伝統的な江戸前の手法を守りつつ新たな感性も大切にした料理を追求
根津の日本料理店「根津 日本酒 多田」の多田さんからバトンを受け継いだのは八重洲の老舗「鰻 はし本」の橋本正平さん。
王道の鰻料理に加えて、季節感あふれる一品料理を提供する。
Text_SAYAKA NAGASHIMA.
Photographs_MASAMI OHIRA.
橋本さんの鰻食文化を想う姿勢にはいつも感銘を受けます!温故知新という言葉がぴったりの鰻料理は、心に響く美味しさです。根津 日本酒 多田 |根津 多田 修平さんより
Profile
橋本 正平さん
東京都出身。24歳で「鰻 はし本」の板場に入り、2016年に4代目に就任。鹿児島県「泰正養鰻」など、各地の養鰻場と直取引を開始する。18年には中央大学の海部健三教授、エーゼロ株式会社と「うなぎの未来の相談会」を立ち上げ、資源問題にも取り組んでいる。
蕎麦、寿司、天ぷらに並び、“江戸前”を冠する料理のひとつ「鰻」。八重洲にある「鰻はし本」は1947年創業の老舗だ。
現在、店を切り盛りしているのは橋本正平さん。2003年に店に入り、2016年に四代目を継いで以降、現代に続く老舗としてのあるべき姿を模索し、いくつもの改革を行ってきた。その一つが鰻の「仕込みをしない」ことだ。
「かつて鰻は屋台料理で、客の注文に応じて仕込みをしていました。鰻をベストな状態で提供することを考えた結果、可能な限り事前の仕込みはしない方法を優先しました」
さらに継ぎ足しのタレも、時代や客の好みに配慮しながら長い年月をかけて徐々に糖度を上げる方向に舵を切った。
鰻は主に指名買いで、各生産者が生み出す素材の個性にこだわっている。メニューには王道のうな重、蒲焼、白焼きのほか鯉やすっぽんなどを使った川魚料理、そして串ものといった一品料理が並ぶ。
「美味しいことは当たり前で、そこに丁寧な手仕事が両立してこその『粋』。日本橋の老舗として商売をしていくには、『粋』であることが非常に大切だと考えています。鰻料理は季節感を出しにくいのですが、そのぶん一品料理にはちょっとした遊び心を加えるようにしています」
酒の品揃えも豊富で、蔵元とも交流が深い橋本さん自らが相性を考え選んだ日本酒や焼酎が並ぶ。手製のテイスティングシートを見ながら、料理に合わせるのも一興だ。
最近では鰻の漁獲量の減少を受け、環境に負担をかけない流通や、サステナブルな食べ方の模索など、鰻業界内外との意見交換を積極的に行っている。
「鰻の調理だけでなく、鰻を取り巻く環境についても自分自身で調べ考えて発信しながら、老舗という肩書にふさわしい、納得のいく江戸前を追求していきたいです」
RESTAURANT INFO店舗情報
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鰻 はし本
(うなぎ はしもと/八重洲)住所: 東京都中央区日本橋3-3-3 いづみやビル1F
▶︎MAP電話番号: 03-3271-8888 営業時間: 11:00~14:30(L.O.13:30)、17:00~21:00(料理20:00 L.O./飲み物20:15 L.O.)
※土曜日は11:30~15:00(L.O.14:00/完売次第終了)休業日: 日曜日 ※ほか不定休