4年に一度行われるラグビーワールドカップ(以下ラグビーW杯)の第9回大会が、2019年の秋に日本を舞台にいよいよ開幕する。母国の威信を賭けての熱い戦い……なかでも日本代表の活躍を見逃すわけにはいかない! そこでラグビーW杯2019のアンバサダーを務める大畑大介さんに、見どころや魅力を伺った。
Photographs_YUSUKE UCHIDA. Edit&Words_POW-DER. Illustrations_HIROTAKA UCHIYAMA.
協力:(株)スポーツエージェント
大畑大介さん
1975年生まれ。大阪府出身。東海大付属仰星高校→京都産業大学→神戸製鋼コベルコスティーラーズ→ノーザンサバーブス(豪)→モンフェラン(仏)→神戸製鋼コベルコスティーラーズと、国内外のチームで活躍。ラグビーW杯には1999年のウェールズ大会、2003年のオーストラリア大会に出場する。2010-2011年のシーズンをもって現役を引退してからは、ラグビーワールドカップ2019TMアンバサダーやスポーツキャスターとして、日本ラグビーの普及&発展に力を注いでいる。近著に『ラグビーまあまあおもろいで! ~あなたの知らない楕円の世界~』(潮新書 9月発売)がある。
GUIDE 1 大畑大介さんに訊いた……!ラグビーW杯の魅力とは!?
1999年のウェールズ大会、2003年のオーストラリア大会に出場した大畑さんがラグビーW杯の思い出や、日本ラグビーへの期待を語る。
ラグビーW杯2大会に出場し、さらにはテストマッチ(国際試合)トライ数69という世界記録を持つ大畑さん。多くのラグビーファンを魅了してきたレジェンドは、開幕を目前にして盛り上がりを見せるラグビーW杯2019について、どのように感じているのだろうか?
「今大会はアジアでの初めての開催。しかも、初めて〝ラグビー伝統国ではない?国で、さらに初めて翌年にオリンピック開催を控えた国……日本で行われるとあって、世界中から注目が集まっています。もちろんそんな〝初めて尽くし?だけで、こんなにW杯が盛り上がるわけはありません。W杯は国と国の威信を賭けた4年に一度の戦いですから、しかもラグビーには球技だけでなく格闘技の要素も入っていますから、おのずと選手もファンも力がみなぎって来るんですよ」と語る大畑さん。 さらに大畑さんは、ラグビーW杯を「ゲーム」や「プレー」だけでなく、ラグビーの本質をもっと大局的に見てその魅力を訴求する。
「先ほど国と国の戦いがW杯の魅力と言いましたが、逆に、ラグビーには国境がないことも魅力の一つと言えるでしょう。例えば、1999年ウェールズ大会の対ウェールズ代表戦が象徴的でした。どちらも真剣に激しく戦いましたが、我々の良いプレーにはウェールズサポーターが歓声を上げてくれたし、試合後に街を歩けば人々が気さくに声をかけてくれました。国の垣根を越えて人々がコミュニケーションを自然に取れることこそ、ラグビーの魅力であり大きなパワーであると思います」
そう言えば前回のイングランド大会で日本が南アフリカと対戦した時はスタジアムのみんなが応援し、そして勝利した瞬間は世界中が歓喜……感動のシーンは記憶に新しい。
「そうです! ラグビーには一個人を、そして地域を、さらには国を動かすパワーがあるんです。今大会で日本チームは良いプレー&結果を残し、日本ラグビーの底力を世界にメッセージしてほしいですね。それは十分可能だと、僕は思いますよ。そうすれば今後の日本ラグビー界、いや……来年にはオリンピックが控えていますから……日本スポーツ界の充実と発展に好影響を与えるのは間違いないでしょう」と、拳に力を込めながら熱く語る大畑さん。
みんなが日本チームを応援すれば、その声が〝力?になる。まずは日本代表チームの初戦、9月20日(金)の対ロシア戦(東京スタジアム)に行こう!
良いプレー&結果がインパクトを与え、それがラグビー界の未来に繋がる!
写真:ロイター/アフロ
2015年のイングランド大会までは日本チームには“善戦”という言葉が多かったが、南アフリカを破ったことで選手もファンも“勝利”を味わえるようになった。
写真:築田純/アフロスポーツ
大畑さんのポジションはウィング(WTB)とセンター(CTB)。爆発的な加速力を生かして、トライを量産した。
GUIDE 2 大畑大介さんに訊いた……!押さえておきたい専門用語
「反則を2つと選手のポジションを覚えれば、余裕で楽しめます」と太鼓判を押す大畑さん。さらにスタジアム観戦のコツも伝授してもらった!
ルールは2つだけ反則を覚えればOK!
どんなスポーツにもそれぞれルールがある。もちろんラグビーも同様だが、初心者には非常に難解なワードばかり。それらを目前に迫ったW杯までに覚えるのは至難の技だ。そこで大畑さんに訊いてみると、「ルールは全部覚えなくても大丈夫です。“ノックオン”と“スローフォワード”という2つの反則だけ覚えておけば観戦できますよ」と、心強いアドバイス。ちなみに、この反則をおかすと、大切なボール=攻撃権が相手チームに渡ってしまう。
ラグビーのポジションを覚えよう!
「そもそもラグビーって何人で試合するの?」と思う初心者は少なくない。1チーム15人、計30人で得点を取り合うのがラグビーだ。その中でもフォワードとバックスにわかれ、前者は8人でスクラムを組むメンバー(右左プロップ、フッカー、左右ロック、左右フランカー、ナンバーエイト)、後者は7人でパスを回すメンバー(スタンドオフ、左右センター、左右ウイング、フルバック)となっている。これらを知っておくと、試合が格段に面白くなる。
フォワードと呼ばれる前方の8人と、バックスと呼ばれる後方の7人に分けられ、1チーム15人で相手と対戦する。フォワードは主にスクラムを組む“力自慢”で、バックスは華麗にボールを回し、走力で得点を狙う。
Check! ぜひスタジアムで観戦しよう!
ラグビーのスタジアム観戦には笛や太鼓といった“鳴り物”がないため、落ち着いてゲームに熱中することが出来る。「ゲームの行方(勝ち負け)を追いたい人、選手のプレーを見たい人、それぞれの楽しみ方で観戦すればいいんです」と大畑さん。では、それぞれに適したスタジアムの観戦ポイントを紹介しよう。
GUIDE 3 大畑大介さんに訊いた……!強豪チームをチェック!
はっきり言って、W杯に出場するチームはどこも強豪! その中でも日本のライバル最右翼と言える「予選で当たる2チーム」を紹介しよう。
はたしてどこが優勝するのか?
強豪チームというと、ワールドカップ2大会連続優勝している王者ニュージーランドが大注目なのは言うまでもない。その王者に前大会の決勝で健闘したオーストラリアや、2018年のテストマッチで連勝して調子を上げている古豪イングランド、大型でスピードのある選手を揃えた南アフリカも侮れない。また、前大会ベスト4のアルゼンチンはランとキックに優れたバックスを揃え、虎視眈々と上位を狙っている。では、それらを迎え撃つ日本チームはと言うと?
「日本チームは十分に優勝する可能性があります。外国チームは日本特有の高温多湿の気候に慣れていませんから、9 ~10月の試合では本領を発揮できないかもしれません。そうした“地の利”を生かせば、日本チームの躍進は大いに期待できます」と大畑さんは明言する。だからこそまずは予選で当たるチーム、特に難敵スコットランドとアイルランドに勝って、勢いをつけてほしいものだ。
日本のライバルはこのチームだ!
写真:Marco lacobucci EPP/Shutterstock.com
Ireland_アイルランド
優勝候補と2戦目で激突!日本の“大物食い”なるか!?
2018年のシックス・ネーションズで全勝優勝。2016年と2018年には王者ニュージーランドを撃破するなど、今最も勢いのあるチーム。「コンピューターのような正確無比な10番セクストンをバグらせるような、アグレッシブなプレーが日本チームに必要!」と大畑さんは分析する。
写真:Mitch Gunn/Shutterstock.com
Scotland_スコットランド
真摯かつ堅実なプレーが自慢 9番レイドローが要注意!
2015年大会では前評判を覆す成績を残し、2017年の世界ランキングで5位になった実力チーム。「実力があって爆発力もあるんですが、“波”があるというのが難点かも!?」と大畑さん。日本チームは好不調の不調につけ込み、実力を出させないような試合運びをすることが大事だ。
ラグビーW杯2019の試合日程をチェック
写真:Mitch Gunn/Shutterstock.com
GUIDE 4 大畑大介さんに訊いた……!日本代表の活躍に期待!
大畑さんが「優勝も可能!」と明言する日本チーム。ハードワークの成果と地の利を生かして、ぜひとも大旋風を巻き起こして欲しい!
4年前よりグレードアップしている日本チーム
2015年イングランド大会では強豪国である南アフリカに勝ちはしたものの、惜しくもグループステージ敗退と残念な結果に。ただ2016年リオ五輪では7人制で王者ニュージーランドを破り、その後もハードなトレーニングを積み、多くの試合をこなしてきている。
「日本代表史上最強」との呼び声も高く、仕上がりは完璧だ。大畑さんも「今の日本代表は2015年の南ア勝利のおかげで、凄く自信がついています。優勝候補に上がっても不思議じゃありません」と太鼓判。タフでスマートな日本チームのプレーを応戦しよう!
この選手に注目!
写真:アフロスポーツ
Luke Thompson_トンプソン・ルーク選手
W杯最多出場のベテラン選手
1981年生まれ、ポジションはロック。ニュージーランド出身だが日本でラグビーのキャリアをスタート。大ベテランながら身長196cm、体重110kgを生かし、ボール獲得の最前線で日本チームのために身体を張る。
写真:長尾亜紀/アフロ
Kazuki Himeno_姫野和樹選手
現在人気急上昇の若手注目株
1994年生まれ、ポジションはロックだが、試合によってはフランカーやナンバーエイトもこなす。ハードランとタックル、強靭なフィジカルを武器に、今大会でブレイクの予感大!と大畑さんが太鼓判を押す注目選手だ。
写真:アフロスポーツ
Kenki Fukuoka_福岡堅樹選手
ラグビーとともに医者を目指す二刀流選手
1992年生まれ、ポジションはウィング。50mを5秒8というスピードが武器。W杯の前哨戦とも言えるパシフィック・ネーションズカップでは、3戦連続トライを上げる。本番での活躍に期待したい。