郷土料理に現代の技術を重ね日本の食文化を未来へと繋ぐ
「恵比寿えんどう」の遠藤記史さんからバトンを受け継いだのは青山一丁目の日本料理店「てのしま」の林 亮平さん。 全国各地の食材と真摯に向き合い、日本料理の本質を追求する。
Words_TOMOMI KATO
Photographs_KIYOSHI TSUZUKI
林さんの日本料理は、古典的でありながら現代の流れを汲んでいます。僕自身も理想とするかたちの日本料理です。 恵比寿えんどう|恵比寿 遠藤記史さんより
Profile
林 亮平さん
1976年生まれ、香川県出身。大学卒業後、日本料理の名店「菊乃井」に入る。菊乃井本店副料理長、菊乃井赤坂店渉外料理長などを歴任し、国際会議や首相官邸での晩餐会の料理も担当。2018年3月「てのしま」を開店。
「てのしま」という店名は、瀬戸内海に浮かぶ小さな島「手島」に由来する。店主・林亮平さんの実家の本家があり、幼い頃から何度も訪れたという美しい島だ。
長い歴史のある手島だが、今や島民は20名を切り、培われてきた文化が失われつつある。そんな島の姿と重ね合わせ、林さんは「日本料理の本質」について深く考えるようになったという。なぜ日本料理は日本人、特に若い人達にとって遠い存在になってしまったのか。日本料理を未来へと発展させるにはどうすればよいのか。それらの問いの中で林さんが目を向けたのが、全国各地の郷土料理だった。
「各地域で食べ続けられてきた郷土料理には、“本物”の魅力と説得力があります。ただ、私が目指すのは伝統の継承だけではありません。昔から続く料理に現代の考え方や食材を掛け合わせ、日本料理の新しいかたちを探りたいと考えています」
それができるのは、前職の「菊乃井」時代に養った確かな技術があるからこそだろう。全国を巡って生産者とコミュニケーションをとり、選りすぐりの食材を吟味。和食に欠かすことのできない出汁も、昆布と鰹節のほか、鶏やいりこ、山うどなど、食材や料理に合わせて数種類を使い分ける。既成概念にとらわれず、もっと自由に日本料理を楽しんでもらいたい――そう語る林さんが掲げる店のテーマは「みんなの和食」だ。
「地方にはそれぞれ素晴らしい食文化があり、郷土料理にはその文化をもり立てる力があります。ゆくゆくは手島に出店し、島の魅力を国内外に広く伝えるのが私の夢。『てのしま』は、その目標のための第一歩なのです」
RESTAURANT INFO店舗情報
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てのしま(てのしま/青山一丁目)
住所: 港区南青山1-3-21 1-55ビル2F ▶︎MAP 電話番号: 03-6316-2150 営業時間: 17:00~20:00(L.O.) 休業日: 日曜日、不定休 料金: おまかせ 15,000円(税込・サ別) URL: https://www.tenoshima.com/