京の老舗で磨いた技を自由なアラカルトで
新橋のフレンチ「Restaurant La FinS」の杉本敬三さんからバトンを受け継いだのは、東麻布の日本料理店「寛心」の中井甚恭(しげゆき)さん。季節の素材を生かし、客の好みに寄り添う一皿を提供する。
Text_SAYAKA NAGASHIMA. Photographs_MASAMI OHIRA.
京都 吉兆で磨いた本格和食をアラカルトで提供する中井さん。その柔軟な姿勢に触れて、私自身も大いに刺激を受けています。
Restaurant La FinS|杉本敬三さんより
Profile
中井甚恭さん
京都府生まれ。高校卒業後、辻調理師専門学校を経て「京都 吉兆」に入社。「京都 吉兆 リーガロイヤル店」(現在は閉店)から「京都 吉兆 嵐山本店」まで幅広く経験し副料理長、「祇園・HANA吉兆」では料理長兼店長を務めた。計21年の研鑽を重ね、2025年6月に「寛心」を開業。
先付からご飯まで、順を追って味わう懐石料理には、独特の格式と高揚感がある。一方で、その日の気分に合わせて一皿を選びたい時もある。そんな夜に寄り添ってくれるのが、東麻布の日本料理店「寛心」だ。
店主の中井甚恭さんは、20年以上にわたり「京都 吉兆」で研鑽を積んだ実力派。40歳の節目の2025年に、新たな場所での挑戦をスタートさせた。
「『京都 吉兆』の延長に留まらず、新たな環境に身を置きたい思いがありました。その中でさまざまなご縁が重なり、東京で新たな店を任されることになりました」
店名に込めたのは、「その日食べたいものを気兼ねなく選んで、寛げる場にしたい」という想い。それが色濃く表れているのが同店のメニュー構成だ。最初に椀物と造りを含む3品を提供し、その後はアラカルトから好みの料理を選ぶ。すべてをアラカルトにしなかったのは、日本料理の伝統を大切にしたいという中井さんの想いからだ。
「日本料理は〝椀刺〞と言われるほど、お椀と造りが大切です。最初の3品で季節感や自分の料理をきちんとお見せし、あとは自由に楽しんでいただきたい。そのバランスを考えました」
料理の軸となるのは、出汁の存在感だ。京都から取り寄せた水で引く出汁が、椀物や炊き合わせの味をしっかりと支える。そのほか備長炭で焼き上げる焼き物や季節のご飯など、素材の良さが素直に伝わる品が揃う。
「食材は京都時代からお付き合いのある生産者さんから仕入れるようにしています。いただいた素材の魅力を伝えること、全てを無駄なく使い切ることを大切にしています」
日本料理を通じて「もっと多くの人とつながりたい」と語る中井さん。海外からの来客も多く、和食の魅力を世界へ伝えることも視野に入れている。会席の端正さとアラカルトの自由度。その両方を併せ持つ「寛心」には、中井さんの技と細やかな気遣いが息づいている。
RESTAURANT INFO店舗情報

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寛心
(かんしん/東麻布)電話番号: 050-1722-2599
交通: 赤羽橋駅より徒歩3分 住所: 東京都港区東麻布1-19-2
▶︎MAP営業時間: 17:00 – 25:00(L.O.24:00) 休業日: 水曜日、不定休 ※サービス料10%