Ristorante Cascina Canamilla｜中目黒

異なる国の食材や調理法を融合させる「フュージョン料理」。今、イタリアンと南米料理という新たな組み合わせに挑んでいるシェフがいる。東京・中目黒の「Ristorante Cascina Canamilla」の岡野健介さんだ。

かつて岡野さんは伊トリノの星付きリストランテ「ラ・バリック」でセコンドシェフを務めた実力者だ。その腕を見込まれ「Ristorante Cascina Canamilla」の前オーナーでイタリア食文化研究家の長本和子さんから招かれシェフに就任。オーナーシェフとして店を引き継いだ。

「トラットリアではなくリストランテをやりたいという思いがあったので、大きな店を持てるのは魅力的でした。しかし独自のコンセプトと呼べるものは、当時はありませんでしたね」

しかし、その考えにもコロナ禍で変化が生じた。

「元々、人と同じことをしたくない性分ではあるのですが、イタリアンという枠の中で重箱の隅をつつくような差別化の方向性に限界を感じるようになりました。その頃ちょうどコロナ禍で立ち止まる時間が多く、改めてコンセプトをゼロから考える必要があると思ったんです」

そこで注目したのが、幼い頃に親しんだ「南米料理」だった。

「今は情報の拡散スピードが早く、新しい技術や美味しい食材の発見も差別化要因にはなり得ません。しかしベネズエラで生まれ幼少期を過ごした僕が、イタリア料理と南米料理を融合させることにはストーリーがあり、誰しもが真似できるものではありません。南米の食材や調理法を用いることで新たな料理を生み出す。これにより、純粋に美味しさの追求という原点に立ち返ることができました」

岡野さんの料理の数々は、季節ごとのお任せコースで存分に堪能できる。来年にはコンセプトに合わせて店舗の改名も予定しているといい、今後の展開に期待は増すばかりだ。