ペット捜しの無料AIチャットボット公開は一つの目標でした。先日ペット大国ドイツのテレビ取材を受けた際に色々お話を聞いて、このチャットボットが世界でも通用する自信が持てました。次の目標は多言語化です。まずは飼い主の皆さん、猫には首輪、犬にはGPSを付けると安心です。大切なペットをいつまでも可愛がってください。
「ペットが可愛い」は万国共通。
ペット捜しのノウハウを世界に伝えていきたいですね。
現代社会においてペットは家族同然の存在だ。その大切なペットがある日突然いなくなってしまったら……。
そんな非常事態に直面した時に頼りになるのが、迷子ペット捜しの第一人者、藤原博史さん。
発見率8割※を誇るペット捜しの極意とは?
※猫の場合
Text_YUKI KATORI.
Photographs_MASAKI KOZAKAI.
PROFILE

藤原 博史(ふじわら ひろし)
1969年、兵庫県出身。幼少期から常に昆虫や動物たちと親しみ、その存在に魅了され畏敬の念を抱く。1997年に迷子になった動物を捜すペットレスキューを設立。電話でのアドバイスを含めると捜索件数は優に1万件を超える。2020年にNHK BSプレミアムで放送されたドキュメンタリードラマ『 猫探偵の事件簿』のモデル。著書に『 210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ―ペット探偵の奮闘記―』(新潮新書)、『 ペット探偵は見た!』(扶桑社BOOKS)がある。
運命に導かれるように
ペットレスキューの道へ
前世があるとしたら、藤原さんは野山を駆け巡る野生動物だったに違いない。高い確率でペットを捜し出す閃きや勘は、幼少期の頃には既に自然と身についていたようだ。
「両親の話では、まるで狩猟本能かのように物心つく前から虫や動物を追い掛け回していたそうです。冬眠中のトカゲを見つけた時には、『僕はトカゲ』と言いながら布団にくるまって寝たりもしていたそうです」
不良少年だったと語る中学生時代には、約1年間の家出生活でさらに動物への理解が深まったという。
「野良犬とか野良猫は安全で快適な場所を見つけるのが凄く上手い。寒い冬の時期はそういう場所で犬や猫と抱きあって寝たり、お弁当を分けあって食べたりしました。それがすごく楽しかった。だから何度連れ戻されても家出を繰り返して、最後は親公認の家出になっていました」
そして、人生のターニングポイントが20代後半に訪れたという。
「当時は沖縄で漁師をしていたのですが、ある日ペット探偵になって活躍する夢を見たんです。そんな仕事があることすら知らなかったのに凄くリアルな夢で、雷に打たれたような衝撃を受けました。これこそ自分がやるべき仕事だと思い、そこからこの仕事にまっしぐらです」
野良精神とIT技術で
迷子のペットを見つけ出す
開業から約30年。携わったペット捜しの相談は1万件以上になる。藤原さんは培ってきたノウハウを惜しみなく注ぎ、ペット捜しのAIチャットボットを無料で公開した。
「約6000件のペット捜しの実データをベースにした仕組みで、ペットの性格や失踪してからの時間などを細かく入力していくと、500の捜索パターンから個々のペットに合った捜し方が導き出される仕組みです」
このチャットボットで実際にペットが見つかったという声が数多く寄せられているそうで、それでは競合などにもノウハウが流出してしまうのではないだろうか。
「見つかるペットが増えるならそれでいいんです。役に立つために始めた仕事なので、そのノウハウを隠すのは違うかなと。今後は多言語化して、世界中の飼い主さんにも使ってもらえるようにするつもりです」
そんな誠実な姿勢もあってか、藤原さんの元には企業からのペット関連商品の開発相談などが続々と寄せられているという。
「猫の室内飼いを推奨しているのは日本を含め数ヶ国くらいで、しかも猫が一生を室内で快適に過ごすための工夫が論じられていません。もともと群れを作らず単独で生きるマイペースな生き物ですし、僕自身が生粋の野良体質なので、僕が猫なら自由を求めて脱走したくなると思うんです。そういったペットの気持ちに寄り添ったアドバイスが役立つのであればと思い、お受けしています。ペット捜しは、誰かの役に立つという点で大きなやりがいや喜びになります。一方で、狩猟本能を満たすという点で僕個人の喜びにもなっている気がします。だから僕にとってこの仕事は一石二鳥なんです(笑)」
藤原さんが使う超高輝度懐中電灯、双眼鏡、内視鏡スコープ。ペット捜しの必須アイテムだ。
中国語版の発行が決定した藤原さんの著書2冊。
講演依頼や企業コラボ案件が増えるなかで、商品開発に携わったという愛犬用ごはん&サプリ「HAPIHARU」。