Jfree｜飯田橋

自由を人生のテーマに据え、料理を通じてそれを体現する若きシェフがいる。飯田橋の「Jfree（ジェフリー）」の陣内 翼さんは、35歳ながらミシュランの星付き店を渡り歩いて修行を重ね、自身もミシュランのセレクションを獲得した次世代の旗手だ。しかし陣内さんはその華々しい経歴を、無自覚に甘受しようとはしない。

「僕の経歴を見て店に来て下さる方も多いのですが、皆さんが口をそろえておっしゃるのは修行を積んだ店のスタイルと『全然似ていない』ということ。料理人は通常、修行した店のスタイルに寄せることが多いですが、僕は最初から個性を前面に出し、自分のバランス感覚でコースを組み立てています。これまでの経歴にとらわれず、僕個人として評価してもらえたら嬉しいです」

自身の料理について「素材を直感的に感じてほしい」という陣内さん。その直感を呼び起こすトリガーとして、一番大切にしているのは「香り」だ。

「料理を提供する段階で美味しい香りを届けられることは大きなアドバンテージです。そして、それが実際に食べた際の感動につながる。僕はそう信じているので、全ての食材に香りをまとわせてから仕上げています」
　
陣内さんの料理はフレンチでありながら、和のエッセンスも内包する。和食の思考法を取り入れるために飛び込んだ料亭での修行経験を、自分のものとして存分に生かしているのだ。

「香りをまとわせた素材は何重にも美味しくなる、というフレンチの掛け算スタイルからどれだけ引けるかが腕の見せ所ですね。一方で、引き算をすればするほど大衆料理に寄ってしまうため、香りとワンポイントの個性でカバーして仕上げるのが僕の料理です」

独立から1年強が経過した現在もさらに上を見据えている。

「現状に満足したらそこで終了だと思っています。1年前の料理よりも今の方がいいと言ってもらえるよう、さらなるステップアップをしていきたいです」