品を直接手に取って見ることができる。2023年3月31日までなので、ぜひ、足を運んでみてほしい。

東京手仕事
URL : https://tokyoteshigoto.tokyo/
日本百貨店にほんばし總本店
住所:東京都中央区日本橋室町3-2-1 コレド室町テラス1階
営業時間:11:00~20:00
URL:https://www.nippon-dept.jp/shop/pages/shop_nihonbashi.aspx

空き瓶をバングルに変える江戸切子の技

●江戸切子
GLASS-LAB NEW PRODUCT “WA” / GLASS-LAB

天保5年(1834年)、江戸でビードロ屋を営む加賀屋久兵衛という人物が、金剛砂を利用してガラスの表面に彫刻を施したのが江戸切子の始まりとされる。その後、英国人の職人の指導を受け、現代に伝わる技法が確立された。大正時代に入り、ガラス素材やクリスタルガラスの研磨技術などの研究が進み、切子の品質はさらに向上。シャープな輝きを生む精緻な切子技法は、海外でも高く評価されている。

この切子の技法を用いて、空き瓶をバングルにアップサイクルしたのが、「GLASS-LAB NEW PRODUCT “WA”」。“平切子”という技法を用いてボトルをカットし、表面の一部も平切子で平らに加工することで、無機質なガラスに揺らめくような表情を加えている。さらに、細かい砂を吹き付けて加工する“サンドブラスト”で、細かな文様を施した。プロダクト名に“WA”とあるように、4種の文様はすべて輪をモチーフにしたデザイン。サステナブルな“輪”を形にしたアクセサリーだ。

素材 : ソーダガラス サイズ : 本体直径70mm×28mm、開口部25mm、重さ約40g 価格 : 全4種 各¥22,000 (税込) ※受注生産

素材 : ソーダガラス
サイズ : 本体直径70mm×28mm、開口部25mm、重さ約40g
価格 : 全4種 各¥22,000 (税込) ※受注生産

GLASS-LAB株式会社
GLASS-LAB株式会社
URL:https://glass-labo.com/

伝統の技とチタンで軽く強靭な傘を生む

●東京洋傘
発色チタン軽量16本骨傘 / モンブラン

日本で洋傘が知られるようになったのは安政元年(1854年)、ペリーの浦賀来航がきっかけとされる。その後、洋傘が輸入されるようになり、高価な輸入品に勝るとも劣らない傘をつくろうと、骨屋、手元屋、生地屋、それらを組み立てる洋傘職人らによって東京洋傘独自の技法が編み出され、受け継がれてきた。

この伝統の技と新素材の出会いによって生まれたのが、風速30 mの大風に耐えるほどの強靭さを持つ「発色チタン軽量16本骨傘」。できる限り軽量化したチタンの中棒と、軽くてよくしなるカーボンファイバーの16本の骨が美しい丸みのあるフォルムを形づくる。生地は傘専用織機で織られており、横糸が1本で繋がっているため端の部分の縫い返しがないのも特徴。耳の部分にはラメが施され、華やかさと強度も加わっている。サイズは、男性はもちろん、女性にも扱いやすい60㎝。丁寧に縫いくるんだ牛革の持ち手も、伝統的な手法で仕上げられており、雨が待ち遠しくなる1本だ。

素材 : ポリエステル、チタン、カーボンファイバー サイズ : 親骨の長さ60cm 価格 : ¥44,000(税込)

素材 : ポリエステル、チタン、カーボンファイバー
サイズ : 親骨の長さ60cm
価格 : ¥44,000(税込)

株式会社モンブラン
株式会社モンブラン
URL:https://www.montblanc-y.co.jp/

鼈甲とワイングラスをつなぐ日本の技

●江戸鼈甲
TOWA GLASS / 石川べっ甲製作所

江戸鼈甲は、ウミガメの一種であるタイマイの甲羅からつくられる。その歴史は古く、奈良東大寺の正倉院にも鼈甲(べっこう)を使った宝物が残っており、徳川家康も、鼈甲製の眼鏡を愛用した一人。使い込むほどに味わいを増し、現在も眼鏡フレームや時計、アクセサリーとして高い人気を誇る。

この素材をグラスに用いたのが「TOWA GLASS」だ。甲羅から生地を切り取り、製品の形と斑の位置を決めて切り出した数枚を水と熱で貼り合わせるという、繊細な伝統技術を駆使して、持ち手部分がつくられている。ユニークなのは、グラス部分が取り外せるところで、手入れを容易にすると同時に、別売りのグラスを用意すれば、赤、白、スパークリングと、ワインの種類に合わせて付け替えができる。グラス製造や金属加工、接着加工などの第一線で活躍する国内メーカーの技術がこれを可能にした。「TOWA」は、「永遠」という意味。長寿の縁起物でもある鼈甲を使ったグラスは、祝いの席もよく似合う。

素材 : ポリエステル、チタン、カーボンファイバー サイズ : 親骨の長さ60cm 価格 : ¥44,000(税込)

素材 : 鼈甲(養殖タイマイ含む)、真鍮金具、ガラス
サイズ : 最大幅約80mm×最大高さ約230 mm×最大奥行約80mm
価格 : ¥132,000(税込)

限会社石川べっ甲製作所(江戸鼈甲屋)
有限会社石川べっ甲製作所(江戸鼈甲屋)
URL:https://edo-bekkoya.com/

置くだけでアートに変わる立体物専用額縁

●東京額縁
FRAME FRAME / 富士製額

日本で額縁が本格的につくられるようになったのは明治時代に入ってから。当初は、指物、彫刻、塗装などの職人が分業で行っていたが、それらの技術を集約し、一貫して行うのが東京額縁の特徴で、さまざまなオーダーに応える製品をつくり出している。

額縁といえば、一般に絵画や写真など、平面の美術品を飾るものを思い浮かべるが、「FRAME FRAME」はトレイ状のフレームと、垂直に立ち上がったフレームからなる立体物専用の額縁。伝統的な額縁造形同様に、釘を使わずにつくられていて、トレイ部分はスライド式になっているので、置く物や置く場所に合わせて、自由な発想で楽しめる。素材は3種で、蜜蝋で磨き上げて木目を浮かび上がらせる和額縁ならではの仕上げと、独特の技法を用いた洋額縁ならではの古美仕上げを用意。通常は表側のみに施す加工や仕上げを両面に施してあるので、どの角度から見ても美しい。植物やアクセサリーなど、お気に入りの小物を額装してみよう。

素材 : Maple(楓)、Walnut(胡桃)、Antique(西洋箱柳) サイズ : 高さ297mm×幅210mm×奥行164mm 価格 : Maple:¥16,500(税込)、Walnut:¥22,000(税込)、Antique:¥32,780(税込

素材 : Maple(楓)、Walnut(胡桃)、Antique(西洋箱柳)
サイズ : 高さ297mm×幅210mm×奥行164mm
価格 : Maple:¥16,500(税込)、Walnut:¥22,000(税込)、Antique:¥32,780(税込)

株式会社富士製額
株式会社富士製額
URL:https://www.fujiseigaku.com/

しなやかな籐が生む揺れるディフューザー

●東京籐工芸
Rattan Diffuser / 木内籐材工業

籐(ラタン)は、主に東南アジアに自生するヤシ科の植物で、日本には遣唐使が伝えたとされる。しなやかさと軽さ、丈夫さを併せ持ち、当初は武具などに用いられ、江戸時代には編笠や枕、草履の表など日用品へと用途を拡大。現在も、肌触りのよさを活かした敷物や家具が製作されている。

しなやかで軽いという、籐の特徴を最大限に活かしてつくられたのが、香りと揺れを楽しむ「Rattan Diffuser」だ。やわらかな曲線を描く帆が風を受けると、丸みを帯びた真鍮の台が揺れ、籐のリードからふわりと香が漂う。帆は、直系2.5㎜の丸芯の籐を水に浸け、柔らかくして型にはめ、乾燥させてから和紙を貼る。リードは1.2㎜という極細の平芯を2〜3本どりにし、水引を応用して編んだもので、籐工芸の“曲げ”や“結び”の技法が存分に活かされている。リードは亀の子結びと環っか結びの二種を同梱。置く場所を選ばず、リードディフューザー用のものであれば市販のアロマオイルを使うこともできる。

素材 : 籐(リード2種)、和紙(帆)、真鍮(台座)、精油(アロマオイル10ml) サイズ : 幅220mm×高さ190mm×奥行32mm 価格 : ¥27,500(税込)※受注生産

素材 : 籐(リード2種)、和紙(帆)、真鍮(台座)、精油(アロマオイル10ml)
サイズ : 幅220mm×高さ190mm×奥行32mm
価格 : ¥27,500(税込)※受注生産

木内籐材工業株式会社
木内籐材工業株式会社
URL:https://www.kiuchi-tohzai.co.jp/

スマホで提灯をともし音楽を楽しむ

●江戸手描提灯
OTO CHOCHIN / 泪橋大嶋屋提灯店

堤灯の起源は16世紀初頭にさかのぼり、竹ひごでつくった円状の骨組みに和紙を貼り、上下に折り畳める現在の提灯の原型ができたのが、安土桃山時代とされる。広く普及したのは江戸時代に入ってからで、提灯に描き入れる独特の文字は“江戸文字”といわれ、現在も、当時の文字や家紋の描き方が受け継がれている。

現代の日常生活では目にすることのない提灯を、暮らしの中に溶け込むものにしたいと考案されたのが、「OTO CHOCHIN」。火袋の中でともされるのは、ろうそくではなくスマートフォンだ。各種アプリを使い、好みの明かりやお気に入りの音楽で空間を演出することができる、音をともす提灯。リビングはもちろん、ベッドルームにも似合いそうだ。デザインは、金と銀で市松や斜め縞、水玉などシンプルな柄が描かれている「GARA」と、音にまつわるモチーフや江戸文字が黒一色で描かれた「MON」の2シリーズ各3種。すべて手描きで、印刷とはひと味違う風合いが味わい深い。

素材 : 和紙、合板(MDF)、ステンレス サイズ : 直径118mm×高さ260mm、約240g 価格 : GARA3種、MON3種 各¥19,800(税込)

  • 素材 : 和紙、合板(MDF)、ステンレス サイズ : 直径118mm×高さ260mm、約240g 価格 : GARA3種、MON3種 各¥19,800(税込)
  • 素材 : 和紙、合板(MDF)、ステンレス サイズ : 直径118mm×高さ260mm、約240g 価格 : GARA3種、MON3種 各¥19,800(税込)

素材 : 和紙、合板(MDF)、ステンレス
サイズ : 直径118mm×高さ260mm、約240g
価格 : GARA3種、MON3種 各¥19,800(税込)

泪橋大嶋屋提灯店
泪橋大嶋屋提灯店
URL:https://www.namidabashi.com/

※2023年1月4日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

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