伝統を受け継ぎ後世に残す 継ぎ人 匠

継ぎ人 その七

買い物をする心地良さを教えてくれる日本文化の伝道師

ISSUED | 2017.11

株式会社西山漆器 代表取締役 西山 喜一朗さん

  • 伝統ジャンル | 漆器専門店 継承歴 | 3代目
  • 一橋大学卒業後、三井物産に就職。大阪での商社マン生活を経て、30歳になる前に実家に戻る。現在西山漆器店3代目。

買い物をする心地良さを教えてくれる日本文化の伝道師

 「かっぱ橋道具街」。かつては古道具を扱う店が軒を連ねていた市場は、関東大震災、戦災と二度の災禍を受けた。しかし、かっぱ橋の商売人たちはここで商売をすることを諦めなかった。100年を経た今では、調理道具、食器、厨房設備、製菓用品ほか何でも揃う東京一の商店街、そして外国人の観光地としても人気だ。『西山漆器店』はここかっぱ橋で、大正5年、古道具屋として創業した。 「初代は私の祖父にあたりますが、まさに〝旦那"といった粋な人でした。子供の頃から祖父には3代目と呼ばれていたのもあって、いつかは後を継ぐということは考えていましたね」

 初代は日本に根付いた漆器にいち早く目をつけ、次第に漆器に特化した専門店に。かつては、職人も抱え、繁忙期はお得意さん以外の注文は断るほどだったが、木製でない合成漆器への移行もあり、量産化が可能となり、供給が間に合わない状態はなくなっていった。 「東京にも漆職人がたくさんいましたが、それだけでは食べていけなくなり、今残っている 東京の職人さんは、文化財、祭礼関係か、美術作品を志向する方がほとんどで、生活什器としての漆器を製作する人はほとんどいません。うちも本物の漆器だけではなくて、誰でも気軽に使えるものも扱うようになりました。漆器同様に、〝継ぐ"ということは、なくなって欲しくない文化です。最近では後継者がいなくて黒字なのに店を閉じるところも多いんですよ。IT化が進んで便利になりましたが、殊に物を売る店においては物が売れなくなっています。物を買うときは、売る人との信頼関係が大切。店に足を運んで、実物を見て、店の人との駆け引きを楽しみながら買い物をするのもいいものです。時間と心のゆとりを持って買い物を楽しんで欲しいですね」

 自分は商売人じゃないからねー、と語る西山さん。しかし、DNAには本物の商売人の心がしっかりと受け継がれていた。

  • 心に残る思い出を 西山 喜一朗

  • 匠の言葉

    「和うるしの心」
    最高の天然塗料である漆は、使えば使うほど丈夫になり艶を増してゆく。そのうちになくなってしまうかもしれない漆という日本独自の文化を守っていく。西山さんの決意が込められた一語だ。

店舗情報

西山漆器店

  • 住所 台東区西浅草3-24-3   ▶︎MAP
    電話番号 03-3841-8831
    営業時間 平日9:00~18:00
    土曜日9:00~17:00
    定休日:日・祝

    左:かっぱ橋で一番古いのれんの漆器専門店である西山漆器店。かっぱ橋には他にも幾つか漆器店があるが、漆器店のかんばんを掲げているところは、皆西山漆器店で働いていた人が独立して開業したところとのこと。
    右:西山漆器店の漆器は、人形町「玉ひで」や浅草「駒形どぜう」など東京を代表する名店で使われている。偏に漆と言えど、プラスチック製の格安なものから芸術品として扱われるものまで様々。ぜひ本物に触れて体感して欲しい。

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