引退後、父親から「おまえの人生が羨ましい」と言われて、サッカー選手の苦労を分かってないなと思ったんです。僅かなミスで信じられないような罵倒をされることもあったので。でも「それが人生の幅になるんだよ。おまえのその経験の幅が羨ましいんだ」って。オヤジ初めていいこと言ったなと(笑)。それ以来、苦しいときにも人生の幅が広がるぞって、楽しめるようになりました。
悦びと苦しみの振れ幅は人生の幅。
苦しいことがあるほど、いいぞ! って思う。
セカンドキャリアに苦戦するスポーツ選手が少なくないなか、独自の腸活ビジネスを展開してきた元Jリーガーの鈴木啓太さん。1000人以上のアスリートの便を採取し、そのデータを武器に慣れない経営に果敢に挑む姿は、清々しく示唆に富んでいる。
Text_YUKI KATORI.
Photographs_KAZUO ITO.
PROFILE
鈴木啓太(すずきけいた)
1981年に静岡県清水市に生まれ、幼少の頃からサッカーに親しむ。小学校で全国準優勝、中学校で全国制覇を成し遂げ、東海大翔洋高校へ進学。2000年に浦和レッズに加入し、16年間にわたって活躍。2006年には日本代表に選出され、オシムジャパンでは唯一全試合先発出場を果たす。2015年シーズンを最後に引退し、AuB(オーブ)株式会社を設立。腸内細菌の研究をベースにした腸ケア商品の開発・販売などを行っている。
サッカーと経営を通して
成し遂げたいこと
2017年7月17日、埼玉スタジアムに響く6万人の歓声。その中心には、浦和レッズひと筋16年のバンディエラ、鈴木啓太さんがいた。
「引退試合が終わって、スタンドを見たときに気が付きました。この人たちがいてくれたから、僕は選手でいられたんだなって。プロサッカー選手になるのは契約書にサインをしたときではなくて、ファンやサポーターに認められたときなんだなと。そもそもサッカー選手になろうと思ったきっかけは、幼稚園の頃に初めてゴールを決めたときに親がものすごく悦んでくれたからなんです。一番身近な人を悦ばせたい、それがいつしか6万人になっていました。人生の目的が幸せの追求だとしたら、僕の幸せは誰かを悦ばせること。サッカーはそのための手段だったんですね」
そんな鈴木さんが人を悦ばせる手段としてセカンドキャリアに選んだのが、経営だ。
「今振り返れば、経営なんて随分思い切ったなと自分でも思います。でも、不可能なことってないなと思ってるんです。子どもの頃は、『プロサッカー選手なんて無理』って言われてましたけど、なれましたし。人は自分の中に限界を決めてしまいがちですが、こうなりたいと思ったら、足りないものを埋めればいいだけ。それがとても面白いんです。しんどいことも楽しい。ドМですね(笑)。経験できることすべてに日々感謝です。ビジネスは学ぶことばかりで、設立から9年が経って自分への戒めも込めて思うのは、経営者の器でしか会社は大きくならないということ。ようやく今、経営者としてやるべきことを自覚した感じです。インサイドアウトで、もっとリーダーシップを発揮しなきゃと思っています」
アスリートのウンチで
人の健康をサポート!?
AuB社のミッションは、〝すべての人を、ベストコンディションに〟。その言葉に込めた想いとは?
「一人でも多くの方にご機嫌になってほしいんです。高齢化社会の今、大人が不機嫌だと子どもたちが萎縮してしまいますから。不機嫌にならないためには、まず健康であること。そんな想いもあって、腸内細菌の研究を始めたんです」
現役時代の経験から、腸のコンディションが結果を左右することに気付いていたという鈴木さん。そこには普通の人のそれとは明らかに異なる傾向があったという。
「アスリートの腸内細菌叢はとても多様性に富んでいて、特に持久力や筋肉の修復にかかわる短鎖脂肪酸をつくる酪酸菌が多いことが分かったんです。この研究結果を活かして、さまざまなプロダクトを開発しています。健常者と疾患のある人の腸内環境を比較して、マイナスをゼロにするような研究はこれまでもあったのですが、健常者とアスリートの腸内細菌を比較するというものはありませんでした。アスリートのデータはきっと健康管理に役立つはずです。私たちの会社で、腸から皆さんの健康をサポートしていきます。〝全ての病は腸から〟と、ヒポクラテスも言っていますしね」
鈴木さんが手がける、AuBの主力商品
- 4年の歳月をかけて開発された30種類以上の菌を摂れるサプリ「aub BASE」。
- 摂取した菌を効率よく育てるマルチファイバーミックス「aub GROW」。
自身の腸の状態を確認出来る「BENTRE」。
AuB(オーブ)株式会社
電話番号:0120-352-255(aub store お客様窓口)