コロナ禍により、企業の存続が問われている今。従業員の生活を守りたい、コロナ禍が終わった後も事業を維持していきたいという意向から、「休業」や「出向」という形で従業員の解雇を回避したいと考えている経営者もいるだろう。このような状況下で厚生労働省は、2021年12月31日で終了を予定していた「雇用調整助成金の特例措置等」を、2022年3月まで延長することを発表した。2022年1月以降の概要が正式に公表されたので詳しく紹介していく。
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あらためて知りたい「雇用調整助成金」とは?
雇用調整助成金とは、コロナ禍により売り上げが減少した事業者に対して「事業活動の縮小」を余儀なくされても従業員の雇用を維持するために、休業手当などの一部を補助する制度。従業員を休ませたり出向した際に利用できるものだ。以前より雇用調整助成金を申請している経営者も多いだろうが、あらためて雇用調整助成金対象者をおさらいしておくと、これまで対象者に該当していた場合でも、売上の増加により対象外になるケースもあれば、売上の減少により逆に対象となるケースもある。雇用調整助成金が延長された今、再度見直しをするタイミングといえるだろう。
雇用調整助成金の対象者は?
雇用調整助成金の対象者は、まず前提として休業手当を支払っていること。そして新型コロナウイルス感染拡大の影響により事業売り上げが前年同月より5%以上減少している場合が対象となる。売り上げが30%以上減少している場合は、さらに給付額も加算される。雇用調整助成金の対象について、下記の条件を全て満たした事業主が対象となるので参考にしてほしい。
・労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている ・新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小している ・最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少している(※)
※比較対象とする月についても、柔軟な取り扱いとする特例措置があり。
雇用調整助成金の申請方法
雇用調整助成金はハローワークや事業所の所有地を管轄する都道府県労働局で申請が可能だ。申請方法は厚生労働省のホームページやコールセンターもあるので、申請を検討している方は関係箇所へ問い合わせをする。支給申請に必要な書類は下記の通り。
・様式特4号(雇用調整事業所の事業活動)
・様式特6号(支給要件確認申立書・役員等一覧)
・様式第9号または12号(休業・教育訓練実績一覧表)
・様式特8号または11号(助成額算定書)
・様式特7号または10号(支給申請書)
・休業協定書
・事業所の規模を確認する書類
・労働、休日の実績に関する書類
・休業手当、賃金の実績に関する書類
必要書類が複数枚になる場合は「txt」「csv」「PDF」といったファイルが入ったCDおよびDVDでも提出が可能だ。制度の見直しにより、支給申請様式の仕様が変更されていることもあるため、公式サイトから最新の申請様式をダウンロードすることをおすすめする。
雇用調整助成金の主な変更点とは?
今回、雇用調整助成金の延長により2022年1月から2022年3月までは段階的に金額が変更される。ただし、1月以降についてはあくまでも「予定」としての発表であり、国会の審議により変更の可能性もあることに注視したい。
2022年1月から2022年3月までは金額を変更して実施
2021年12月までは、助成額が1日あたり1万5,000円または1万3,500円。しかし、2022年1月から2022年3月は金額が変更となるので申請者は注意してほしい。2022年1月・2月は1万5,000円または1万1,000円へ減額される。3月は1万5,000円または9,000円となる。現状の発表では段階的に金額を変更していく予定である。
2022年4年1月からの算定方法
2022年(令和4年)1月からの算定方法は、2022年(令和3年)1月8日以降の解雇等の有無により判定基礎期間が変わる予定だ。そのため、新たに該当するかどうかを事前に確認する必要がある。雇用調整助成金に初めて申請する場合は、コールセンターやハローワークなどに問い合わせ、詳しい詳細を聞いた上で進めていくことをおすすめする。
雇用調整助成金を上手に利用しよう
新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業が先行きの見通しが立たない局面に立たされている今。雇用する側として、できる限り従業員を解雇しないという選択を考えている企業は多いだろう。この状況が落ち着いた頃には、インバウンド需要や日本経済そのものに復活の兆しも期待できることから、従業員の維持は企業の将来のために必要なことでもある。雇用調整助成金を上手に活用し、明るい未来のために従業員の雇用を維持することが大切だ。
参考:雇用調整助成金