
継ぎ人 その二十四
「変えない」ことが生み出す価値を今に伝える
ISSUED | 2019.04

伊勢重 六代目 宮本重樹さん
- 伝統ジャンル | すき焼き 継 承 歴 | 六代目
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1953年東京・日本橋生まれ。学習院大学卒業。大学卒業後、2年間の会社勤めを経て、1977年より家業に従事。1998年に六代目を継承。
「変えない」ことが生み出す価値を今に伝える
文明開化の象徴ともいわれる牛肉の食文化。明治2年に創業した「伊勢重」は、まさに和牛文化の歴史とともにその歩みを進めてきた。日本橋小伝馬町に店を構えて150年、東京に現存する最も古いすき焼き店だ。「実は家業を継ごうとは考えていませんでした」と語るのは、六代目の宮本重樹さん。自分に商売は向かないのではないかと思い、大学卒業後は一般企業に就職した。しかし2年後に母が急逝、先代である父を手伝うため店に戻ることになる。
「父からは何か指示されることもなく、自由にやらせてもらいました。今は息子が厨房に立っていますが、私も彼の好きなようにやってほしいと思っています。でも時々つい口を出したくなってしまう。なかなか父のようにはいかないですね(笑)」。
「伊勢重」では全ての肉を職人が手切りし、水火鉢を使った炭火ですき焼きをつくる。代々受け継がれる割下とともに、創業時から変わらないスタイルだ。手切りすることによって複雑な肉目にも繊細に対応でき、より柔らかい食感に。さらに肉の表面に細かい凹凸ができるため味がしみこみやすくなる。
「……というのは理屈ですが、正直に言えば、昔から同じことを続けているだけ。それが結果としてクこだわりクと評価していただけるようになったんです」。
そう語る宮本さんだが、「変わらない」ことには手間も苦労も伴う。厳選した和牛に丁寧な手切り、そして秘伝の割下と炭火による調理。これらが一体となって、「伊勢重」でしか味わえないすき焼きが生まれる。
「昔からずっと守ってきたものがあるから、私が今ここに立っていられる。代々の先祖には感謝しかありません。今後時代が変化しても『伊勢重』の味が続いてくれたら、と思います」。
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匠の言葉
「美点凝視」
肉は部位ごとの良さを活かすことでより美味しく味わえる。人も同じで、それぞれに個性があり、長所がある。「人はどうしても物事の悪い面ばかりに目を向けがち。そんなときこそ良いところに注目していきたいと常に思っています」。
店舗情報
伊勢重
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伊勢重
住所 中央区日本橋小伝馬町14-9▶︎MAP 電話番号 03-3663-7841 営業時間 11:00~22:00 休日 日祝 すき焼きの肉は選び抜かれたA5和牛。熟練の職人の技で一枚一枚手切りし、肉の美味しさを最大限引き出している。
創業当時から使い続けている珍しい水火鉢は、炭火の香りやじんわりとした温かさも楽しむことができる。甘さ控えめでサッパリとした味わいの割下も、創業時から受け継がれているもの。
創業当時、牛肉の長期保存のために考案された牛佃煮。明治から変わらない味付けで、すき焼きと並ぶ「伊勢重」の二枚看板だ。
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