子どもの頃から好きなことを始めると、我を忘れて夢中になっていたというセイジ氏。今も、時間を忘れて作業に没頭してしまうことがあるそうで、「靴作りは天職かな」と語る。
「履くと気持ちが上がる」そんな靴が理想です
ビスポークシューズメイカー、セイジ・マッカーシー。大人の色香漂う彼が作る靴は、納期1年待ちという人気だ。名門大学を卒業し、様々な国で多様な文化に触れ、感性を磨いた靴職人が作るビスポークシューズの魅力とは。
Photographs_HISHO HAMAGAMI.
Text_SAYAKA NAGASHIMA.
PROFILE
セイジ・マッカーシー
1976年米コネチカット州生まれ。スタンフォード大学を卒業後、NBAのビジネスコンサルタントなどを経て、靴職人に転身。ロンドン、ベルリンなどでの修行を経て、2016年に母親の母国日本で自身のブランド「Seiji McCarthy」を創設。
エリートビジネスマンから一転夢を追いかけ靴職人の道へ
アメリカ人の父と日本人の母をもつセイジ・マッカーシー氏は、大学時代までをアメリカのコネチカット州で過ごした。NBAに憧れ、スニーカーが大好きだった少年時代には、お気に入りのスニーカーを並べてはそれを眺めて過ごしたという。
名門スタンフォード大学に入学し両親の薦めで一度は医学の道を目指すが情熱が湧かず、卒業後はイギリスのLSEで修士号を取得し、フランスの名門経営大学院インシアードではMBAを取得するなど、進路模索の時期を過ごす。その後、少年時代からの憧れであったNBAの仕事に携わり、北京オリンピックのプロジェクトマネジャーという大役に従事するが、この仕事を終えて、セイジ氏の中である区切りがついたという。 「人生は短い。人の目やステイタスを気にするのではなく、自分のしたいことをする人生をおくりたい」
そして、夢だったスニーカーのデザインに携わる仕事を目指し、ミラノのデザインスクールに入学。そこで、思いがけず人生の転機となった出来事に遭遇することになる。
ある日、後学のためにと友人に誘われ、フランスの高級紳士靴ブランド「ベルルッティ」のショップで靴の試し履きをする。その瞬間に、セイジ氏は強い衝撃を感じたという。
「スッと背筋が伸びて、堂々とした鏡の中の自分に目を奪われました。そして例えようのない高揚感、自信が湧き上がってくるのを感じました。良い靴にはこんな力があるのか、こんな靴を私も作りたい。そんな強い衝動に駆られました。その後はもう、靴職人一直線です」
お客様の人生に寄り添い等身大の魅力を引き出す靴を
イギリス、ハンガリー、ドイツの工房で技術を磨く日々を送ったセイジ氏。祖母に会うため来日した際には、屈指のビスポークシューズメイカーとして注目を集めていた柳町弘之氏に飛び込みでアポイントを取り指導を仰ぎ、日本での修行を始める。そして2016年、柳町氏の後押しを受けて自身のブランド、「Seiji McCarthy」を立ち上げたのである。
セイジ氏の靴は「クール」「セクシー」などと表現されることが多い。強い自己主張はなく、どちらかと言えばオーソドックスなデザインなのだが、不思議な「色気」ともいうべき魅力がある。
「ビスポークシューズは必ずしも華美である必要は無く、お客様の等身大の魅力を引き出す存在であるべきです。お客様の人生と歩む靴。それが私の目指す靴作りですね」
靴はビスポークで38万円。パターンオーダーで18万円からと、それなりに高額だ。それでも、納品は一年待ちの人気ぶりだというセイジ氏に、今後の夢、目標について聞いてみた。
「アメリカで展示販売会を行いたいですね。日本の職人技術は本当に素晴らしい。アメリカで生まれて日本で靴職人になったので、今度はアメリカに日本のいい物を届ける番かなと思っています」
日米二カ国のルーツを武器にした気鋭のビスポークシューズメイカーの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
Seiji McCarthy
住所:渋谷区神宮前3-18-15 ラグラックスビル201
TEL:070-4565-0678
URL:http://www.seijimccarthy.com/