東京グルメバトン VOL.12

太月|表参道

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椀に広がる無限の宇宙。茶の湯の精神が息づくもてなしの日本料理。

外苑前の名店「いち太」の佐藤太一氏からバトンを受け継いだのは、表参道の裏道にあるミシュラン一つ星店「太月」の望月英雄氏。茶の湯のおもてなしの心が息づく料理とサービスで、人々の舌と心を魅了する。

Profile

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望月英雄

神奈川県秦野市出身。地元でしゃぶしゃぶとステーキの店「太月」を営む両親のもとに生れる。高校卒業後、新宿「龍雲庵」、人形町「玄冶店濱田家」、麻布十番「割烹喜作」で日本料理を修業し、2013年8月表参道に「太月」をオープン。ミシュランガイド東京2015から一つ星を獲得し続けている。

小さな椀の中に広がる 詫び寂びの宇宙

 望月氏が日本料理を志すようになったのは、高校卒業後に修行に入った懐石料理店「龍雲庵」の主人、後藤紘一良氏からの影響が大きい。弱冠27歳で「胡蝶」の料理長に抜擢され、長きにわたって懐石料理を極めた後藤氏に師事することで、茶の湯や茶懐石の世界観にすっかり魅せられてしまった。「時の権力者が膨大な富をつぎ込んで江戸時代に大成した茶の湯は、日本文化の極み。和の総合芸術のような一面に惹かれます」と望月氏。無駄を省き、素材の旨味を丁寧に引き出した望月氏の料理のひとつひとつからは、日本の四季と自然の美しさや奥深さが感じられる。それはまさに、小さな椀の中に広がる無限の宇宙。茶の湯に通じる、詫び寂びの美学なのだ。

そんな深みのある味わいは、料理ごとに約10種類の出汁を使い分けることで実現している。鰹節は店で削り、一番出汁のみを使う。しかも、時間の経過とともに風味が落ちるため、客の来店時間に合わせて、都度出汁を取るというこだわりようだ。

味とサービスの根底にある もてなしの心

 茶の湯や茶懐石というと堅苦しいイメージがあるかもしれないが、飲食店を経営する両親のもとに生まれ小さいころから夫婦二人三脚で店を切り盛りする姿を見て育った望月氏は、「大将と女将のいる、家族経営の温かい店を作りたい」と言う。妻でもある女将を中心に、若いスタッフによって行われる心のこもったサービスは、客を緊張させることがない。どんなシーンで利用しても居心地のいい空気感を作ってくれるため、接待や会食はもちろん、デートで利用する人もいれば、子供連れのママ友ランチ会で利用されることもある。

「茶道の精神とは、もてなしの心である」と言われるが、「太月」が支持される理由は、味とサービスの根底に、茶の湯に通じるもてなしの心があるからなのだろう。

女将は安心して店を任せられるパートナー。12名のスタッフはほとんどが平成生まれ。「今年独立するスタッフがいることが嬉しく、後に続いてほしい」と望月氏は言う。

RESTAURANT INFO

店舗情報

  • 太月 (たげつ/表参道)

    住所: 港区北青山3-13-1 北青山関根ビルB1 ▶︎MAP
    電話番号: 03-6450-5991
    営業時間: 11:30~14:00(L.O.13:00)
    18:00~23:00(L.O.21:00)
    定休日: 日曜・祝日
※2021年12月8日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

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