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PROFILE
チーズ・日本酒・ワイン・ガストロノミー講師 圓子(まるこ)チーズさん
科学的視点からテイスティングを学ぶ「インフィニット・酒スクール」プロデューサー。チーズプロフェッショナル協会理事・技術研修部部長。ジャパンチーズアワード実行委員。イベントやセミナーの企画運営など、飲食のプロとして幅広く活動。日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会認定「唎酒師(ききさけし)」。日本酒学講師。2011年「シュヴァリエ・デュ・タスト・フロマージュ・ド・フランス」称号叙任。2018年 ギルド・クラブ・ジャポン「コンパニオン・ド・サントゥギュゾン」称号叙任。
作り手のこだわりが詰まった注目の国産チーズ
「ここ数年、海外の権威あるチーズコンテストで、日本の工房が作ったチーズが数々の賞を獲得するなど、そのおいしさは世界から注目を集めています」と圓子チーズさん。
日本のチーズ工房数は、約20年の間に3倍以上に急増。現在、全国に350ほどあるといわれ、酪農家が愛情たっぷりに育てた牛やヤギの乳でチーズ作りを始めたり、海外でチーズ作りの基礎を学んだ職人が工房を構えたりしている。
「例えば、日本の発酵食品である味噌や醤油を使ったチーズをはじめ、桜の葉で香り付けしたものなど、オリジナリティにあふれるのが国産チーズの魅力の一つです。研究熱心で、小さな工房だからこそできる丁寧な手仕事で〝おいしさ〞を追求している生産者も多く、日本人の嗜好に合った食べやすいものや旬のもの、その土地でしか作れないものなど、チーズの中に生産者のこだわりがぎっしり詰まっています。ぜひ多くの人に国産チーズを味わっていただきたいですね」
チーズと日本酒は相性抜群 好みの組み合わせの探求を
チーズとのペアリングについて、圓子さんは「ワインを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、日本酒との相性がものすごくいいです」と強調する。
「チーズ工房同様、研究熱心な蔵元が多く、高品質な日本酒が続々と登場していて、多彩な味と香りを味わえます。日本酒もチーズもグルタミン酸などを豊富に含み、うま味の掛け合わせによって互いを引き立てるので、いろいろなペアリングが楽しめます。また、比較的クセが強いチーズの場合、ワインの種類によっては苦味や渋味、生臭みが強調されますが、日本酒は米麹由来の甘味やうま味がチーズのクセをまろやかに包んでくれます。どんなチーズと組み合わせても、失敗がほとんどないのが日本酒なんです」
では具体的に、何を意識してチーズと日本酒を選ぶとよいのだろう。
「一般的に、クリームチーズなどシンプルなものには、甘味、うま味、酸味、苦味のバランスがとれた日本酒が合い、塩分が強い青カビチーズには甘い日本酒、うま味の強いハードチーズには濃淳な日本酒が相性抜群です。選ぶ時に〝同調〞〝対比〞〝リセット(ウォッシュ)効果〞の3つを意識すると、ペアリングをするのがグンと楽しくなりますよ(下記参照)。例えば濃厚なチーズの場合、〝同調〞を意識して芳醇な日本酒と合わせると、味の濃さが強調されます。また、〝対比〞を意識して、あえてシンプルでさっぱりした日本酒を選べば、チーズの個性をじっくり堪能することができます。国産チーズも日本酒も、とにかくバラエティ豊かなので、いろいろなペアリングを試して、自分好みを探してみてください」
この秋、絶対に味わいたい今注目の工房のチーズ×日本酒5選を紹介してもらった。
チーズと日本酒ペアリングのポイント
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同調
味の強弱、濃淡、香り、食感などが似ているもの同士を組み合わせること
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対比
あえて全く異なる味のものを組み合わせて新しい第3の味を作ること
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リセット
(ウォッシュ)
効果発泡酒や酸味の強い日本酒を組み合わせることで、チーズの脂肪を洗い流してリセットすること
フロマージュ・ド・みらさか/三良坂フロマージュ(広島県)
ブラウンスイス牛のミルク100%を使い、酵母で熟成させたチーズ。ミルク本来の味わいを熟成段階に合わせて、存分に堪能できる。熟成初期は酸味があり、あっさりとした味わい。熟成が進むにつれて外側からとろけ、濃厚な味わいに変化する。
三良坂フロマージュは、広島県北部の山間で牛とヤギを約60頭、「山地(やまち)酪農」という手法で育てる。ヤギの熟成チーズ「フロマージュ・ド・みらさか シェーブル」、地元の果物やハーブを使ったチーズ、和菓子をイメージしたチーズなども逸品。
フロマージュ・ド・みらさか
2015年「ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト」金賞、2013年「フランストゥール 国際チーズコンクール」銀賞受賞
価格: | 1,167円 |
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販売: | 通年 |
内容量: | 70g以上 |
賞味期限: | 包装日より14日 |
電話: | 0824-44-2773 |
ペアリングは・・・
甘味、うま味、酸味、苦味のバランスがとれたタイプで!
クラシック仙禽 無垢/せんきん(栃木県)
価格:1,800円(720ml)
地元さくら市で、仕込み水と同じ水で育てた米「ドメーヌさくら山田錦」を使用し、古くから伝わる生酛造りで醸造。上品なうま味と、さわやかな香りが特徴で、「フロマージュ・ド・みらさか」との酸味・うま味の同調を楽しめる。
東京ブッラータ/CHEESE STAND(東京都)
生クリームと繊維状にカットしたモッツァレラを、フレッシュなモッツァレラの生地で巾着状に包んだ、イタリア・プーリア州発祥の個性派チーズ。食べる30分ほど前に冷蔵庫から出して常温に戻しておくと、ナイフを入れた時に中身がトロ~リと流れ出す。
CHEESE STANDでは、東京・清瀬市の牧場から届くミルクで毎朝3時からチーズ職人が手作り。その日に工房で作ったチーズを店頭に並べている。毎年秋には、期間限定で黒トリュフとポルチーニの芳醇な香りが楽しめる「トリュフブッラータ」も登場。
東京ブッラータ
2024年「第1回ARTISAN CHEESE AWARDS」SUPER GOLD、2020年「ジャパンチーズアワード」銀賞、2018年「ジャパンチーズアワード」銀賞&最優秀部門賞など多数受賞
価格: | 1,200円※12月1日より1,350円 |
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販売: | 通年 |
内容量: | 約150g |
賞味期限: | 製造より5日 |
電話: | 03-6407-9806 |
ペアリングは・・・
フレッシュで、甘味のあるタイプで!
風の森 秋津穂 507/油長酒造(奈良県)
価格:1,799円(720ml)
契約栽培の秋津穂を50%精米。超硬水の仕込み水を使い、じっくりと長期低温発酵させた一本。洋梨のような香りと心地よく弾ける微発泡感が特徴で、さわやかな酸味と甘味のバランスが絶妙な「東京ブッラータ」との同調も◎。
フロマージュ・ド・美瑛/美瑛放牧酪農場(北海道)
フランスのコンテ地方のチーズ製法を取り入れ、美瑛の放牧乳で作ったハードタイプのチーズ。12ヶ月以上熟成させ、ナッツのような華やかな香りを満喫できる。11月~4月は、青草を食べた牛のミルクを使用した、力強い味わいの「夏ミルク」を販売。
美瑛放牧酪農場では4種(ジャージー種、ブラウンスイス種、ホルスタイン種、モンベリアード種)の牛を約120頭、ストレスフリーの環境下で飼育している。2020年にチーズ工房設立。セミハードタイプの「ラクレット・ド・美瑛」も美味。
フロマージュ・ド・美瑛
2023年「ALL JAPAN ナチュラルチーズコンテスト」最高賞・農林水産大臣賞、2022年「ジャパンチーズアワード」グランプリ受賞
価格: | 1,300円 |
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販売: | 通年 |
内容量: | 100g |
賞味期限: | 発送日より50日 |
電話: | 0166-68-6777 |
ペアリングは・・・
味が濃厚で重みのあるタイプで!
Tsuchida 壌木桶 GI※利根沼田/土田酒造(群馬県)
価格:8,800円(720ml)
酒米は、蔵がある川場村の自然栽培米。蔵付き酵母を利用した生酛造りで、地元産の杉木桶で仕込んでいる。精米歩合は90%で米本来の味わいを堪能できる。酸が強く、うま味があり、ハードタイプの「フロマージュ・ド・美瑛」との同調が楽しめる。
※「Geographical Indication」の略称で「地理的表示」のこと。 産地ならではの特性が確立された商品だけが、その産地名を名乗ることができる
翡翠/アトリエ・ド・フロマージュ(長野県)
「もっと刺激のあるブルーチーズも欲しい」との要望に応えて誕生。定番商品のブルーチーズを、より凝縮させることで塩気と刺激を強め、力強い味わいに。さらに、チーズに繁殖させる青カビも変える徹底ぶりで、定番商品とは似て非なるブルーチーズ。
アトリエ・ド・フロマージュは、“日本のブルゴーニュ”と呼ばれる長野県東御市に工房を構える。チーズの産地として名を馳せるフランス・ブルゴーニュ地方に似た風土を生かし、1982年に日本で初めて「生チーズ(フロマージュ・フレ)」作りを始めたパイオニアだ。
翡翠
2021年「WORLD CHEESE AWARDS」SUPER GOLD(BEST 16)、BEST JAPANESE CHEESE、2020年「ジャパンチーズアワード」青カビ部門 金賞など多数受賞
価格: | 2,430円 |
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販売: | 通年 |
内容量: | 150g |
賞味期限: | 熟成具合に応じて、出荷日を含め19日以上のものをお届け |
電話: | 0268-64-2767 |
ペアリングは・・・
ジューシーで芳醇なうま味のあるタイプで!
陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸(火入)/八戸酒造(青森県)
1,980円(720ml)
酒母麹に白麹を使用するなど、他の日本酒とは一線を画した個性派。メロンのようなフルーティーな香りと芳醇なうま味が特徴で、脂肪酸を多く含むブルーチーズとの同調が楽しめる。またほんのり甘いのでチーズの塩味との対比も。
麹チーズ 蔵(KURA)/蔵王酪農センター(宮城県)
世界で初めて、麹菌をチーズの表面に生育させて熟成した日本生まれのチーズ。日本の伝統的な発酵食品である味噌や醤油を思わせる独特の香りと、強いうま味が特徴。原材料には新潟産純米大吟醸酒の酒粕が含まれ、酒粕の豊かな風味も楽しめる。
蔵王酪農センターには、約100haの広大な牧場、ふれあい牧場、チーズ工場、飲食店、チーズ直売店、研修所など、さまざまな施設がある。チーズ作りには、蔵王連峰の豊かな自然が育んだ牧草を食べ、湧き出る天然水を飲んで育った牛の搾りたてミルクが使われている。
ペアリングは・・・
リセット効果のあるスパークリング酒で!
瓶内二次発酵MIZUBASHO PURE/永井酒造(群馬県)
5,451円(720ml)
伝統的な日本酒製法に瓶内二次発酵を取り入れた、本格的なスパークリング酒。チェリーやライチのような香りとシルキーな泡をシャンパンのフルート・グラスで堪能したい。風味の強い麹チーズとの組み合わせはリセット効果で、チーズも酒も止まらなくなる!?