今回はそんな銀座で文豪たちの心を掴み、今なお輝き続けている名店を紹介しよう。
Photographs_HIDE NOGATA.
MASAMI OHIRA.
Edit&Word_NOBUYUKI YAMAHA.
MIDORI SHIMOKOSHI. IKUMI UENO (effect).
50年以上変わらない味を提供
食通の文豪も絶賛した中華料理店
味の中華 羽衣 銀座本店
数多くの名店に通い、グルメエッセイを多数執筆した池波正太郎。彼が愛した店のひとつが昭和44年から続く、こちらの中華料理店だ。注文するのは決まって包子とビーフン。1人で訪れてはグラスビールとともに黙々と食を楽しんでいたそうだ。包子は天女の羽衣のように透き通った皮のなめらかな食感と肉汁あふれる具材が魅力。店の名前の由来となった自慢のメニューだ。ビーフンはあっさりとした麺とシャキシャキの野菜との相性が抜群。国産の素材にこだわり、伝統のレシピを受け継ぎながら54年間変わらない味を提供している。
- 中国の醸造酒、黄酒(ホアンチュウ)を長期熟成して作られた老酒(ラオチュウ)。自家製で持ち帰り不可のためここでしか味わえない。
- 約100名が入店可能な広々とした店内は池波正太郎が通っていた当時とほとんど変わっておらず、今でも池波作品のファンが訪れる。
SHOP DATA店舗情報
味の中華 羽衣 銀座本店
住所:東京都中央区銀座7-12-14大栄会館 B1F
交通:東京メトロ銀座駅、都営浅草線東銀座駅より徒歩5分
TEL:03-3542-8560
営業時間:11:00〜15:00、17:00〜22:00(LO21:30)
休業日:日・祝日、年末年始
谷崎潤一郎が名作に綴った
昭和の銀座を彩ったレストラン
ローマイヤレストラン 銀座店
上質な肉料理とドイツビールで人気を博すレストラン。戦後ベストセラーとなった谷崎潤一郎の「細雪」の一節に登場することからも、当時の銀座を象徴するモダンな存在であったことが伺える。創業者は第一次世界大戦後に加工肉の製造所を日本で開業したドイツ人、アウグスト・ローマイヤ氏。「厳選した食材と培った技術で、本物の肉料理を提供する」という氏の意志を受け継いだ、こだわりの料理を食すことができる。
- 一度は銀座から離れたが、ゆかりあるこの地で再出発するために、令和元年に日本橋から移転し、リニューアルオープンした。
- 提供する肉料理に合うものを厳選し、常時16種類のドイツビールを用意。瓶ビールは季節によって仕入れる銘柄を変えている。
SHOP DATA店舗情報
ローマイヤレストラン 銀座店
住所:東京都中央区銀座5-9-17 銀座あづまビル2F
交通:東京メトロ銀座駅より徒歩3分
TEL:03-6263-9360
営業時間:11:30~15:00(LO14:00)、17:30~22:00(LO21:00)
休業日:日・祝日
文壇に煌めくスターたちが
夜な夜な酒を飲み交わした聖地
Bar Lupin
路地裏にある扉を開けて階段を降りると、オレンジのランプがやさしく灯る空間が広がる。昭和3年にカフェーと呼ばれる洋風酒場として開業したこちらのバーには、泉 鏡花、川端康成、坂口安吾といった数多くの作家が立ち寄り、上質なお酒を使った様々なカクテルを愉しんでいた。そのカウンターで写真家・林 忠彦によって撮影された太宰 治の写真が有名で、今でも同じ席に座ることを求めるファンが訪れるという。
- ランプや棚など装飾品の多くは開業当時のものを使用。今にも太宰 治や坂口安吾らが訪れそうな、不思議な雰囲気が漂っている。
- 無頼派の中心である織田作之助、坂口安吾、太宰 治の写真。足置きがない席のため、酔った太宰はよく隣の椅子に足を乗せていたそうだ。
SHOP DATA店舗情報
Bar Lupin
住所:東京都中央区銀座5-5-11 塚本不動産ビルB1F
交通:東京メトロ銀座駅より徒歩1分
TEL:03-3571-0750
営業時間:17:00~23:30(LO23:00)
休業日:日・月曜日
※チャージ料880円(税込)が別途かかります。
歴史を感じる店内でいただく
北 杜夫も愛した上カツレツ
煉瓦亭
明治28年に誕生した煉瓦亭はカツレツやエビフライ、オムライスなどを考案した日本で最初の洋食店と言われる名店。北 杜夫の小説「マンボウ哀愁のヨーロッパ再訪記」にも登場しており、洋食文化の先駆けであることが伺える。同小説の中で描かれている上カツレツは、今なお多くのオーダーがある人気のメニュー。ヒレ肉を一晩寝かせることで旨味を引き出す調理法やサクッと音のする香ばしい衣を揚げる技術は、創業当時から変わっていない。脂身が少なく柔らかいため、池波正太郎も晩年はこのメニューを注文することが多かったそうだ。
- 昭和39年に建て替えを行なって以来、変わらない姿でファンを迎える現在の建物。2階の窓際の席は池波正太郎のお気に入りだったそうだ。
- 建て替えと同時期に購入したレジスターが今でも鎮座している。店内に飾られた歴史あるアンティークや絵画を眺めるのも煉瓦亭の楽しみ方のひとつ。
SHOP DATA店舗情報
煉瓦亭
住所:東京都中央区銀座3-5-16
交通:東京メトロ銀座駅より徒歩3分
TEL:03-3561-3882
営業時間:11:15〜15:00(LO14:00)、17:30〜21:00(LO20:00)
休業日:日曜日、夏季、年末年始
日本に喫茶店文化をもたらした
多くの文豪の溜まり場
銀座カフェーパウリスタ
ブラジル珈琲を1杯5銭という破格の値段で提供し、珈琲文化を全国に普及させたカフェーパウリスタ。芥川龍之介と菊池 寛が打ち合わせで頻繁に訪れていたほか、永井荷風が編集主幹の文芸雑誌「三田文学」の面々の溜まり場だったそうだ。店主自らブラジルに出向き仕入れるコーヒーは、有機栽培にこだわった深い味わいが魅力。コーヒーに合うおいしさを研究して作られた自家製のケーキも人気を博している。
- 明治44年創業。関東大震災の時に全壊したが、昭和45年に現在の場所に再オープン。現存する日本最古の喫茶店として名を馳せる。
- 2階にはわたせせいぞうがパウリスタを描いた「アンを抱きしめて 村岡花子物語」が飾られている。作品の左には菊池 寛の姿が。
SHOP DATA店舗情報
銀座カフェーパウリスタ
住所:東京都中央区銀座8-9 長崎センタービル1F・2F
交通:東京メトロ銀座駅より徒歩7分
TEL:03-3572-6160
営業時間:1F 月〜土曜 9:00〜20:00、日・祝日 11:30〜19:00、2F 12:00〜19:00(各LOはフード1時間前、ドリンク30分前迄)
休業日:無休(※年末年始を除く)
本格的な西洋文化を取り入れ
銀座のシンボルとなったパーラー
資生堂パーラー 銀座本店
サロン・ド・カフェ
明治35年、当時まだ珍しかったソーダ水とアイスクリームを製造販売する「ソーダファウンテン」を資生堂薬局内にオープンした。以来、本格的な西洋の文化を取り入れながら発展を続けてきた資生堂パーラー。昭和17年に発行された太宰 治の小説「正義と微笑」には現在も看板メニューとして残るアイスクリームソーダが登場する。銀座の流行の最先端を贅沢な空間で味わうべく、多くの文豪が店を訪れたそうだ。
- ソファ席を完備したくつろぎの空間。花をモチーフにした照明やピンクのインテリアなどかわいらしさと高級感がテーマとなっている。
- かつての銀座レンガ街をイメージした色合いの外観も魅力。建て替えや改装はあるものの、場所は明治35年の創業時から変わらない。
SHOP DATA店舗情報
資生堂パーラー 銀座本店
サロン・ド・カフェ
住所:東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル3F
交通:JR新橋駅より徒歩約5分、東京メトロ銀座駅より徒歩約7分
TEL:03-5537-6231
営業時間:火〜土曜日11:00〜21:00(LO20:30)、日・祝日 11:00〜20:00(LO19:30) ※予約不可
休業日:月曜日(祝日は営業)・年末年始