流儀や常識に倣わず己の料理を貫く〝独学者〞
銀座の中華料理店「銀座 やまの辺 江戸中華」の山野辺 仁さんからバトンを受け継いだのは、新橋のフレンチ「Restaurant La FinS」の杉本敬三さん。自由な感性に従い、独自の味を研ぎ澄ます。
Text_SAYAKA NAGASHIMA. Photo_MASAMI OHIRA.
フレンチ界を代表する天才シェフ。文化を感じる一皿とワインの調和が見事で、その世界観に包まれる時間はまるで貴族のような至福です。
銀座 やまの辺 江戸中華|山野辺 仁さんより
Profile
杉本敬三さん
京都府生まれ。辻調理師専門学校・フランス料理カレッジを卒業後、19歳で渡仏。アルザスなどの地方都市を中心に滞在し、4年目にシェフとなる。計13年の滞在を経て2012年に「 Restaurant La FinS」開店 。2013年「 RED U-35」初代グランプリ受賞。
天賦の才を磨き、自らの道を切り拓いてきた料理人がいる。新橋にある「Restaurant La FinS」の杉本敬三さんだ。母の手伝いをきっかけに包丁を握り、8歳で料理人の道を決意。高校時代には数々の料理大会で優勝し、地元メディアにも出演するなど、〝料理少年〞として知られる存在となった。
杉本さんの信条は、師を持たない〝独学者〞であること。19歳で単身渡仏して以来、その思いは変わらない。
「僕は自分の料理が大好きで、それをもっと極めたい。だから誰かの真似をする必要はないと思っているんです。日本では〝どこで修業したか〞が重視されがちですが、僕はそうした考え方が好きじゃない。誰にも干渉されず、自分が良いと信じるものを提供していきたいんです」
「Restaurant La FinS」は、まさにその哲学を体現する店だ。
「大切なのは、自分が〝今日食べたい〞と思う料理を作ること。同じ食材でも日によって熟成の具合が違うので、火入れや香り、ソースも変えます。天候や気温に合わせて、コンソメをクリーミーにしたり、温かい料理をあえて冷たく仕上げたり、一人でやっているからこそできる柔軟な対応で、組織では表現が難しい仕事を目指しています」
ワインもまた、杉本さんの料理哲学を語るうえで欠かせない要素だ。高品質な銘柄を中心に、常時約800種類を保管。すべてのコースにペアリングが付き、客の嗜好や経験に合わせてアレンジする。
同じ料理でも、人によって〝美味しい〞と感じるワインは違う。だから全員に同じものを出すのは意味がないと考えています。同じコースを頼んでも、提供するワインが異なることは珍しくありません」
今後はアラカルトを強化し、コース中心のスタイルに新たな楽しみを加える構想もあるという。店名の由来となった「フィネス」は、フランス語で〝余韻〞の意。自らの感性を信じて進む独学者が放つ次の一手に、静かな期待が寄せられる。
RESTAURANT INFO店舗情報

-
Restaurant La FinS
(れすとらん ら ふぃねす/新橋)電話番号: 03-6721-5484
交通: JR新橋駅より徒歩約5分 住所: 東京都港区新橋4-9-1 新橋プラザビル B1F
▶︎MAP営業時間: 18:00~23:00(L.O.19:00) 休業日: 日・月曜日、不定休 ※完全予約制(予約はOmakaseのみ)
※サービス料 15%