洗練された技と発酵や熟成の力が生み出す幾重にも重なる深い旨み
「銀座 sasuga 琳」の新井大琳さんからバトンを受け継いだのは日本料理店「やまもと 代々木上原」の山本哲さん。発酵や熟成、燻製を取り入れた料理が特徴だ。
Words_TOMOMI KATO / Photographs_KIYOSHI TSUZUKI
Profile
山本 哲
東京都出身。調理師専門学校を卒業し、割烹や寿司店で約10年間修業を積む。31歳で独立し、恵比寿に「魚豆根菜 やまもと」を開く。10年後、道路拡張のため一旦店を閉じ、全国の生産地を巡って漁師や山菜採り、イノシシ猟などを体験。約2年の休業期間を経て、2016年4月「やまもと 代々木上原」をオープン。
大山町の閑静な住宅街の入口に位置する「やまもと代々木上原」。店内に足を踏み入れると、モダンと侘び寂びが共存する大人の空間が広がる。
店主の山本さんが供するのは、一般的な和食とは一味も二味も違う独創的な料理だ。だしや米、野菜といった日本料理の基本を大切にしながらも、発酵、熟成、燻製などの手法を積極的に取り入れている。各地から取り寄せる天然物の魚も、熟成させることで旨みがギュッと濃縮され、刺身では味わえないような奥深いコクが生まれる。
「一手間を加えることで味に深みが増し、食材のおいしさがより一層引き立ちます。さらに発酵や熟成は、体の免疫力向上にも役立ちますよね。そのためにも大事なのは鮮度。鮮度が悪い魚を熟成させても、傷んでしまうだけですから」
相模湾の朝獲れや玄界灘から空輸される魚など、食材選びは旬と新鮮さを重視。魚介も野菜も自らの目と舌で確かめ、納得したものだけを使う。全国にある山海の生産地を巡った経験を持つ、山本さんならではのこだわりだ。
さりげなく添えられた漬物も樽で漬け込んだ自家製。さらに付け合わせとなるあしらいも、ただ器を華やかに彩るだけではない。野菜や薬味などすべてに味のバランスが計算され、一体となって一つの味が完成する。「熟成や発酵は生き物を育てるのと同じ。良い食材にきちんと手をかけて毎日面倒を見ていけば、おのずと良いものが出来上がります」
味はもちろん器や盛り付けからもうかがえる、飽くなき創意工夫。丁寧に手間と時間をかけた料理の数々が、心と体の隅々にまで活力を与えてくれる。
RESTAURANT INFO 店舗情報
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やまもと 代々木上原 (やまもと よよぎうえはら/代々木上原)
住所: 渋谷区大山町46-10 J’sビルB1▶︎MAP 電話番号: 03-6804-7016 営業時間: 18:00~L.O.20:30 定休日: 火曜日 ※要予約