ふぐ・日本料理 喜楽庵
老舗の料亭だからこそ体験できる特別な時間がある。非日常を味わいに、料亭を巡る旅に出かけよう。
日本は、創業100年以上の企業数で世界一を誇る老舗大国だ。長きにわたって大切に受け継がれてきた数々のこだわりと、時代ごとに移り変わる顧客のニーズをしっかりと掴んで対応する柔軟性ーーー。そんな老舗ならではの伝統や心遣いを最も身近に感じることができる場所の一つに、料亭が挙げられる。
日本各地に数ある料亭のうち、創業100年を超える老舗料亭は、とりわけ非日常の特別な体験をもたらしてくれる存在だ。年月を重ねてきたからこそ醸し出される重厚な場の雰囲気に浸りながら、その土地土地の食材を使った珠玉の料理や酒、そして代々継承され磨かれてきたもてなしの心を堪能する。慌ただしい外界とは違った時の流れに身を置いて、その店でしか味わえない、貴重で贅沢なひと時を心ゆくまで楽しみたい。
27の料亭が守り続ける文化のともしび〜百年料亭ネットワークとは〜
「百年料亭ネットワーク」という名前をご存じだろうか。それは、『建物及び周辺施設等が百年以上の歴史』を持つ、日本を代表する複数の料亭によるプロジェクト。伝統的な日本料理を守り、それぞれの家風やしきたりを継承する地域の老舗同士が交流することで、国内外からの誘客を促進し、地方都市の活性化に資することを目的としている。現在、参画している全国27軒の料亭では、伝統のともしびを大切に守り続けながらも、今の時代に合わせた最上級のもてなしで、極上の時間を提供している。今回はその一部を紹介しよう。
※各料亭の料理写真は一例です。また、予約や提供の人数など、施設の利用や注文に条件があるものもあります。写真以外のメニューも含め、詳細はHPやお電話などでご確認ください。
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- 料亭 富士見館(青森県黒石市)
- 料亭 石川(秋田県湯沢市)
- 料亭 京極(岩手県盛岡市)
- 懐石料理 東洋館(宮城県仙台市)
- 四山楼(山形県山形市)
- 料亭 亀松閣(山形県山形市)
- 米沢牛・山懐料理 吉亭(山形県米沢市)
- 日本料理 行形亭(新潟県新潟市)
- 料亭 鍋茶屋(新潟県新潟市)
- 百年料亭 宇喜世(新潟県上越市)
- 磯料理 松月(富山県富山市)
- 割烹 松本館(長野県松本市)
- 料亭 明月楼(石川県加賀市)
- 料亭 山屋(埼玉県川越市)
- 伝統料亭 萬松館(岐阜県岐阜市)
- ぎふ水琴亭(岐阜県岐阜市)
- 郷土料理 松正(岐阜県多治見市)
- 千歳楼(岐阜県養老町)
- 望洲楼(愛知県半田市)
- 御料理 伊勢幾(滋賀県彦根市)
- 料亭 公楽(香川県宇多津町)
- 得月楼(高知県高知市)
- 料亭 金鍋(福岡県北九州市)
- 日本料理 筑紫亭(大分県中津市)
- ふぐ・日本料理 喜楽庵(大分県臼杵市)
- 料亭 一力(長崎県長崎市)
- 料亭 田吾作(熊本県熊本市)
百年料亭ネットワークhttps://100nen.info
宮城県仙台市懐石料理 東洋館
社の都の絶景と季節の料理を目と舌で味わう
仙台市内から広瀬川を隔てた丘陵地にある「東洋館」。明治40年創業で、当時のままの木造建築が、歴史の重みを伝える重厚さとあたたかな雰囲気を醸し出している。少人数用から大広間まで、7つの部屋を有しており、どの部屋からも市内の絶景を一望できるのが特徴。春には桜、夏には青々とした緑、秋には紅葉、冬には雪景色……と、どの時季に訪れても、季節を象徴するような美しい風景が出迎えてくれる。
そんな眺望とともに味わえるのが、目にも美しい懐石料理。新鮮な魚介類を中心に、旬の食材を楽しむことができる。詩人・土井晩翠ら文人墨客にも愛されてきた東洋館。当時と変わらぬ時が流れるやすらぎの空間が、慌ただしい日常の喧騒を忘れさせてくれるだろう。
懐石料理 東洋館
住所: | 宮城県仙台市太白区向山1-1-16 |
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電話番号: | 022-222-7019 |
営業時間: | 昼 11:30~15:00、夜 17:00~21:00 |
定休日: | 月曜日(祝日の場合は営業し、翌火曜日休業) |
山形県山形市料亭 亀松閣
明治天皇ゆかりの料亭で極上の体験を
杜の中にひっそりと佇む「亀松閣」。ここは、明治14年、明治天皇が山形へ行幸される際の行在所として、初代山形県令・三島通庸(みちつね)によって建てられた建物が、民間に払い下げられ誕生した、由緒ある料亭だ。
門へと続く石畳に一歩足を踏み出すと、もうそこは日常から離れた特別な空間。建物内にも、明治天皇がお座りになられた玉座の間がある「あやめの間」など、当時の面影を今に伝える貴重な手がかりが大切に残されている。
「お越しいただく全てのお客様をお料理で笑顔に」という思いを込めて供される料理は、調味料や天然の食材にこだわり、地元の美味が豊富に使われている。歴史ある建物で、地酒やワインと味わう山形の旬。ほかでは体験できない贅沢な時間だ。
料亭 亀松閣
住所: | 山形県山形市薬師町2-8-81 |
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電話番号: | 023-631-3644 |
営業時間: | 昼 11:30~14:30、夜 16:30~22:00 |
定休日: | 水曜日 |
山形県米沢市米沢牛・山懐料理 吉亭
古き良き時代の風を感じながら米沢牛を堪能
江戸時代末期に、「津の国屋吉貞(よしてい)」の屋号で絹織物織元を営んでいたのが始まりだという「吉亭」。映画『忍ぶ川』(熊井啓監督)のロケ地としても有名で、大正期に建てられた本屋は国の有形文化財に登録されている。また、建物を囲む庭は、米沢市内では最も古い庭園の一つに数えられており、米沢の昔ながらの四季の風情を堪能することができる。
この店を訪れたらぜひ味わいたいのが、米沢を代表する食材である米沢牛だ。厳選した牛肉を使って供される、すき焼きやしゃぶしゃぶ。そして吉亭だけの醍醐味である、懐石料理に準じる郷土料理「山懐料理」。大正ロマンを感じながら、最上級の地の食材に舌鼓を打つ。古き良き時代の米沢を、ぜひ吉亭で体感してほしい。
米沢牛・山懐料理 吉亭
住所: | 山形県米沢市門東町1-3-46 |
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電話番号: | 0238-23-1128 |
営業時間: | 昼 11:30~15:00(L.O.13:30)、夜 17:30~21:00(L.O.19:30) |
定休日: | 水曜日 |
石川県加賀市料亭 明月楼
自然あふれる温泉地の老舗で絶品の鰻料理を
松尾芭蕉も愛したという、北陸・加賀の山中温泉。自然豊かなこの地に位置するのが、料亭「明月楼」だ。大正時代に川魚料理店として創業。当時は眼下の渓谷で釣り上げた鮎や岩魚などの川魚をその場で調理し、提供していたそうだ。その頃の名残りが、現在店の名物として供されている鰻。今は厳選した国産鰻を湧き水が入った生簀で活かし、その都度捌いて丼や懐石料理に仕立て、訪れる人たちに口福をもたらしている。
部屋は全てが川に面した座敷で、広間を含めて全5室。それぞれが異なった趣を醸し出しているので、用途や人数に合わせて使い分けることができる。川のせせらぎに耳を傾けながら、絶品の料理を味わう時間は、まさに贅沢そのもの。至福のひと時を全身で体感したい。
料亭 明月楼
住所: | 石川県加賀市山中温泉下谷町ロ1-1 |
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電話番号: | 0761-78-0103 |
営業時間: | 昼 11:00~14:00、夜 17:00~22:00 |
定休日: | 水曜日 |
高知県高知市料亭得月楼
高知を代表する料亭で楽しむ伝統の味
高知の観光スポット「はりまや橋」のたもとに佇む料亭「得月楼」。明治3年の創業以来、その歴史と伝統を受け継いできた。また、宮尾登美子の小説『陽暉楼』の舞台としても知られている。そんな高知を代表する老舗が最も賑わうのが、毎年1月中旬から3月中旬ごろにかけて咲く鉢植えの梅(=盆梅)を座敷に並べる「盆梅展」の時期。初代店主が蒐集を始め、代々の店主が大切に育ててきた盆梅の数々を目当てに、全国から大勢の人が訪れるという。
もちろん、得月楼の特長は梅だけにあらず。初代板前より受け継いだ技が光る「土佐会席」や郷土料理である「皿鉢(さわち)料理」といった土佐ならではの味に、幕末の著名な庭師の手による庭園など、そのもてなしの心は一年を通して堪能できる。
料亭 得月楼
住所: | 高知県高知市南はりまや町1-17-3 |
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電話番号: | 088-882-0101 |
営業時間: | 昼 11:00~14:00(L.O. 13:30)、夜 17:00~22:00 |
大分県臼杵市ふぐ・日本料理 喜楽庵
当主自ら腕を振るう極上の料理
明治11年創業の「喜楽庵」。豊後水道の身の引き締まった魚や地元の旬の野菜を使った懐石料理、新鮮なふぐ料理を楽しむことができる、臼杵(うすき)を代表する老舗である。初代より料理屋を営んできたこの店では代々当主が自ら包丁を握っており、現在は5代目が自慢の腕を振るっている。
喜楽庵では、ふぐと並ぶ名物として本膳料理が挙げられる。これは、2代目当主が臼杵藩主の料理番を務めた廣瀬家に上がって藩の本膳料理(武家が客をもてなすための料理。日本料理の原型ともいわれる)を学び、伝承を許されたもの。本膳料理が味わえる店は日本に数軒のみだという。大正1年建造の歴史ある建物で味わう、職人の技。臼杵を訪れる際には、必ず立ち寄りたい名店だ。
ふぐ・日本料理 喜楽庵
住所: | 大分県臼杵市城南9組 |
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電話番号: | 0972-63-8855 |
営業時間: | 昼 11:30~15:00、夜 17:00~22:00 |
定休日: | 水曜日(祝日の場合は営業) |
長崎県長崎市料亭 一力
幕末の息吹を感じながら楽しむ長崎伝統の味
文化10年に長崎の街で産声を上げた料亭「一力」。幕末期には、全国からこの地に集まってきた志士たちも通ったといわれる、歴史ある名店だ。この店を語る上で欠かせないのが、長崎名物「卓袱(しっぽく)料理」。当時、日本で唯一海外に開かれていた長崎にはさまざまな文化がもたらされ、それらが日本の文化と融合し、独自の〝和華蘭〞文化が花開いた。卓袱料理も、和食と中華、そして阿蘭陀(オランダ)など西欧の食の融合によって生まれたという。一力では、この長崎を代表する伝統の料理を正統派の味と技で今に伝えている。
激動の時代を見つめ続けてきた一力。今も、建物内にはそこかしこにあの頃の面影が残されている。ゆるやかな時が流れる空間で、歴史のドラマに思いを馳せてみてはいかがだろうか。