「旅人は住む人のように、住む人は旅人のように」を信条とする金井さん。自転車を通じて「今の暮らしよりもう1つ新しいものを知って、世界をより広げてもらえたら」と語る。
自分の好きな場所に行って、好きなことをする。自転車は自由の象徴です。
東京を走ることに特化した自転車「トーキョーバイク」の生みの親、金井一郎さん。
そのシンプルなデザインとリラックスした乗り心地に根強いファンも多い。
「街」をコンセプトにしたかつてない自転車を通じて、伝えたい思いに迫る。
Photographs_TAKASHI TSUBAKI.
PROFILE
金井 一郎
東京都生まれ。大学卒業後はオートバイや自動車関連の会社を数社経験。その後、自転車パーツのオンラインショップ経営、自転車関連企業の広告やWebサイト制作を経験し、2002年に街乗り用の自転車「トーキョーバイク」を発売。現在は都内4店舗の直営店のほか、30以上の国や地域の取扱店で展開。
走る人の暮らしに溶け込み
街を楽しむ自転車を作りたい
コロナ禍で密を避けられる移動手段として、この数年で注目度がアップした自転車。世の中にはママチャリやロードバイクなどさまざまな種類の自転車が存在するが、大人が気軽に街乗りを楽しめるカッコいい自転車は意外に少ない。そこに目を付け、東京の街を走ることに特化した自転車「トーキョーバイク」を生み出したのが、金井一郎さんだ。
学生時代からオートバイ好きで、バイク関連の会社に就職。先輩達が独立してバイクや車関係のパーツ輸入商社を営む姿に触発され、「自分も自転車関連の事業を興してみたい」と独立した。ネットショップの屋号を考える際にふと「トーキョーバイク」という名称を思いついた瞬間、名前に導かれるように「東京の街を楽しめる自転車」という構想が一気に走り出した。
街乗りがメインのトーキョーバイクは漕ぎ出しが驚くほど軽く、前傾姿勢にもなりすぎない。自転車を漕いでいることを意識せず、東京の景色を楽しんでほしいとの思いからだ。そして、何よりシンプルでスタイリッシュなデザインとカラーが、走りたい気持ちを後押ししてくれる。
「自転車に乗ってみると、地下鉄やバス移動では分からない新しい発見が必ずあります。また、乗りながら“次はどこに行こうか”と気ままに行先を変更できるのも自転車のいいところ。一人の時間を楽しめる大人にぴったりの乗り物だと思っています」
愛称はいつでも「きんちゃん」
これからも自然体でありたい
金井さんが何より大切にしているのは「人とのつながり」だ。元々一人で会社を興した金井さんは当初、町の雰囲気を気に入り、東京・谷中に店舗を構えていたが、そこで出会った人々からとても大きな影響を受けたという。
「飲み屋などでできた友人がみんなとても自由で楽しそうだったんです。お金を稼いでいるかどうかは関係なく、とにかくやりたいことをやっていて、こういう生き方っていいな、こういう生き方でもいいんだな、と思えるようになりました。そして、自分も自転車を通じて『自由に生きるって楽しいんだよ』と伝えたい思いが強まり、モノではなく生活の一部を売るという考えにシフトしていったんです」。
清澄白河にある旗艦店「TOKYO BIKE TOKYO」の店内では、トーキョーバイク以外にもコーヒーショップや日用品、植物店が併設され、「生活の一部を売る」というコンセプトが体現されている。
起業当初、飲み仲間が仕事を手伝ってくれていたことの名残で、現在も社員からは仲間内での愛称だった「きんちゃん」と呼ばれている。昨年で20周年を迎え「本当はチャレンジなどせずにのんびりしたい」と冗談を交じえながらも、e-bikeの構想を明かしてくれた。
自然体のきんちゃんが自転車を通じて提案するのは、肩肘張らない人生の楽しみ方。きんちゃんの話を聞いているうちに、次の休日は久々に自分の足でペダルを漕いで、風の匂いを感じてみたくなった。
- トーキョーバイクのカラーは、街に馴染み、どんな服にも似合うものを選んでいるそう
- 東京タワーがモチーフのロゴマーク
「TOKYOBIKE TOKYO」店内。時にはライブなどの開催も。
TOKYOBIKE TOKYO
住所:東京都江東区三好3-7-2
TEL: 03-6458-8198
URL:https://tokyobike.com/tokyobike_tokyo/