徹底した温度調整と研ぎ澄ました感覚から生み出される至高の一貫
「やまもと 代々木上原」の山本哲さんからバトンを 受け継いだのは阿佐ヶ谷にある「鮨 しゅん輔」の高岡俊輔さん。 名店の味と精神を継承する若き職人だ。
Words_TOMOMI KATO / Photographs_KIYOSHI TSUZUKI
Profile
高岡 俊輔
1988年生まれ、東京都出身。魚屋で働いていた19歳のとき、知人からの紹介で、当時荻窪にあった「鮨 なんば」に入店。その後、店は2011年に阿佐ヶ谷に移転。2018年に日比谷の新店に大将の難波英史氏が移り、以降、阿佐ヶ谷の店の板場を任されている。2020年5月からは店名を「鮨 しゅん輔」に。
予約の取れない名店として知られる「鮨 なんば」。阿佐ヶ谷に次いで、2年前には日比谷ミッドタウンに新店をオープンした。大将の難波英史氏が日比谷に移り、ここ阿佐ヶ谷で名店の暖簾を守ってきたのが高岡俊輔さんだ。今年5月からは、店名も自身の名を冠した「鮨しゅん輔」と一新した。
10代で鮨職人の道に足を踏み入れて以来、高岡さんは「なんば」一筋に研鑽を重ねてきた。師である難波氏から学んだことはと聞くと、「今自分にできること、鮨職人としての自分の全てです」と語る。その一つが、鮨種と舎利(シャリ)の温度のこだわりだ。鮨種ごとに適した温度は異なり、それに合わせて舎利の温度も変える。一貫ごとに指先の感覚を研ぎ澄まし、集中力を擁する作業だ。
「握るときはもちろん、種の仕込みや保管に至るまで『素材に手をかける』ことを心がけています。種の切りつけや大きさ、厚みに細心の注意を払うのは当然。その上で、お客様に多くの楽しみ方をご提供できるようなひと手間を大切にしています」たとえば夏が旬のエボダイは、湯引きしてから昆布締めにすることで、一味違った香り高さと弾力を生み出す。舎利は赤酢と白酢の2種類を用意し、鮨種によって使い分けもする。
「ただ鮨をお出しするだけではなく、どうすればお客様に満足していただけるかを常に考えています。ここでお過ごしいただく時間を心から楽しめる、とっておきの時間にしていただけたら嬉しいですね」
現在「鮨 しゅん輔」も予約は半年以上先まで埋まっているという。しかし、時間をかけて待つだけの価値ある一貫に、きっと出会えるはずだ。
RESTAURANT INFO 店舗情報
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鮨 しゅん輔 (すし しゅんすけ/阿佐ヶ谷)
住所: 杉並区阿佐谷南3-44-4 B1▶︎MAP 電話番号: 03-3391-3118 営業時間: 18:00~20:50/21:00~24:00(二部制) 定休日: 水曜日