銘柄や飲み方によって味わいもさまざまで、知れば知るほど虜になる人も多い。
ブランデーの魅力に触れ、優雅な時間を堪能しよう。
Text_ENO.
極上の大人時間
ブランデーの奥深さに触れる
ブランデーはゆっくり時間をかけて味わう大人の酒だ。グラスに注がれる一杯から、華やかな香りが立ち上がる。ブランデーとコニャックに精通するBAR DORASの中森保貴さんに、その魅力と楽しみ方を聞いた。
監修いただいたのは

BAR DORAS オーナーバーテンダー 中森保貴さん
東京の浅草・花川戸で生まれる。酒の流通を勉強するため、世界の酒と食品を扱う酒販店での勤務を経て、バーテンダーへ転職。都内の幾つかのバーに勤めた後、2005年4月に地元の花川戸でBAR DORASを開業。日々、手法と技術を追究するカクテルはもちろんのこと、コニャックとスコッチをダブルメインとし、ヨーロッパ各国を旅した知見をもとに、その文化や伝統を多くの人に伝えている。著書『旅するバーテンダー』『旅するバーテンダー2』には、生産者との温かい交流が綴られている。

BAR DORAS
東京都台東区花川戸2-2-6 Floraison HANAKAWADO 101
03-3847-5661
BAR DORASでは、優雅な時間を提供するため、調度品も海外から買い付けている。新型コロナウイルスの感染拡大時に輸入酒類販売業免許を取得。アジア初上陸となるコニャックの輸入販売も行う。
優雅な香りのブランデー
まずはコニャックの魅力を
ブランデーは果実を原料に発酵、蒸留、熟成して造られる酒だ。リンゴ、洋梨、サクランボなどを使うものもあるが、多くは白ブドウを原料とする。
「ブランデーの最大の魅力は香りです。ブドウを発酵させてワインを造り、それを蒸留するので、凝縮されたブドウ本来の香りと樽熟成による香りが重なり合って、優雅で複雑な芳香が生まれます。アルコール度数が高く、単体でじっくり味わうタイプのお酒です」
産地が異なるコニャック、アルマニャック、そしてリンゴを原料とするカルヴァドスは、三大ブランデーといわれる。
「ブランデーが初めてという方は、質の高い銘柄が多いコニャックをまず飲んでいただきたいですね。コニャックはフランス南西部のコニャック地方で400年以上前から造られるブランデーです。原産地域、原料、製造法などに細かな規定があり、それをクリアした製品のみがコニャックを名乗ることができます。コニャックの香りを高めてくれるのが、原料となるユニ・ブラン、フォル・ブランシュなどのブドウ。これらの品種は糖度が低く酸度が高いので、熟成後も香り成分が多く残ります。生産しているのは、ヘネシー、レミー・マルタンなどの大手メーカーと、ブドウの栽培から蒸留、熟成、瓶詰めまで一貫して行う〝プロプリエテール〞と呼ばれる造り手。手塩にかけて育てたブドウを手作業で選別したり、独自の手法でブレンドするなど、酒造りに強いこだわりを持つ人がたくさんいます。大手メーカーを選ぶもよし、プロプリエテールを選ぶもよし。独特な香りと共に、悠久の歴史と造り手に思いを馳せながらグラスを傾けると、さらに味わい深い一杯になると思います」
熟成年数で決まる等級
    おいしさは嗜好次第
ブランデーは異なる熟成年数の樽をブレンドし、その中で最も年数の短いものを基準としてV.S.、V.S.O.P.、Napoléonなどの等級がつく。等級が高い方がおすすめなのだろうか。
「熟成年数が長いほど、味はまろやかになる傾向があります。ただどれを〝おいしい〞と感じるかは、飲む人の味や香りの嗜好によります。いろいろな銘柄、等級のものを飲み比べながら、自分の好みに合った一杯を見つけてみてはいかがでしょうか」
その際、熟成年数でグラスを変えるのがポイントだそうだ。
「熟成年数が短いものなら、くびれがあり、口が開いているグラスを。長期熟成のヴィンテージものなら、ボウルが丸くふくらんでいるクラシックなスタイルのグラスが向いています」
Brandy trivia
- 
三大ブランデー
- コニャック
 - フランスのコニャック地方で生産される。原料は白ブドウ。厳しいルールの元で造られ、高級で格式高く、味わいも雑味なくまろやか
 - アルマニャック
 - フランスのアルマニャック地域で生産される。原料は白ブドウ
 - カルヴァドス
 - フランスのノルマンディー地方で生産される。原料はリンゴ
 
 - 
コニャックの等級と熟成年数の目安
- V.S.(Very Special)
 - 熟成約3年
 - V.S.O.P.(Very Superior Old Pale)
 - 熟成約6年
 - Napoléon(ナポレオン)
 - 熟成約10年
 - X.O.(Extra Old)
 - 熟成約20年
 - Extra(エクストラ)
 - 熟成約30年
 - Hors d’âge(オール ダージュ)
 - 熟成40年以上
 - Heritage(ヘリテージ)
 - 遺産クラス*
 
*生産者により異なる
※コニャックの等級はBNIC(フランスコニャック協会)によって規定されている。上記は、各等級の一般的な熟成年数。 - 
コニャックの製法
- ①ワインの醸造
 - 白ブドウの果汁のみを発酵させてワインを造る
 - ②蒸留
 - ワインを2回蒸留し、アルコール度数の高い原酒を造る
 - ③熟成
 - 樽に入れて熟成させ、香りを引き出し、かつアルコール度数を下げる
 - ④ブレンド
 - 熟成年数の異なる樽から原酒をブレンドして瓶詰め
 
 

おすすめはストレート
時間をかけておいしく飲む
「ブランデーはストレートで飲むのがおすすめです。注ぎたてではなく、しばらく時間を置いてから飲み始めてください。始めに少量を口に含み、舌をブランデーでコーティング。こうすると、2口目から優しい味わいときれいな香りが出てきます。3口、4口と舌に重ねていくと、さらにうま味を感じるように。良質なブランデーはグラスの残り香までも上質。飲んだ後の香りで余韻に浸る、そんな贅沢なひとときが過ごせます。
ストレート以外の飲み方では、水割りやロックがお好きな方もいらっしゃるでしょう。ただ、ブランデーはウイスキーと違い、水や氷との相性が悪いので、あまりおすすめはできません。ブランデーには香りを出すのに有効な〝エステル〞という水に溶けにくい成分が含まれており、水分を加えると苦味やえぐみが出ます。なので私の店ではチェイサーとしてアールグレイのアイスティーをお出ししています」
グラスに注ぐ量や味わう時間も重要だという。長期熟成のものなら、トリプル(90㎖)を映画1本見るくらいの時間で味わうと、最後には鳥肌が立つくらいのおいしさが感じられるとのこと。
時と共に変化する豊かな香りと風味を、ゆっくり丁寧に味わう――これこそ至福の大人時間だ。
How to drink
中森さんおすすめ、自宅での楽しみ方
- 
基本はストレートで
グラスに注いですぐに飲むのではなく、しばらく置いてから飲み始めると、果実の甘さと香りが味わえる。また、じっくり時間をかけて楽しむのもポイント。ストレートで飲むと人生が10倍楽しくなるので食後やナイトキャップにおすすめ。
 - 
チェイサーにはアイスティー
チェイサーに水を飲んでしまうと、ブランデーに含まれる「エステル」によって苦味やえぐみを感じることがある。水の代わりにアイスティーをチェイサーにすれば、紅茶の香りとタンニンが苦味やえぐみを中和し、ブランデー本来の味を楽しめる。
 - 
ソーダ割りの作り方
①グラスに氷を入れ、炭酸水を少量注ぎ、軽く混ぜてから炭酸水を捨てる。氷の表面を一度炭酸でコーティングすることで、苦味やえぐみの発生を抑える。
②①の炭酸でコーティングした氷が入ったグラスに、炭酸水を注ぐ。
③ブランデーを別のグラスに注ぎ、2分~3分かけて香りを開かせてから、炭酸水の入ったグラスに注ぐ。ブランデーと炭酸水の割合は1対2がおすすめ。
 
中森さんセレクト
おすすめのブランデー6選
「ストレートで飲んでいただきたいのが、ポールジロー25年、ドメーヌ・ボワニエル バ・アルマニャック、ギィ・ピナールXO 2005です。日本でも知る人の多いプロプリエテール、ポールジローさんのコニャックは、しっかりとした味わいとコクが特徴。まずは25年熟成から飲み始め、好みであれば、その後35年、50年へと段階を踏んで飲んでいくのも楽しいと思います。ドメーヌ・ボワニエル バ・アルマニャックは、アルマニャック最高峰の造り手による、圧倒的な濃さを持つ逸品。当主マーティン・ラフィットさんは、ブドウの良年にのみアルマニャックを造るという強いこだわりを持ち、小規模生産者ながら多くのパリ三つ星レストランに提供しています。ギィ・ピナールXO 2005はBAR DORASの20周年記念プライベートボトルです。コニャック地方で長くお付き合いしているギィ・ピナール家から当社が初めて樽買いした限定600本。特徴的な〝フローラルでフルーティ〞な香りは、マスカット、甘い花の蜜や若草、野生ミント、レモン。まるでハーブティーを飲んでいるように爽やかで、口の中が花の香りでいっぱいになります」
ソーダ割りやトニック割りで楽しむ銘柄はどうだろう。
「ドルーエVS、デュポンカルヴァドス オリジナル、ルドルフ・イェリーネク ラズベリースピリッツがおすすめです。ドルーエVSで作るコニャックシュウェップス(トニック割り)は、BAR DORASの定番スターターの一杯としても人気です。デュポンカルヴァドス オリジナルはソーダ割りやトニック割りに適します。甘くないシードル感覚で飲みやすく、こってりした料理の食後酒にぴったりです。ルドルフ・イェリーネク ラズベリースピリッツはトニック割りにすると、ラズベリーの香りがより引き立ちます。ショットグラスで、ストレートで飲んでも楽しめます」
ポールジロー25年
    ¥19,690/700ml(コニャック)
    

25年表記だが、40年以上の古酒もブレンドされているため、力強くも繊細な味わい。ブドウの栽培から収穫・蒸留までをすべて手作業で行う、生産者、ポールジローさんの極上のコニャック。
株式会社ジャパンインポートシステム 03-3516-0311
ドメーヌ・ボワニエル バ・アルマニャック
    ¥18,480/700ml(アルマニャック)
    
ギィ・ピナールXO 2005 BAR DORAS 20周年記念 プライベートボトル
    ¥18,700/500ml (コニャック)
    

BAR DORASが開業した2005年のヴィンテージをプライベートボトルとしてリリース。オーガニック農法で育てられた少量生産のブドウのため、ストレスのない優しさが溶け込んでトゲがなく滑らかな飲み心地。
酒販DORAS 03-3847-5661
ドルーエVS
    ¥7,590/700ml(コニャック)
    

1848年創業のドルーエは、家族経営でブドウ本来の風味を生かしたコニャックを手掛ける、こだわりのコニャックメゾン。ドルーエ VSは、エントリーレンジながらも、コニャックの最高峰区画であるグランド・シャンパーニュ産のブドウのみを贅沢に使用した逸品。
株式会社ウィスク・イー 03-3863-1501
デュポンカルヴァドス オリジナル
    ¥6,160/700ml(カルヴァドス)
    
ルドルフ・イェリーネク ラズベリースピリッツ
    ¥6,100/700ml(フルーツブランデー)
    

チェコを代表する歴史ある蒸留所のフルーツブランデー。ラズベリーをベーススピリッツに浸漬し蒸留して造られているため、香りはラズベリーそのものに近い。トニック割りにすると、トニックウォーターの甘みでラズベリーの香りが増幅して感じられる。
合同会社ooooo 03-6265-0990
※価格は全て税込み
												
