TOP MAGAZINE特集 先人たちの叡智と技の結晶「道」に学ぶ日本の伝統と文化

先人たちの叡智と技の結晶「道」に学ぶ日本の伝統と文化

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茶道や華道などの芸道に、剣道や柔道といった武道など。日本には古くから継承されてきたいくつもの「道(どう)」がある。「道」には、「同じことを繰り返し学ぶことにより得られる最高の状態」という意味があるそうだ。
一つの道を極めるために先人たちが磨き上げてきた「道」の世界には、現在の私たちが学ぶべき、実に多くの魅力が詰まっているのだ。

時間と叡智に磨かれた、「道」という極みの体験

仕事や子育てが落ちつき、新たに習い事や趣味を始めたいと考えている方は多いだろう。もしあなたがそんな自分時間の活用を考えている方なら、「道」の習い事を体験してみるのはいかがだろうか。その奥深き「極みの世界」で、洗練された大人の時間をぜひ楽しんでほしい。

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しなやかな強さと洗練の美しさその奥深い学びの世界

 習い事には音楽やスポーツなど様々あるが、日本の伝統芸能や芸術、武士の修練などに由来した「道」の習い事は、技術や知識の向上、気分転換といった日常の変化に加え、先人たちが人生を捧げ磨き上げたその究極の世界観、空気感を、稽古を通して学び味わえる点が何よりの魅力だろう。自身と対話をし続けることで精神性を磨き、礼儀作法や技を学ぶことで姿勢を正し心身の健全さを身に付ける。そしてなにより「道」を突き詰めようとする姿そのものが、凛として格好が良いのだ。
「道」の学びとは、日本文化伝統の叡智と技の結晶であり、決して一瞬で手に入るものではない。しかしだからこそ、学び甲斐があり面白いのである。

人生やビジネスにも通じる「道」の教えを学ぶ

 「道」には、人生、そしてビジネスにも役立つ教えが凝縮されている。文化や伝統などの教養を深められるのはもちろんだが、稽古を通して、無駄な力や動きを省く究極の効率、洗練さを学び、人との比較ではなく自分と向き合い己を磨くこと、今この瞬間に集中すること、他者への思いやりや慈悲の心を学ぶことなど。そこには、ともすると私たちがつい忘れがちな人間関係の在り方や課題への向き合い方など、大人として、ビジネスマンとして身に付けておくべき教えが詰まっているのだ。まさに心身ともに磨かれる「道」は、理想の自分に近づき心豊かになれる習い事なのである。それでは、普段あまり覗くことが出来ない三つの「道」の習い事についてご紹介していこう。

感性を高め教養も深まる動きのある瞑想
【香道】
〈香道から学ぶこと〉
  • ・表現を形にするクリエイティブ力
  • ・自然や空間と一体化する瞑想体験
  • ・洗練された所作と日本文化の教養
静を制し香に向き合う日本三大芸道の一つ

 都会の喧騒や仕事の緊張感から離れ、頭をクリアにし心を穏やかにする癒しの習い事。香りを賞翫する「香道」だ。貴重な天然木由来の香木を使用することもあり、茶道と比べると馴染みの薄い香道だが、その歴史は室町時代からと古く、茶道、華道と並び日本三大芸道の一つでもある。東南アジアなどの限られた地域で産する天然香木を使用し、熱の力で立ち上る幽玄な香りを「聞く」ことを追求し楽しむ。約1時間弱の間、静かに香りと向き合う「聞香(もんこう)」を行うことで、嗅覚が研ぎ澄まされ集中力が磨かれる。
香道では礼儀作法や立ち振る舞いを重んじており、究極に効率的で、一つとして無駄のない洗練された所作を学んでいく。この所作や五感を磨くために、お稽古では香りを聞いて香木の種類を当てる「組香(くみこう)」を繰り返し行うのだが、この聞き分けがゲームのように楽しめる点が他の芸道には無い香道ならではの特徴といえる。また、組香では聞いた香りを説明するための表現力が養われるが、他にも聞いた香りを筆で記す作業が書道に通じたり、和歌などに合う香木の選定を行うことが古典文学にも通じるなど、他分野へと知識が広がり教養も深められる。香道は精神性・文学性を高め、洗練された深みある人間の成長へと繋がる習い事といえるだろう。

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〈お教室紹介〉香道はここで学べる

麻布香雅堂
住所:港区麻布十番3-3-5
TEL:03-3452-0351
URL:http://www.kogado.co.jp

薬師寺 東京別院
住所:品川区東五反田5-15-17
URL:https://yakushiji.or.jp/tokyo/otoiawase/
URL:https://yakushiji.or.jp/tokyo/

香道についてお話を伺ったのは…

麻布香雅堂 代表取締役社長
山田 悠介さん

香道諸流派家元・宗家出入りの香木・香道具専門店として1983年に創業した麻布香雅堂の代表取締役社長。香道志野流。香道のお稽古を定期的に行うほか、香道具・香木などの販売を行う。お香の定期便「OKOLIFE」など家でお香を楽しめる商品も取り扱う。

相手の力を利用し技を掛けて力を制する
【合気道】
〈合気道から学ぶこと〉
  • ・どんな相手とでも調和する対応力
  • ・己を律する心の強さ
  • ・相手との違いを受け入れる精神力

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どんな相手とも調和し心身を磨き高め合う武道

 相手の力を導くことで相手の体勢を崩し、そこに自分の力を働かせて技をかける「合気道」。「争わない武道」ともいわれる合気道は、試合で相手との勝敗を決めることを行わず、稽古を通して心身を鍛錬し互いに高め合うことを目的としている。
技をかける側、技をかけられる側を交互で行う稽古を重ね、合理的な動きにより技がかかる感覚を体に染み込ませていく。相手と争う気持ちで力任せに技をかけたならば、身構えた相手の力と自分の力が衝突してしまい、うまく技をかけられなくなってしまう。相手と調和し一体になる気持ちを持つことこそが、真の強さへと繋がるのだ。さらに、性別・年齢・体格・体力、技の習熟度、稽古年数が異なる様々な相手と稽古を行い、どんな相手に対しても尊重し、調和する気持ちを養っていく。そうすることで、利己的な我執や我欲を律することができるようになる。
己を律して無駄な争いをせず、人と対立せず、対応力に優れバランスのとれた人間性を養うことができる合気道。無理なく体力を向上させることができ、日常生活で役立つ武道といえるだろう。

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〈お教室紹介〉合気道はここで学べる

公益財団法人 合気会 合気道本部道場
住所:新宿区若松町17-18
TEL:03-3203-9236
URL:http://www.aikikai.or.jp

公益財団法人 合気会公認 青山会
住所:港区赤坂6-6-14 氷川武道場
メールアドレス: seizankai.jimukyoku@gmail.com
URL:http://aikidoseizankai.com/

合気道についてお話を伺ったのは…

公益財団法人
合気会

公益財団法人 合気会は、財団設立80年の歴史を持ち、合気道の継承・普及振興及び、心身の錬成と体育の発展に寄与することを目的とする団体。合気会が直接運営する本部道場は90年の歴史があり、世界約140の国と地域への普及活動と、全国約2,400ヵ所の道場団体の交流と振興の基点となっている。

武士のように刀を制し一瞬を極める武道
【居合道】
〈居合道から学ぶこと〉
  • ・集中力
  • ・瞬発力
  • ・プレッシャーに 負けない精神力

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鋭い集中力と瞬発力で勝負を決める

 武士がかつて修めた華麗な刀さばきを学ぶ「居合道」。敵に襲われた際に刀で防御する術を磨き上げた居合道は、日本刀で稽古を行う数少ない武道だ。刀を鞘の内から制し、素早く刀を抜き一瞬で勝負を決める。究極の一撃を目指すこの武道では、技や所作はもちろんのこと、ひと時の勝負に賭ける鋭い集中力、チャンスを掴むための瞬発力、恐怖感すら制する強い精神力が必要となる。さらに戦う相手は他人ではなく自分として鍛錬を積み、相手を思いやる慈愛の心、正しい道、礼儀、智徳、誠実さを身に付けることでの真の強さを追求する。これら居合道で学ぶ技や考え方は、日常やビジネスの場でも活かすことができるし、どんな相手や状況にも動じない強い心が鍛えられるはずだ。仮想敵を斬る「形」だけを習う流派から、「本当に斬れる」居合の習得を目指して、実際に藁を斬る「試し切り」や、相手を立てて木刀などで形を実践する「組太刀」などを行う無外流などがある。日本刀を扱うからこそか、他の武道以上に礼が重んじられる居合道では、技と同様に強い精神力も養われる。日常に加わるその緊張感こそが、居合道の魅力ともいえるだろう。

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〈お教室紹介〉居合道はここで学べる

国際居合道連盟鵬玉会 浅草蔵前 総本部道場
住所:台東区蔵前4-20-10 SCOP21ビル3F

国際居合道連盟鵬玉会 中央区 八丁堀道場
住所:中央区新川2-13-4 明正小学校3F体育館

〈共通〉
TEL:080-4365-6512
URL:https://mugai.org/

居合道についてお話を伺ったのは…

国際居合道連盟鵬玉会 会長
武田 鵬玉さん

無外流居合の教士七段免許を持つ、国際居合道連盟鵬玉会の会長。座ったままの抜き打ち横一文字で斬る「座技置き藁横一文字」を達成した稀有な存在だ。同連盟主催の全日本大会を毎年開催。総本部である浅草蔵前ほか、日本各地に道場を持つ。英国政府公認、スコットランドからの勲章も受領。

※2022年2月1日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

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