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神と仏が共存する文化に 日本人の心をみる

ISSUED | 2018.04

 

全国約4万社ある八幡社の総本宮である宇佐神宮。本殿は国宝で、御祭神は八幡大神(応神天皇)、比売大神ひめおおかみ神功皇后じんぐうこうごうをお祀りしている。

現在日本には、81,000社の神社と77,000寺のお寺が存在する。 その数はもちろん、歴史からみても、神道と仏教は私たち日本人に最もなじみ深い宗教といえるだろう。その神道と仏教が共存した歴史を知ることで、私たち日本人の思想の原点を見ることが出来る。

神と仏が共存する文化に日本人の心をみる

大分県国東半島宇佐地域六郷満山 開山1300年

[1]八幡奈多宮 大分県杵築市にあるこの神社は宇佐神宮の別宮とされ、かつては宇佐神宮に新たな御神体が収められると、下宮に収められたのち、この八幡奈多宮に収められていたという。現在は国の重要文化財に指定される三神像を収蔵している。
[2]全盛期には六郷満山最大勢力といわれた、国東市の旧千燈寺跡。仁聞菩薩にんもんぼさつ入滅の地とされ、苔むした仁王像に悠久の時が感じられる隠れた名所だ。
[3]八幡奈多宮収蔵の重要文化財 三神像。手前が二躯の木造女神座像、奥が木造僧形八幡神座像。
[4]国東市の文殊仙寺。「日本三文殊のひとつ」として古くから親しまれ、飲むと知恵が授かるといわれる「文殊の水」が湧き、合格祈願で訪れる人も多いという。

日本人の柔軟性が神道と仏教を融合させた歴史

古くから私たちの生活に根付き、心のよりどころとなっている神社とお寺。初詣やお宮参り、冠婚葬祭などのほか、その静けさや凛とした心落ち着く空気感で、癒しのスポットとしても人々を引き付け続けている。そんな日本文化の源流にもつながる神社とお寺は、ご承知の通り神道と仏教という、それぞれ異なる宗教であるが、私たちは神と仏の区別をそれほど意識することなく信仰の対象として生活に取り入れ、融和させながら過ごしてきた。これはいわゆる「神仏習合」といわれる信仰だが、このように異なる二つの宗教文化を、1000年以上にわたり共存させている国は世界でも類をみない。もちろん、1868年に発令された「神仏分離令」以降は、神道と仏教は役割の異なるものとして、神社とお寺は別々に運営がされているが、神社に仏像があったり、お寺に鳥居があったりと、「神仏習合」の名残は今も各地で目にすることが出来る。

 神道とは、山川草木など自然の生命にも霊的な存在が宿る、いわゆる自然神への信仰を起源とする日本独自の宗教だ。日本人はあらゆるものには生命が宿るという、八百万やおよろずの神という考え方を古くから持ち、自然の恵みに感謝する収穫祭や豊作祈願などの祭事を行ってきた。その祭事の祭壇として用意されたものが神社の起源といわれ、当時は今のような常設の建造物はなかったそうだ。しかし神には実体がないので、より身近に神を祀るために、神が降臨したものとして鏡や剣などを御神体として拝むようになる。その後神を祀る常設の場として現在の形の神社があらわれ、時代とともに皇族など実在の人物や伝説上の人物を祀る(祖霊崇拝)神社なども登場していく。その最高神として現在崇められているのが、ご存知天照大神あまてらすおおみかみだ。

 一方の仏教は、2500年ほど前に北インドで釈迦(ブッダ)が創始し、中国を経て6世紀ごろに日本に伝来。教祖である釈迦像などをご本尊として、聖典として大蔵経(お経)を唱え、厳しい修行を行うことで悟りを開き来世で救われるという思想を持つ宗教だ。教祖も経典も無く、拝むことで現世での救いを求める神道とは、その由来も思想も大きく異なる。仏教伝来当初は、古来より崇められてきた神道に対して、新たな仏教を受け入れるかで政治的な対立もあったが、もともと明確な戒律や教義を持たない柔軟性のある神道と、体形的な考え方を持つ仏教は、それぞれの特徴をいかしながら、一体のものとして考えられるようになり、仏が神という仮の姿で現れる=権現という考え方なども生まれ、「神仏習合」という、独自の宗教観に結びついていく。この「神仏習合」の日本発祥の地とされているのが、大分県国く にさき東半島といわれている。

 外国との交易の窓口であった国東くにさき半島では、九州でいち早く仏教が浸透し、半島のほぼ中央に位置する両子ふたご 山から海岸に向かい続く谷、来縄くなわ田染たしぶ伊美いみ 国東くにさき武蔵むさし安岐あきという厳しい地形を持つ6つの郷(六郷)が、山岳信仰の修行実践の場とされていった。さらに全国に4万を数えるとされる八幡社の総本山、宇佐神宮の信仰が加わり、奈良から平安時代にかけて、神仏習合による独自の山岳宗教文化がこの地で形成されていったのだ。言い伝えでは八幡神の化身である仁聞菩薩に んもんぼさつがこの地で70年にもおよぶ修業を行い、28 の寺院と7万体近い仏像をつくったとされ、これが六郷満山の始まりといわれる。ちなみに、「満山」とは寺院群の総称をさした仏教用語だ。そして今年、この六郷満山は開山1300年を迎え、神社や寺院をはじめとした、各地の遺構や伝統文化などを改めて見て感じることができる、さまざまな企画やイベントが行われている。

[1]両子寺の石段に立つ、国東半島最大級の石像の仁王像。
[2]豊後高田市の熊野磨崖仏。6.7mの大日如来像と、8mの不動明王は、そのスケールから当時の人々の想いを感じる。
[3]開山から1300年以上受け継がれている文殊仙寺の護摩祈祷。毎月25日に御本尊文殊菩薩の縁日に行われている。
[4]六郷満山峯入行みねいりぎょう。国東半島中央の両子ふたご山を中心に、数々の修行の場を結ぶ「峯道」が広がり、この峯道を辿る修行「峯入行」が、10年に一度行われている。

[1]豊後高田市 天念寺の修正鬼会。災いを払い福をもたらす「鬼さま」が、燃え盛る松明を手に堂内を暴れ踊る。拾った者は縁起が良いとされる「鬼の目」大餅まきや、鬼が松明で参拝客の背中や肩をたたいて回る「加持」など、国東独自の火祭りとして、毎年旧暦1月7日に行われている。
[2]姫島村で行われる姫島盆踊りは、鎌倉時代の念仏踊りが起源といわれ、中でも伝統のキツネ踊りは子どもたちの独特なキツネの化粧とユーモラスなしぐさで人気だ。
[3]国東市のケベス祭り。起源も由来も不明とされる奇祭で、毎年10月14日に行われている。

六郷満山文化に感じる日本人の思想の原点

 1300年の歴史を誇り、現在も観光・巡礼の地としてにぎわう六郷満山。国宝に指定される宇佐神宮本殿や富貴寺ふきじ大堂をはじめ、各寺院の阿弥陀如来像や不動明王像は、地方に遺る仏像としては屈指の出来栄えといわれる。また、日本最古で最大級の磨崖仏「大日如来」や「不動明王」や、全国のおよそ8割が国東半島にあるといわれるほどの数が点在する石像や石塔などは、この地の地形がもたらした、六郷満山ならでは遺構だ。

多様な思想から生まれた神事・仏事も興味深いものが多く、中でも面白いのは「鬼」の存在だ。一般的に悪を表現するものとして使われる「鬼」が、この地では先祖の化身として「福をもたらす象徴」として祀られているのだ。六郷満山の多くの寺院にはさまざまな鬼面が奉納されており、年に一度、旧正月に実施される伝統行事「修正鬼会しゅじょうおにえ」では、僧侶が仏の化身である鬼に扮し、安穏を祈願する火祭りが行われる。神道と仏教を、1000年以上の長きにわたり融合し、独自の文化に昇華させた六郷満山。私たち日本人は、12月25日にクリスマスを祝い、大晦日にはお寺の除夜の鐘を聞き、元旦に神社に初詣に行くという、他の国では想像が出来ないほど柔軟に宗教を受け入れている。

それは私たち日本人が、八百万の神という独自の考え方を持ち、四季を楽しみ自然の恵みに感謝し、外来の思想を拒絶せず、どんな時にも「縁」を重視する民族だからこその多様性なのだと思う。「神仏習合」発祥の地 六郷満山には、そんな私たち日本人の民族性や、思想の原点を感じることができる。開山1300年の今、是非この地で、その空気を感じてほしい。

六郷満山開山1300年主要行事

寺院ライトアップ&特別イベント

  • 平成30年10月6日~12月8日
    六郷満山の主要寺院で行われるライトアップ。演奏会や神楽奉納などの特別イベントも行われる。寺院毎に内容・開催日時・拝観料がことなるので、事前に確認を。写真は九州最古の木造建築 国宝の富貴寺。

非公開文化財特別公開

  • 平成30年3月1日~6月10日・9月15日~12月9日(土・日・祝日のみ)
    独自の文化を育んだ六郷満山には、さまざまな秘仏や文化財が受け継がれている。普段みることのできない知られざる貴重な文化財を、開山1300年を記念し特別に公開。写真は国東市岩戸寺の鬼会面。

特別企画 鬼めぐり鬼朱印

  • 平成30年3月1日~6月10日・9月15日~12月9日(土・日・祝日のみ)
    国東半島の寺院には多くの鬼面が保管されている。この鬼面をめぐる開山1300年限定の鬼朱印を用意。13の寺院で授印予定で、鬼朱印 御志納料300円、鬼朱印 御朱印帳は授与寺院にて一部300円で販売。

※イベントの詳細は下記 国東半島宇佐地域・六郷満山開山1300年誘客キャンペーン実行委員会まで

国東半島宇佐地域・六郷満山開山1300年誘客キャンペーン実行委員会
国東市歴史体験学習館 弥生のムラ内
大分県国東市国東町安国寺1639-2
0978-72-5007
http://www.millennium-roman.jp/rokugou1300/

宇佐国東半島を巡る会
宇佐神宮六郷満山霊場 事務局
大分県国東市国東町小原2721-2
0978-73-0300
http://usarokugo.com/

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