TOP MAGAZINE特集 心とからだのバランスを整える いざ乗馬の世界へ

心とからだのバランスを整える
いざ乗馬の世界へ

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最近、エグゼクティブ層やビジネスパーソンの間で注目を集めている乗馬。
乗馬には、動物と行うスポーツだからこそ得られる無二の楽しさや喜びがある。
まだ乗馬を体験したことのない方でも気軽にチャレンジできる、乗馬の魅力を紹介する。

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動物がパートナーのスポーツ
生涯にわたって楽しめる乗馬の魅力とは?

乗馬は日本各地にある乗馬クラブで体験できる。総合馬術競技の元オリンピアンで、現在は八王子乗馬倶楽部で選手として活動しながら若手の育成にも力を注ぐ細野茂之さんに乗馬の魅力を聞いた。

PROFILE

細野茂之さん
八王子乗馬倶楽部 倶楽部長 細野茂之さん

1996年のアトランタオリンピック、2000年のシドニーオリンピックに日本代表選手として総合馬術に出場。2008年の北京オリンピックではコーチとして、2016年のリオオリンピックと2020年の東京オリンピックでは監督として参加。現在は八王子乗馬倶楽部の倶楽部長兼プレイングマネジャーとして、選手の育成にも取り組んでいる。

癒し効果で心をリフレッシュ 筋力アップ、姿勢改善にも

「乗馬は動物と一緒に行う数少ないスポーツです。馬は見た目が美しく、性格もおとなしいので、触れ合うことで心が癒されますよね。ストレスの多い時代ですから、まさにうってつけの趣味では」と細野茂之さんは乗馬を勧める。

「最初は馬とのコミュニケーションに戸惑うと思いますが、人が寄り添うと馬も寄り添ってきて、だんだんと互いへの理解が深まります。乗馬上達のポイントは馬といかに仲良くなるかです。その秘訣は、馬を好きになること。そしてスキンシップを大切にすることです」

馬の機嫌や調子を読み取りながら、馬を巧みに操るのが乗馬の難しさであり、醍醐味だ。

「乗馬は運動が苦手な方でも楽しめますし、からだを鍛えることができます。揺れている馬の上で正しい姿勢を保つことが必要になるので、自然と体幹が強くなり、背筋がスッと伸びた美しい姿勢を手に入れることができます。また、全身の筋肉を使いながらバランスを取り続けるため、絶好の有酸素運動にもなります。インナーマッスルや腹筋も鍛えられて、筋力アップはもちろん、おなか周りのシェイプアップ効果もあります」

1回の乗馬(40〜50分)で、200〜300キロカロリーを消費するともいわれており、運動効果は相当に高い。さらに、馬の動きや感情を瞬時に読み取る集中力、馬の状態に応じた臨機応変な対応力など、乗馬では日常生活はもちろん、ビジネスにも役立つコミュニケーション力が養われるのだ。

日本で楽しめる乗馬スタイル

日本を含めて世界的な主流は「ブリティッシュ」と「ウエスタン」だ。まずはこの二つの違いをチェックしよう。

  • ブリティッシュスタイル

    ブリティッシュスタイル

    日本で行われている乗馬の約75%がこのスタイル。英国貴族の趣味・たしなみとして誕生し、競技会などではジャケットや襟付きシャツなど、エレガントな服装で騎乗するのがマナー。手綱を通した馬への指示にも美しさや正確さが求められる。

  • ウエスタンスタイル

    ウエスタンスタイル

    アメリカの西部開拓時代のカウボーイがベースになっている。乗りやすさや動きやすさを重視した服装で騎乗する。広大な土地で牛を追うことを想定し、手綱は作業を妨げないように片手でコントロールできるようになっている。

生涯スポーツとして、多様な楽しみ方が魅力

乗馬は、動物と行う唯一の競技「馬術」としてオリンピックの正式種目にもなっているスポーツだ。

「私は3歳頃から馬に乗り始めて、中学生で本格的に競技を始めました。オリンピック出場のために練習に明け暮れていた選手時代はもちろんですが、55歳になった今でも、馬に乗ると新しい発見や気づきがあって、成長を感じることができます。私が所属する八王子乗馬倶楽部では、仕事や家事の合間のリフレッシュで利用される方や、さらには競技会出場を目指されている方など、皆さんさまざまな目的で乗馬を楽しまれています。基本的に、馬装や馬具の手入れなどはスタッフが行いますので、お忙しい方でも無理なく自分のペースで乗馬をお楽しみいただけます。スポーツとして技術の向上を目指すのはもちろん、風を切って走る爽快感や、馬との一体感を楽しんだり、お気に入りの馬との時間をゆっくりと楽しんだりと、年齢も性別も関係なく、生涯にわたって楽しめるのが乗馬の魅力です。初めての人には手軽に楽しめる体験乗馬がありますので、ぜひ一度、乗馬の楽しさを体験してみてください」
※鞍やプロテクターなどの道具を馬に装着すること

オリンピックで行われる馬術競技

オリンピックの馬術競技はブリティッシュスタイルで行われ、下記の3種目がある。
「馬術は馬との“ミックスダブルス”。人と馬が信頼し合い、お互いを助け合いながら演技や飛越を行う競技です」と細野さん。

  • 馬場馬術

    常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)の3種類の歩き方を基本に、演技の正確さや美しさを競う。選手が馬に対して小さく合図を送り、馬が合図に合わせて動く、人馬一体の演技が見どころ。

  • 障害馬術

    アリーナ内に設置された障害物を飛び越えながら、規定の時間内にゴールを目指す。高さ最大165cmの障害物や奥行き最大200cmに及ぶ障害物もあり、踏切のタイミングや馬の適切な誘導、歩幅のコントロールなどが鍵となる。

  • 総合馬術

    トライアスロンのように、馬場馬術・クロスカントリー・障害馬術の3種目を全て同じ馬で行う。クロスカントリーは自然の中に設置された障害物のある約6kmのコースを約10分で駆け抜ける、スピード感あふれる競技。

乗馬クラブで馬に乗る

乗馬倶楽部

初めて乗馬を体験するなら、しっかり指導が受けられる乗馬クラブでの体験乗馬がおすすめだ。体験後、興味が湧いたら、クラブメンバーに!レッスンを重ねれば憧れのライセンス取得も可能だ。

乗馬を始めるならまずは体験乗馬へ

体験乗馬は騎乗時間30分ほどで約4,000〜5,000円程度で、多くの乗馬クラブが実施している。「必要な道具は乗馬クラブが貸し出していることが多いので、スポーツウエアや長ズボンなどの動きやすい服装と、グローブ代わりの軍手を持参すればOKです」と細野さん。

体験乗馬は、まず馬の乗り降りから始まる。「乗馬クラブでは、経験豊富な指導員が馬の接し方や乗り方・降り方を丁寧に教えてくれます。基本姿勢は耳、肩、腰、くるぶしが地面に対して垂直に一直線になるように背筋をばして座るのがポイントです。この時、前後左右に対してバランス良く重心が保てていると、馬も気持ち良く歩いてくれます」

競技会や技能認定に挑戦しさらに乗馬の奥深さを実感

体験乗馬でその魅力にはまって、もっと上手くなりたいと思う人は多い。乗馬クラブが独自に行う部内競技会や、全国乗馬倶楽部振興協会が制定する技能認定などは、スキルアップの良い目標になる。例えば技能認定の5級なら、10回ほど騎乗して経験を積めば挑戦が可能だ。

「乗馬はからだや心、脳にも良い〝アンチエイジング〞のスポーツです」乗馬未経験の人は今からでも遅くない。思い立ったが吉日だ。

スキルアップを目指してライセンス取得にチャレンジ

乗馬技能認定は、全国乗馬倶楽部振興協会によって定められた全国統一の民間ライセンスだ。5級から1級まであり、実技と筆記の両試験をクリアすることでライセンスを取得できる。級が上がるにつれ難易度も上がり、3級以上は「馬場」「障害」「エンデュランス(長距離を野外走行する競技)」に分かれ、より専門的な内容となる。1級を取得すると日本馬術連盟が認定する騎乗者資格B級に移行可能。この資格を取得すると、連盟主催の公認大会に出場できる。また、連盟のA級を取得すると国際馬術連盟(FEI)公認の国際競技会に出場が可能になる。

乗馬技能認定級

  • ライセンス取得

  • ライセンス取得

全国乗馬倶楽部振興協会の乗馬技能認定(ブリティッシュ5~3級)における級別の実技の例

  • 5級

    • 乗馬、下馬ができる

    • 停止及び常歩(なみあし。最も速度が遅い歩法)で正しい姿勢がとれる

    • 小区画の馬場で軽速歩(けいはやあし。対角線上の脚が交互に二拍子のリズムで動く歩法)ができる

    • 内方開き手綱※1の操作ができる

    • など

  • 4級

    • 常歩で巻き乗り※2、半巻き※3を含む回転運動。速歩で90°の方向変換及び斜め手前変換

    • 停止-常歩-速歩-常歩-停止が概ねスムーズにできる

    • 軽速歩の手前が理解できる

    • 速歩運動にて正しい姿勢がとれ、手綱・脚の操作が概ねでき、駈歩(かけあし。常歩や速歩よりスピード感のある歩法)の発進、維持ができる

    • など

  • 3級

    • 5級、4級の運動を含め、駈歩の発進、維持。歩度の伸縮が概ねでき、巻き乗り、半巻きができる

    • 駈歩の手前が理解でき、常歩、速歩を入れての手前の変換ができる。扶助操作の適否

    • 地上横木の通過

    • など

※1:手綱を内方に開き、馬に方向を指示すること※2:歩く道筋上から円を描き、元の道筋に戻ること※3:半円を描いて向きを変え、反対方向に進むこと

ワンステップアップ!
乗馬が楽しくなり、本格的に始めたくなったら…

馬に慣れ、乗るのが楽しくなってきたら、自分専用の乗馬用品が欲しくなるに違いない。まずは「ヘルメット・乗馬用ズボン(キュロット)・ブーツの3点セットの他、グローブも購入すると良いですよ」と細野さん

※写真・価格参考:乗馬サロンピアッフェ(https://www.piaffer.net/

乗馬用品

            

マイホースで、さらに充実した乗馬ライフを

乗馬をもっと楽しみたいという人には、クラブに預託料を支払って、自分だけのマイホース(以下 自馬)を持つことも可能だ。

自馬を持つメリットは、騎乗の度に同じ馬に乗れ、一頭の馬と深い関係を築けること。馬の性格や癖をよく知ることで愛着も湧くため、人も馬も安心して騎乗ができるようになり、上達スピードもさらにアップするだろう。

飼料代や飼育代、装蹄代などを含めた一ヶ月当たりの預託料は15~20万円ほど(馬の購入費を除く)。他の会員と共同で所有するシステムもある。購入方法は市場やオークションなどもあるが、相性や技量に合った馬を選択するには日頃指導してくれるインストラクターのアドバイスが役に立つ。

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乗馬クラブを探すなら

全国乗馬倶楽部振興協会のホームページでは、協会に登録している全国の乗馬クラブの情報が閲覧できる。ブリティッシュやウエスタン、外乗など、チャレンジしてみたい条件に絞って検索を。

全国乗馬倶楽部振興協会のホームページ

公益社団法人 全国乗馬倶楽部振興協会

八王子乗馬倶楽部

細野さんが倶楽部長を務める「八王子乗馬倶楽部」。今年で54年目を迎え、初心者向けの体験乗馬をはじめ、馬場馬術・障害馬術・総合馬術の全てのレッスンが受けられる。都内で唯一野外コースがあるのも特長だ。

八王子乗馬倶楽部

八王子乗馬倶楽部

住所: 東京都八王子市丹木町1-501
時間: 9:00~18:00
体験乗馬: 料金8,800円(税込み、2回コース)予約は電話(042-691-1915)から※70歳まで

※2024年9月3日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

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