東山無垢｜中目黒

「無垢」―穢れがなく、潔白で純真なこと―。この言葉を店名に掲げるのが、今年7月に中目黒にオープンした日本料理店「東山無垢」だ。店主の三島立己さんは店名に込めた思いをこう話す。

「もともと何かを創り出すことが好きで、25歳で料理の道を志してからは、和食一筋に歩んできました。そして経験を積むうちに、素材にあれこれ手を加えた料理に疑問を覚えるようになったんです。足し算の料理は、どうしても食べ疲れてしまう。そうではなく、もっと素材にシンプルにアプローチしたい。素材の本質を大切にした引き算の料理を目指すようになりました」

三島さんは、かつてエンジニアとして機械メーカーで機械設計に携わっていた。そのためか、料理へのアプローチも理系的だ。

「人が美味しさを感じるためには、目からの情報に加えて、『香り』『味』『食感』が重要だと考えています。そのため、自分の料理にはこれら3つの要素が含まれているかを意識しています」

素材の味にこだわる三島さんは、生産者や作り手、仲買人とのつながりを大切にしている。

「気になった生産者さんの元へはできる限り足を運び、納得したものだけを仕入れています。豊洲の仲買人さんとも、こまめにコミュニケーションをとるよう心掛けていますね」

店では旬の食材を使った全11品のおまかせコースを提供。その顔ぶれは月ごとに変化する。

「甘い味付けの後にはさっぱりしたものを挟むなど、お客様側の立場で流れを組み立てています。どれかひとつ突出したものを作るのではなく、全体を通して美味しいと思って頂けるようバランスを重視しています」

飲み物は全国各地から厳選した日本酒のほか、ワイン、国産のクラフトビールなどを揃える。ソムリエ資格も有している三島さんに、料理に合わせたワインを選んでもらうのも一興だ。日常の喧騒から離れた静謐な空間で、三島さんが創り出す「無垢な美味しさ」を堪能したい。