〝走り〞を極めるための電動化、ポルシェ911の新たな境地
Texts_SAYAKA NAGASHIMA.
スポーツカーの歴史に燦然と名を刻み、60年以上にわたり王道を走り続けてきたポルシェ911。その系譜に2024年、「ハイブリッド」モデルが登場した。「911 Carrera GTS」（992後期型）だ。
「911がハイブリッドになるなんて」と肩を落とすのは早計だ。心臓部には新開発の3.6リッター水平対向6気筒エンジンを搭載し、これにポルシェ初となる電動ターボチャージャーとクランクシャフト直結型の電動モーターを組み合わせた独自の「T-ハイブリッド」を採用した。アクセル操作に即応して電動モーターがタービンを回転させることで、これまで避けられなかったターボラグを解消。さらに発電機などの補機類やエアコンを電動化することでエンジンの負担を軽減し、省スペース化と軽量化も実現した。車両重量の増加は先代比わずか50kgに抑えられ、レスポンスと加速性能の向上につながっている。一般的なハイブリッド車が燃費改善を主眼とするのに対し、純粋に走りの質を高めるための電動化といえる。
最高出力541PS、最大トルク610Nmを発揮するこのシステムは、わずか3秒で100km／hに到達、最高速度312km／hを誇る。電動モーターの瞬発力と水平対向エンジン特有の伸びやかなフィールが融合し、911ならではのサウンドとともにドライバーを魅了する。「最新のポルシェが最良のポルシェ」という、時代を超えて語り継がれてきた言葉を、改めて証明する仕上がりとなった。
市場の懸念を圧倒的な走りで覆した911 Carrera GTS。伝統と革新を高次元で融合し、熟練ドライバーに新たな歓びと未来をもたらす一台だ。
伝統のキー式始動も姿を変え、現代的なスタートボタンへと進化。
メーターもフルデジタル化。12.6インチの曲面ディスプレイに、最大7種類の表示をカスタマイズ可能。
