日本茶の深い味わいを凝縮、京都の老舗茶商ならではの和スイーツ
Texts_SAYAKA NAGASHIMA. Photographs_HIDE NOGATA.
暑い季節に恋しくなる、目にも涼やかなゼリー。ほどよく冷えた一口が喉をつるりと通り抜ければ、身体の暑さが内側から鎮まっていく心地よさが広がる。ゼリーといえばフルーツを使ったものが一般的だが、今回紹介したいのが、京都の老舗茶商「中村藤𠮷本店」が生み出した、日本茶を使った「生茶ゼリイ」だ。
1854年に京都・宇治で創業した中村藤𠮷本店は、抹茶、煎茶、玉露など、それぞれのお茶の「らしさ」を追い求めることを信条に、170年にわたって高品質な日本茶を提供し続けている。伝統を守りつつ新たな取り組みにも積極的で、従前は一般的ではなかった煎茶や玉露など7種類の茶葉をブレンドした「中村茶」は、今や同店の看板商品だ。2001年には明治・大正時代の製茶工場を、銘茶や甘味などが味わえる「喫茶室」に改装し、多くの観光客から人気を博している。また、2023年11月に開業した麻布台ヒルズに、テイクアウト主体の「中村藤𠮷麻布台店」を出店したことも話題となった。
そんな中村藤𠮷本店が、茶葉の魅力を余すところなく閉じ込めたスイーツとして開発したのが「生茶ゼリイ」だ。茶葉本来の芳醇な味わいとほろ苦さを味わえる抹茶と、香ばしくすっきりとした味わいのほうじ茶の2種類を展開している。どちらも口に入れた瞬間にお茶の繊細な香りと濃厚な旨味が押し寄せ、まるでお茶を飲んでいるかのような味わいに驚かされる。ゼリーは味だけでなく、ぷるぷるとした食感や喉越しにもこだわっており、もっちりとした白玉とほどよい甘さの小倉餡とのバランスも絶妙だ。
見た目からも和の佇まいを感じられるこのスイーツは、自分で楽しむのはもちろん、大切な人への手土産としてもおすすめ。大人の夏の愉しみとして、今年の夏は一味違った「ゼリイ」を選んでみてはいかがだろうか。