TOP ライフスタイル 日本草木研究所 代表 古谷知華日本の山を宝の山にする

日本草木研究所 代表 古谷知華
日本の山を宝の山にする

自然環境の保護・再生を図る新たな事業で、今大手企業からも熱い注目を集めている古谷知華さん。その柔軟な発想と行動力、そして若さを武器に、停滞した日本の林業に新風を吹き込む挑戦の歩みと、背景にある原動力を聞いた。

Text_YUKI KATORI. Photographs_TOMOKI HIROKAWA.

PROFILE

古谷知華
古谷知華(ふるや ともか)

1992年生まれ。東京都出身。2015年東京大学工学部建築学科卒業。大手広告代理店を経て、調香やハーブ、スパイスに関する知識を活かし、クラフトコーラブランド「ともコーラ」を創業。2021年株式会社山伏を設立し、日本の山に自生するハーブ&スパイスのプラットフォーム「日本草木研究所」を立ち上げ、里山が抱える課題解決に挑んでいる。2023年にForbes Next 100および、Forbes CULTURE-PRENEURS 30に選出。リジェネラティブ・カンパニー・アワード2025など受賞歴も多数。

クラフトコーラから
始まったライフワーク

日本の里山再生のキーパーソンとして熱い視線が注がれている古谷知華さんは、クラフトコーラという新しい潮流を生み出した、生粋のアイデアマンである。

「コーラはもともと薬膳ドリンクなんです。だから、日本のスパイスやハーブを使ってコーラをつくったら面白いと思い、山に入って素材探しを始めました。そこで初めて、たくさんのハーブやスパイスが自生していることを知り、興味を持ちました。海外のものとは違う、繊細で奥行きのある香りや味わいがあって、それがすごく魅力的で……。こういう日本の山の豊かさ、〝美味しさ〞をもっと知ってほしいなと思い、自由研究みたいな形で『日本草木研究所』を立ち上げました」

日本の山は杉や檜といった建築資材になる木だけが、価値があるとされているが、古谷さんは里山に自生し、価値がないと捨てられ、見過ごされていた可食植物に価値を見出した。すると山主たちにも変化が起こり、それまで厄介者扱いしていた植物を急に「かわいい」と大事にし出したという笑い話もあるそうだ。

自社で、可食植物を使ったお酒やシロップなどを次々と商品化。しかし、山との関わりが深まる中で、里山の厳しい現実を目の当たりにする。

「林業は産業構造が旧態依然としていて、閉塞感を感じたんです。後継者もいないし、建材需要も減っている。加えて単価も安いため、従事者は林業の未来に希望を持ちにくい状況です。その一方で、皆さんすごく森や山を愛しています。そうした人たちのおかげで、日本の山は守られているのだから、林業従事者が自分の仕事や山に、誇りを持てるような仕組みや、産物をつくらなければと思うようになりました」

里山再生のカギは
流通量の拡大

現状を打開する切り札として古谷さんが掲げるのが、サプライチェーンの構築だ。

「本当に山を変えるためには、圧倒的な流通量で経済を動かす必要があります。ですから大きな企業に可食植物を原料として採用してもらうことを優先し事業を展開しています。一方で計画的な育苗・植林も同時に進め、企業の求める量に応えられる体制を整えています」

興味を持つ企業も増えている。最近では食材宅配のOisix(オイシックス)とコラボして、アオモジ(マーガオ)というスパイスを使った商品を開発・販売している。
「ゆくゆくは、日本の森の可食植物が、私たちの商品と意識されることなく、ごく当たり前に一般家庭の食卓に届くことを目指しています。だから道のりはまだまだ長いと思っています。でも、林業にとって10年はあっという間です。今、育てている木がようやく収穫できるかどうかというスパンです。森はゆっくりとしか変われないので、細く長く続けていくしかないと思っています。そのためにも一緒に仕事をしてくれる林業従事者やスタッフたち、関わる人みんなが幸せになるようなエコシステムをつくっていきたいです」

Memorable Words

森の数だけ文化があり、
山を通して日本を理解する。
目指すは現代の〝山伏〞です。

南北に長く標高差も大きい日本は、森の種類が豊かで、植生も多様です。森の数だけ独自の食文化や歴史が育まれています。例えば秋田のマタギは狩猟を「生(は)やす」と表現しますが、そこには自然や命への畏怖の念があります。森を通して日本を知るのはすごく面白い。山の知識が豊富な山伏にちなんで、「日本草木研究所」の運営会社の社名は「山伏」。現代の山伏を目指しています(笑)。

  • 素材そのものの味わいがダイレクトに感じられるように設計されている「日本草木研究所」のプロダクト。素材そのものの味わいがダイレクトに感じられるように設計されている「日本草木研究所」のプロダクト。
  • 「日本草木研究所」で扱っている「沖縄の生コショウの実」を使用した豚巻き。レシピはInstagram @nihonkusaki_labで公開中。「日本草木研究所」で扱っている「沖縄の生コショウの実」を使用した豚巻き。レシピはInstagram @nihonkusaki_labで公開中。

可食植物を探して山に入ることもしばしば。古谷さんにとって山は守るべきものの存在や仕事の意義を思い出させてくれる場所だ。
可食植物を探して山に入ることもしばしば。古谷さんにとって山は守るべきものの存在や仕事の意義を思い出させてくれる場所だ。

日本草木研究所
(外部サイト)

※2026年6月2日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

others