TOP MAGAZINE特集 世界が酔いしれるジャパニーズクラフトジン

世界が酔いしれる
ジャパニーズクラフトジン

四季折々の自然の恵み、津々浦々の食文化、
そして作り手のアイデアと魂を凝縮した、日本のクラフトジン。
世界で旋風を巻き起こしている、この香り高きジンの魅力に迫る。

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注目のクラフトジンその文化が日本で開花

ウォッカ、テキーラ、ラムと並び“世界4大スピリッツ(蒸留酒)”の一つに数えられるジン。「オランダ人が生み、イギリス人が洗練し、アメリカ人が栄光を与えた」と称されるグローバルなジンの世界で、近年「ジャパニーズクラフトジン」が高く評価されている。その楽しみ方や注目の銘柄について、日本におけるクラフトジンの第一人者、三浦武明さんに聞いた。

PROFILE

「ジンフェスティバル東京」主宰 三浦武明さん

1974年生まれ。「食を通じて世界を知る、ジンを通じて世界と繋がる」を掲げる株式会社フライングサーカスの代表取締役として、数々の飲食店やイベントをプロデュー ス。2018年、2019年、2024年にはジンの祭典「ジンフェスティバル東京」を開催するなど、クラフトジンのカルチャーを牽引。世界40ヶ国以上の料理を提供する飲食店「TOKYO FAMILY RESTAURANT」では、1000銘柄以上のクラフトジンを取り扱っている。

自由度が高いクラフトジン日本の蒸留所が続々参戦中

ジンは、スピリッツ(蒸留酒)にスパイス、ハーブ、果実の皮などの「ボタニカル」を加えて再蒸留したお酒。ボタニカルの種類は千差万別だが、ヒノキ科の植物の球果「ジュニパーベリー」は必須だ。三浦さんは「ジュニパーベリーという季語で詠む俳句みたいなもの」と言う。

日本では長らく、カクテルに使われる脇役的な存在だったジン。しかし2010年頃から少量生産のクラフトジンが各国で造られ注目を浴びるようになると、その熱は日本にも伝播し、みるみるうちに花開いた。新規の蒸留所が次々誕生し、老舗の酒造も続々とジン造りに参入。「製造の自由度が高いため、郷土の魅力を取り込んだ“ご当地ジン”ともいえるジャパニーズクラフトジンが生まれやすいのでしょう。四季がもたらす自然の恵み、各地に根付いた食文化、そして日本人の独創性や勤勉さは、クラフトジンとの親和性が抜群。わが国のクラフトジンは“地方創生”も、地方と地方の“越境”も、同時に叶えられるコンテンツだと信じています。日本のどこかで今日生まれたご当地ジンが、数年後には世界中に知れ渡るかもしれません。私が主宰する『ジンフェスティバル東京』に参加してくれる日本のメーカー数も、2018年は8社、今年は51社と急速に増えていますし、今後がますます楽しみです!」


清涼感がある香りのジュニパーベリー

香りが醍醐味のジンだから自分流のアレンジで堪能を

では、初心者はジンをどのように楽しめばよいか。

「まずは伝統的なロンドン(ドライ)ジンを味わい、それをベンチマークにするとよいでしょう」と三浦さん。ロンドンジンは、ロンドンの地名がついているがあくまで製法の規定であって産地は不問。クリアで雑味がないためバーテンダーたちに頼られてきたジンである。

「ジャパニーズクラフトジンの中にも、素晴らしいロンドンジンがあります。それを起点としてさまざまなジンを飲み比べて、自分の好みを突き詰めていけば、〝推しジン〞といえる銘柄に出合えるかもしれません」

そしてジンの大きな魅力の一つが、「飲む香水」と称されるほどの香りだ。クラフトジンはその香りの幅、自由度の高さが特徴で、それが人気の理由でもある。

「嗅覚は人の脳の記憶領域に直結しているため、かつて旅した土地のジンを飲むと、その香りから当時の思い出がぱっと頭に浮かぶという人は多いです。そんなジンの香りや味わいを最大限に堪能するためには、相性のよい割り材を選ぶことがポイント。ロンドンジンのようにクリアなものなら、苦味、甘味、酸味のバランスがよいトニックウォーターがおすすめ。焼酎ベースなど風味の強いジンなら、プレーンな炭酸水が合います。その日の気分で、ハチミツ漬けのレモンなどを入れてみるのも面白いですね」

京都府京都市

季の美 京都ドライジン

ロンドンジンのスタイルに和のボタニカルを融合

京都伏見のきめ細やかな伏流水を使い、米から造ったライススピリッツをベースに、赤松、柚子、玉露、山椒など11種のボタニカルをプラス。通常のジンはボタニカルをまとめて蒸留するが、素材の特性に応じて6グループに分け、別々に蒸留してからブレンドするのもユニークだ。そのクリアな風味から、京都の山々の神聖な空気を感じられると好評。


価格:5,500円(700ml)度数:45度
三浦さんのコメント

“ジャパニーズクラフトジンの金字塔”ともいうべき逸品で、今や世界のトップブランドです。炭酸水やトニックウォーターはもちろん、お湯で割っても絶品。バリエーションの一つである「季のTEA」も、お茶の香りがより際立っていておすすめ。

京都蒸溜所

ウイスキーの輸入代理店を営んでいた夫婦とイギリスのウイスキー専門雑誌の編集長が2014年に設立した、ジン専門の蒸留所。伏見の名水、柚子や山椒、宇治の玉露といった地場素材を用いて生み出される多彩なラインナップは、多数のアワードを受賞。

広島県廿日市市

SAKURAO GIN

広島産柑橘類のフレーバーが香り立つ

100年以上の伝統を誇る蒸留技術がもたらした“ Made in 広島” のジン。「ORIGINAL」にはレモン、ネーブル、夏ミカンなど地元の柑橘類と、県東部に位置する神石郡の名物・高原生姜などを使用。「LIMITED」にはそれらに加え、桜の花びら、牡蠣の殻、本わさび、青紫蘇、ジュニパーベリーなど、全て県内産のボタニカル17種が使われている。


左.SAKURAO GIN ORIGINAL 価格:2,200円(700ml)度数:47度
右.SAKURAO GIN LIMITED 価格:6,050円(700ml)度数:47度
三浦さんのコメント

ロンドンジンの設計に忠実ながら、柑橘類を特徴的に使って“広島らしさ”を感じさせてくれます。50 ヶ国以上に輸出されているなど、国際的評価も高く空港の売店でも人気です。宮島の浜辺に咲くハマゴウを使った「HAMAGOU」も味わい深いです。

SAKURAO BREWERY & DISTILLERY

広島県廿日市市の桜尾で1918年に創業。洋酒の新たな可能性に挑戦するため2017年にSAKURAO DISTILLERYを立ち上げた。ジンの他にはシングルモルトウイスキー、ブレンデッドウイスキーなどを発売している。蒸留所の見学(有料・要予約)も可能。

長野県下高井郡野沢温泉村

NOZAWA GIN

緑深い温泉地が育むさわやかな森の香り

クロモジ、すぎ、カキドオシといった植物を使い、信州の森の中を散策しているかのような香りを表現。ストレートか炭酸水割りが推奨されている。この他、赤紫蘇と青紫蘇を使った「SHISO GIN」、道祖神火祭りをたたえる「DOSO GIN」、バーボンとメープルシロップの製造に使った樽で貯蔵した「BARREL AGED GIN」など独創的なバリエーションも展開。


価格:4,850円(500ml)度数:45度
三浦さんのコメント

人口約3600人の小さな村でわずか3年前に産声を上げ、瞬く間に世界的なアワードを多数受賞するほどの大躍進をみせた、浪漫あふれる蒸留所です。今後ウイスキーもリリースされる予定なので、お酒好きなら目が離せないブランドですね。

野沢温泉蒸留所

2021年、野沢温泉村の歴史ある缶詰工場を改装して設立。蒸留所にギフトショップを備え、ジンのテイスティング(1,000円)やカクテルバーなども体験できる。野沢温泉のシンボルともいえる浴場「大湯(おおゆ)」から徒歩数分とアクセスも良好。

宮崎県日南市

油津 吟 YUZU GIN

本格芋焼酎とロンドンジンのハイブリッド

歴史ある焼酎の名門が、ジンの研究を重ねてたどり着いた自信作。九州が誇る本格芋焼酎をベースに、柚子やきゅうり、宮崎の特産品であるヘベスや日向夏など9種のボタニカルをブレンド。さらに日本独自の伝統的醸造技術である「並行複発酵」と、100℃の低温での蒸留技術を駆使して、素材がもつフレーバーをより強く引き出している。


価格:5,500円(750ml)度数:47度
三浦さんのコメント

油津(あぶらつ)という土地で、柚子を活かし、吟味して創ったジン(GIN)なので「YUZU GIN」(ゆづぎん)と読みます。一口飲めば柑橘の香りがふわっと広がり、焼酎のコクもしっかり感じられる。お湯割りにすると香りが増すのも一興。

京屋酒造

創業天保5年(1834年)といわれ190年続く、焼酎がメインの酒造。「農業生産からの焼酎づくり」をモットーに、子会社が営む農園で、農薬を使わず有機肥料を用いてサツマイモや米を栽培している。大甕仕込みの焼酎造りの見学(無料・要予約)も可能。

宮崎県児湯郡木城町

OSUZU GIN

宮崎の名山で抽出される“大地の香水”

尾鈴山蒸留所の名作芋焼酎「尾鈴山 山ねこ」がベース。「ORIGINAL」には神事に用いる樹木・サカキや、尾鈴山で栽培されるシイタケなどを使用。金柑を意味する「KUMQUAT」には宮崎産の無農薬金柑と、それを引き立てるシンプルな素材が選ばれている。


左.OSUZU GIN ORIGINAL 価格:4,455円(700ml)度数:45度
右.OSUZU GIN KUMQUAT 価格:4,455円(700ml)度数:45度
三浦さんのコメント

いわゆるロンドンジンのスタイルとは大きく異なる、香りも味わいもボリューミーな逸品。グラスの氷が溶けても水っぽくならず、コクがずっと感じられるため、食事をしながら飲むのにぴったり。風味がはっきりしているので、炭酸水で割るのがセオリーです。

尾鈴山蒸留所

芋焼酎の「㐂六(きろく)」、麦焼酎の「百年の孤独」や「中々(なかなか)」などで名高い黒木本店が、蒸留酒のさらなる可能性を求め、良質な水に恵まれた尾鈴山に1998年に開設。ジンの他、ウイスキー2種、本格焼酎3種を手掛けている。

東京都中央区

HOLON GIN

心身のバランスをととのえ、調和を生み出す一杯を

「ととのう時間のクラフトジン」をコンセプトに、異国情緒漂うシナモン、東洋のバニラとも呼ばれるパンダンリーフなどで構成。度数はジンとしては低めの35度。新シリーズとして、柑橘類で晴れやかに仕上げた「HOLON GIN 晴」、潤った緑の香りを煎茶で表現した「HOLON GIN 雨」なども。


価格:4,800円(500ml)度数:35度
三浦さんのコメント

クラフトジンの切り口は、“ご当地”だけではありません。「ととのう」や「調和」、「メディテーション(瞑想)」などのキーワードが示すように、人間の心と体に向き合うことをテーマに据えた非常に興味深い作品です。

HOLON

ジンとお茶を主軸とする新進気鋭のブランド。創設者の堀江 麗さんは2018年頃にクラフトジンに出合い、オリジナルのジンを開発するため仲間と共に2020年にクラウドファンディングを実施。目標金額を達成し、翌年3月からオンラインなどで販売を開始している。

東京都渋谷区

オリエンタリア

ジンを知り尽くした三浦さん渾身の逸品

三浦さんが自ら開発し、蒸留やボトリングなど全てを“手づくり”。調香師をはじめとする香りのエキスパートたちと共に、香道※の精神も踏まえ、シルクロードの光景が浮かぶような唯一無二のフレーバーを磨き上げた。香りが強く、余韻が長続きするのが特徴。※香木を焚いて香りを楽しむ日本の伝統芸道


価格:12,100円(500ml)度数:47度 ※2025年1月再販予定
三浦さんのコメント

聞香(もんこう)という言葉が表すように、香道の世界では香りは“聞く”もの。シルクロードの物語が奏でるフレーバーを、ぜひ一度ご鑑賞ください。香りのボリュームをぎりぎりまで高めているので、「こんなお酒は初めて!」と驚かれることも(笑)。

Distiller M

三浦さんが営むTOKYO FAMILY RESTAURANTの店内で、2021年に発足したジンブランド。「Gin is Music」をテーマに、2年以上の歳月をかけて完成させた蒸留器を使って“サンプリング&コラージュ”を続けている。目指すは「もっとも音楽に近い液体」。

※価格は全て税込み

※2024年12月3日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

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