銀座九十余年の暖簾 一貫に宿る江戸前の粋
銀座の西洋料理店「南蛮 銀圓亭」の小澤徳之さんからバトンを受け継いだのは、昭和十年の創業から九十余年、銀座に暖簾を掲げ続ける「ぎんざ 寿し幸」の岡田 茂さん。親子四代にわたって、江戸前寿司の技と心を今に受け継ぐ。
Text_CHIAKI KANAZAWA. Photographs_HIDE NOGATA.
「ぎんざ 寿し幸」さんの寿司は、とにかくおいしいの一言。私が特に好きなのは、大トロ。卵焼きも絶品。岡田さんの気さくな人柄も魅力です。
南蛮 銀圓亭|小澤徳之さん
Profile
岡田 茂さん
学校卒業後、京都の仕出し料理店で修業。東京に戻り、寿司店で経験を重ねたのち、36歳で家業を継ぎ、「ぎんざ 寿し幸」四代目に。学生時代、喫茶店や居酒屋でのアルバイトを通して、人と向き合う仕事の楽しさを知った。その経験は、今もカウンター越しのおもてなしに生きている。
親子四代〝寿司ひとすじ〞を貫いてきた「ぎんざ 寿し幸」。店先には、いけばな草月流初代家元・勅使河原蒼風が揮毫した屋号看板が掲げられ、老舗の風格を漂わせる。出迎えるのは、四代目・岡田 茂さん。穏やかな笑顔に心がほぐれる。
メニューは客の希望を聞きながら提供する「おまかせ」が基本。九割近くのお客さんが常連とのことで、その信頼の厚さがうかがえる。
「魚はとにかく鮮度が命。店の名物でもあるマグロは、国産の生本マグロを一番おいしい状態で仕入れています」
江戸前の伝統にならい、赤酢と塩で仕上げるシャリが、鮮魚のうま味を引き立てる。マグロは、赤身や中トロ、大トロなど部位ごとの味わいはもちろん、刺し身や握りなどさまざまな楽しみ方ができる。
「うちはカウンターが中心の店なので、お客さまからの見え方やコミュニケーションも大切にしているんですよ」
その言葉どおり、岡田さんの寿司を握る所作は流れるように美しく、まるで伝統芸能を見ているかのよう。旬の食材が彩る一品料理や伝統の江戸前寿司を味わいながら、岡田さんとの会話にも花が咲く。料理だけではない、カウンターならではの豊かな時間が心地いい。
岡田さんは以前、ある常連客に言われた言葉が忘れられないという。
「大将との会話を楽しみながら、『今日はこれを焼いて』『これは生で』『少し炙って』と、その日の気分でお願いして食べるのが、一番贅沢で幸せな時間なんだよ」
技術だけならロボットでも握れる時代が来る、と岡田さんは言う。だからこそ、客との会話を大切にする。
「これからは、『あなたに握ってもらいたい』『またあなたに会いに来たい』と思っていただける職人を育てていくのも、私の大きな使命だと思っています」
洗練された料理と飾らない会話。そのひとときに、江戸前の粋が息づいている。
RESTAURANT INFO店舗情報

-
ぎんざ 寿し幸
(ぎんざすしこう/銀座)電話番号: 03-3571-4558
住所: 東京都中央区銀座7-7-14
▶︎MAP営業時間: 平日 17:30~翌2:00(L.O. 翌1:30)
土曜日 12:00~22:30
(L.O. 料理20:30 ドリンク21:00)休業日: 日・祝日