使うほどに味わいが増す、美と用を備えた大人の弁当箱
Texts_SAYAKA NAGASHIMA.
photographs_HIDE NOGATA.
風土と職人の技が生きる工芸品の数々。その中には鑑賞用ではなく、日々の暮らしで使うことで魅力を深めていく道具も少なくない。そうした〝日常使いできる工芸品〞である曲げわっぱを、現代の生活に寄り添う弁当箱として丁寧に仕立てたのが、柴田慶信商店の「白木小判弁当箱」だ。
秋田県大館市で受け継がれてきた曲げわっぱは、薄く削った秋田杉を曲げ、桜皮で綴じる簡潔な構造の中に職人の熟練技が凝縮された工芸だ。その歴史は古く、木こりによる器作りに始まったとも言われ、江戸時代には武士の内職として発展してきた。板を湯で煮て柔らかくし、丸太に添わせて曲線を成形する「曲げ加工」は高度な技を要し、国の伝統的工芸品にも指定されている。
数ある工房の中でも、柴田慶信商店はその技と姿勢によって特に高く評価されてきた。初代・柴田慶信氏は伝統工芸士として多くの受章歴をもち、瑞宝単光章(ずいほうたんこうしょう)を授与された名匠だ。その精神は二代目・柴田昌正氏へと受け継がれ、昌正氏は大館曲げわっぱ協同組合の理事長として産地の発展にも尽力している。同店の製品は国内外で高く評価され、その魅力を現代に伝える役割も担う。
白木小判弁当箱は、杉の木目が際立つ同店を代表する製品だ。塗膜を施さない「白木仕上げ」を貫くのは、木地の質感と杉材の吸湿性・通気性を最大限に活かすため。これにより、ご飯の余分な水分が自然に調えられ、冷めてもふっくらとした仕上がりを保つ。サイズは大・中・小の3種で、使うほどに色艶が深まる。日常に寄り添い育つ工芸品として、長く使い続けたくなる一品だ。
仕切り板は固定ではなく可動式。内容によって位置を調整でき、取り外しも可能。
側面を留める「樺綴じ(かばとじ)」が象徴的。桜皮の艶が白木に映え、曲げわっぱならではの表情を生む。