AFFLUENT monthly features 特集記事

知的好奇心を呼び起こす本と向き合う宿

ISSUED | 2020.12

 


人混みへの外出にまだまだ不安が残る今、「こもり旅」があらためて注目されている。なかでも充実したライブラリーを持つ「ブックホテル」は、ちょっとしたブームになりつつある。宿にこもり時間を忘れて読書に没頭する。こんな時期だからこそ、そんな贅沢な旅に出かけてみてはいかがだろうか。
Books and Travel

本と過ごす、こもり旅のすすめ

いつもと違う日常が求められた今年。のびのびと過ごせず、窮屈な思いをした人も多いはず。
そんな生活でこわばった心を癒す旅に出かけよう。


心を穏やかに整える

コロナ渦でいろいろと生活が制限され、時には旅に出て心身ともにリフレッシュしたい!というのが、多くの方々の心情だろう。しかし、いざ旅に出ても、人混みでどうにも落ち着かない…。そんなニューノーマルな状況に対応できるのが、今回ご紹介するブックホテルだ。

 書籍を豊富に揃えたラウンジを備えるブックホテルは、本を読みながらゆったりと過ごせる空間設計が特徴だ。例えば、2018年に誕生した「箱根本箱」は、以前は日本出版販売の保養所として使われていた施設に、大型の本箱や温泉を導入し、ブックホテルとして新たな命を吹き込まれた宿だ。「本との出会い」「本のある暮らし」をテーマにした館内には、ラウンジ、客室、ショップなど、至る所に本を配置。ラインナップはすべて購入することが可能なので、気に入ったものがあれば持ち帰ることもできる。自宅のようにくつろげる空間ながら、窓の外には自然豊かな景色が広がる。そんな非日常的な読書環境を得られるのが特徴になっている。

 「ビブリオセラピー」という心理療法があるように、本には心を癒す力がある。読書することで、創造力が育まれ、視野が広がり、ときには仕事のヒントが見つかることも。そこに癒しの空間が加われば、この上なく快適な時間を過ごせるに違いない。


神奈川 | 箱根
箱根本箱 HakoneHonbako

日本出版販売とメディアクリエイションカンパニーの自遊人によってつくられた「箱根本箱」。箱根登山鉄道の中強羅駅から徒歩5分の場所に位置し、周囲を箱根の大自然が取り囲む。土地柄もちろん温泉にもこだわっており、大浴場では、乳白色の硫黄泉と無色透明の美肌の湯、2つの泉質が楽しめる。ロビーに一歩足を踏み入れると大きな本棚を構える吹き抜け空間が広がり、思う存分に読書タイムを満喫できる。また、「暮らしの彩り」をコンセプトにしたライフスタイルショップを併設するなど、本以外の楽しみも充実。過去には詩人の谷川俊太郎氏が滞在し、3篇の詩を書き上げた。本に囲まれた空間に魅了された客が度々訪れる名宿だ。

天井まである本棚には、「衣」「食」「住」「遊」「休」「知」をテーマにした書籍がスタンバイ。館内にある本は全部で12000冊。小説や写真集、絵本など、ジャンルは多岐にわたる。


  • 作家、写真家、料理人、女優など、各界の第一線で活躍する、本好きの著名人が選書した「あの人の本箱」を各所に設置。客室を中心に、館内のさまざまな場所に置かれている。

  • レストランでは、「オーガニック&クレンジング」をテーマにした自然派イタリアンが楽しめる。イタリア・ミラノの「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」に勤めていた佐々木祐治氏がフードディレクターを担当する。また、チェックインから夜まで、「夕暮れバー」を通年設置している。

  • 客室は7タイプ18室を用意。写真は、山側に窓がある「マウンテンビュー・ツイン」。

  • 全室に温泉露天風呂を設置。こちらの「グリーンビュー・リラックスツイン」では、緑に囲まれたテラスで、木のぬくもりを感じながら入浴できる。

  • ラウンジには、名だたるブランドの名作チェアが鎮座する。いつもと違う読書時間が楽しめる。

  • 大きな窓からは箱根の美しい山々を眺めることができる。ラウンジからつづく吹き抜けになった、開放感抜群の空間だ。

住所:神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-491
TEL:0460-83-8025
1泊21,806円~(2名1室1名、税・サービス料・入湯税込、夕・朝食付き)
全18室 IN:15:00 OUT:11:00


山形 | 庄内
ショウナイホテル スイデンテラス shonai hotel suiden terrasse

田んぼの上に浮かぶように建つ「スイデンテラス」は、いにしえより人々の信仰を集めてきた出羽三山と同エリアにある。紙管を使った建築で知られる坂 茂(ばんしげる)氏による木造2階建てで、空間いっぱいに広がる木のぬくもりが魅力だ。ライブラリーは、誰でも使える共用棟と、宿泊者限定の2種類を完備。「オトナもコドモ コドモもオトナ」をコンセプトに、ブックディレクターの幅 允孝氏(はばよしたか)がセレクトした計2000冊の書籍が並ぶ。棚はテーマごとに分類されているので、直感で気になった本を選ぶのもよいだろう。また、館内には源泉掛け流しの天然温泉を用意。田園風景を眺めながら、もしくは湯上りに、本を手に取りゆったりとした時間を過ごしたい。

共用棟ライブラリーには、「自然や生き物」「世界を見渡す」「日本と山形」など、10のテーマに分けられた約1000冊がズラリ。宿泊客であれば部屋に持ち込むこともできる。

  • 周囲では、春から夏は稲の成長、秋は稲穂、冬は雪化粧など、季節ごとに違う田園風景が楽しめる。

  • 1~2名用とコンパクトながら田園を一望できるテラス付きの部屋など、ファミリーから一人旅まで利用できるバリエーション豊かな客室を備える。

住所:山形県鶴岡市北京田字下鳥ノ巣23-1
TEL:0235-25-7424
1泊10,050円~(2名1室1名、税・サービス料・入湯税込、朝食付き)
全119室 IN:15:30 OUT:10:00


長野 | 蓼科
創業大正十五年 蓼科 親湯温泉 tateshina-shinyu-onsen

大正15年に創業した「蓼科 親湯温泉」。蓼科山の渓谷近くに位置し、その居心地のよさから、太宰治をはじめ多くの文豪たちが執筆活動のために訪れた。明治の時代に、地元の歌人であった篠原志都児が伊藤左千夫や平福百穂を蓼科に招待したことで名が広まり、次第に文人たちが集まるようになったという。その背景から、館内には彼らの作品が展示されている。また、みすず書房の社主が茅野市出身であることから「みすずLounge&Bar」、岩波文庫の創業者が諏訪市出身であることから「岩波文庫の回廊」と冠したスペースを設置。蔵書は3万冊を超える。数々の名作が生まれたこの地で、文豪たちに思いを馳せながら読書を楽しんでみてはいかがだろうか。

ラウンジに併設されたバーではウイスキーやワインが楽しめる。

  • すべての客室は2019年にリニューアルされたばかり。幸田文や高浜虚子など10人の文人をイメージした「蓼科倶楽部」、眺めのよい「清流亭」、和モダンな「深山亭」、リーズナブルな「山月亭」、奥廊下にある「すずらん亭」の5タイプに分かれている。

  • 今年12月には自家源泉を注いだ露天風呂付客室が完成する予定だ。

住所:長野県茅野市北山4035
TEL:0266-67-2020
1泊20,150円~(2名1室1名、税・サービス料・入湯税込、夕・朝食付き)
全52室 IN:14:00 OUT:10:00


広島 | 廿日市
庭園の宿 石亭 sekitei

1500坪の日本庭園を有するこの宿は、眼前に宮島と瀬戸が望め、背後に岩の美しい経小屋山がそびえる。庭の池と名松をぐるっと囲むように建てられた回遊式の配置となっており、どの客室からも庭へアクセスすることができる。池の傍の「床下サロン」と名付けられたライブラリーテラスでは、小説、美術、建築、料理、漫画など、支配人が愛する書籍の数々が所狭しと並ぶ。また、離れの客室の床下には、「吸吐(スーパー)文庫」と呼ばれる隠れ家風のライブラリーがあり、こちらの書籍が床下サロンへ引っ越してくることも。悠々と泳ぐ鯉を眺めながら過ごす非日常的な時間。ページをめくりながら、うたた寝してしまうような心地よさが待っている。

北欧や欧米の椅子が置かれた「床下サロン」。昼間はカフェとして、夜はバーとしても利用できる。

  • 離れの背後に佇む「四阿 安庵」には、完全プライベートな露天風呂を設置。また、大浴場には、ヒノキの内湯と開放感のある露天風呂があり、背後の山から引いた温泉が楽しめる。

  • 夕暮れ時には、広大な空と庭園が織りなす美しい景色に出会える。

住所:広島県廿日市市宮浜温泉3-5-27
TEL:0829-55-0601
1泊38,650円~(2名1室1名、税・サービス料・入湯税込、夕・朝食付き)
全12室 IN:15:20 OUT:10:20


北海道 | 登別
望楼NOGUCHI登別 bourou-noguchi noboribetsu

江戸時代から北海道の名湯として愛されている登別温泉。そんな歴史ある街に新しい風を吹かせているのが「望楼NOGUCHI登別」だ。和モダンをコンセプトにする同館は、全室展望風呂付きのスイートルームというラグジュアリーな雰囲気が魅力。1階には「のぐち文庫」と名付けられた書籍スペースがあり、2つのライブラリーを有する。片方はオーナーの野口秀夫氏が読んだ本、もうひとつには北海道を舞台としたミステリーが並ぶ。自由に鑑賞でき、バーやラウンジ、部屋へ持ち込むことも可能だ。そのほか、源泉かけ流しを堪能できる大浴場、男女で岩盤浴やエステが楽しめるリラクゼーションフロアなどを用意。プライベートな空間が大人の心を癒してくれる。

同館のデザインは、建築家の中山眞琴によるもの。また、彫刻家の五十嵐威暢氏がクリエイティブディレクターを務める。冬の季節は周囲の自然を雪が覆い、辺り一面白銀の世界が広がる。

深夜0時まで営業していることから名付けられた「バーZERO」。カクテルやワインが、大人の旅を一層盛り上げる。

  • コの字型の本棚を構える文庫。ゆったりと座れるソファが並ぶ。

  • 奥行きのある客室は、50~100㎡まで5タイプを用意。くつろげる空間を第一に考え、きらびやかな装飾や余計なものを排した。

住所:北海道登別市登別温泉町200番地1
TEL:0570-026570
1泊36,600円~(2名1室1名、税・サービス料・入湯税込、夕・朝食付き)
※13歳未満は宿泊不可 全40室 IN:14:00 OUT:12:00

SHARE THIS ARTICLE この記事をシェアする

RELATED ARTICLESこちらの記事もおすすめです