舌の肥えた方にも自信を持って贈れる和菓子
フォーマルな手土産なら「とらや」といわれるほど、多くの日本人に愛され続けている「とらや」の羊羹。甘党でなくても一度は味わったことがあるのではないだろうか。主力の羊羹の中でも、圧倒的な人気を誇る小倉羊羹「夜の梅」は、繊細でありながらも力強い余韻が残る味わいで、舌の肥えた方を満足させる逸品だ。
菓銘の「夜の梅」は、切り口に見える小豆の粒を夜の闇にほの白く咲く梅に見立てて付けられたもの。古来、夜の梅の美しさは、『春の夜の 闇はあやなし梅の花 色こそ見えね 香やは隠るる(春の夜の闇は無意味だ。梅の花のせっかくの色が見えなくなってしまうが、その素晴らしい香りだけは隠れようもない)』と、「古今集」の和歌にも詠まれているほどだったのだ。
羊羹の命ともいえる小豆は、北海道十勝産の「エリモショウズ」を使用。北海道は国内最大の小豆の生産地で、特に十勝は昼夜の気温差が大きく、風味豊かで、色艶があり、舌触りの良い上質な小豆が育つ。その小豆を煮て羊羹専用の餡を作り、その餡に煮溶かした寒天と白双糖(しろざらとう)を加えてじっくりと練り上げるため、完成までに3日間もかかるのだとか。室町時代後期に京都で創業し、明治2年(1869年)には天皇にお供して東京にも進出した「とらや」には、厳選した素材選び、妥協しないものづくりなど、和菓子づくりへの誠実な思いが受け継がれている。
近年の和食ブームにのって、日本の羊羹がフランスのパリをはじめ、世界各国に広まりつつある。お茶やコーヒーはもちろんのこと、お酒とも好相性なので、一度そのマリアージュを楽しんでみてはいかがだろう。