その後の人生を決めるといっても過言ではない。早めの対策で健康維持を目指そう。
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監修いただいたのは
クリントエグゼクリニック院長
縄手祥平先生
山梨大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院 脳神経外科助教、医療法人社団穆心会 理事長を経て、現職。脳神経外科のスペシャリストとして、日本最高峰の技術を日々、提供している。日本脳神経外科学会専門医。日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会、日本脳卒中学会所属。
40代のチェックポイント
40代は様々な病気が顕在化してくる年代。その病気の多くが生活習慣病に起因するため、基礎代謝量が下がってくるこの年代にこそ、生活を整えたい。病気の罹患率がさらに増える50代以降の健康を見据えて、今こそ行動しよう。
40代で注意したい病気__1
40代のがん
生活習慣の見直しと定期的な検診でがんを遠ざける
がんという病気が身近になってくるこの年代。がんの罹患率は40代を境に上昇し、年齢を重ねるごとに上がっていく。そんな40代で注意したいのが、胃がん、大腸がん、肝臓がんなどの消化器系のがんだ。がんは防ぐのが難しい病気ではあるが、生活習慣病にならないことが予防の重要な鍵となることが明らかになっている。またがん検診の受診は、早期発見につながる欠かせない要素。40代のうちから定期的な受診を習慣付けたい。
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出典:公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計2024」より2019年のデータ
人口10万人に対する、年齢別のがん罹患率。女性と比べると男性の罹患率は高く、40代を境に上昇していくことがよく分かる。この年代のがんに対する備えは重要だ
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糖尿病
様々な病気の「元凶」。基礎代謝が下がる今こそ注意を
血糖値を下げるインスリンというホルモンの不足などにより、高血糖状態となる病気。予備軍も含めて、40代から急増する。この状態が長く続くと脳梗塞、心筋梗塞、失明など様々な合併症を引き起こすため、注意したい病気だ。糖尿病の原因は多くの場合、肥満にあるといわれており、基礎代謝が下がる40代だからこそ、生活習慣を整えることが必要となる。初期症状がほとんど表れないため、健康診断を定期的に受診し、血糖値をチェックしよう。
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出典:厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告」
糖尿病が強く疑われる人の割合は、男性の方が高く、さらに40代、50代で大幅に増加していく。40代で生活習慣の見直しができるかが大きな鍵となりそうだ
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高血圧症
動脈硬化を進行させ命にかかわる病気に発展
一般的には診察室で計測した収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg(家庭で計測した場合は135/85mmHg)以上の、高血圧な状態を指す。原因は一般的に加齢、喫煙、肥満、ホルモンの異常など。高血圧状態が直接的に症状を引き起こすことはないが、この状態が続くと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳出血など重篤な疾患につながる可能性が高まる。血圧は加齢とともに高くなる傾向にあるため、検診や自宅での血圧値測定により、その動向に注視しておきたい。
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出典:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編. 「高血圧治療ガイドライン 2019」
一般的に病院で計測した方が血圧が上がる傾向にあるため、血圧値には病院での数値を指す診察室血圧と、家庭での数値を示す家庭血圧の2つの基準がある
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脂質異常症
肥満や運動不足が原因。BMIや腹囲の数値に注目
血液中に含まれるコレステロールや中性脂肪などの脂質が、基準値よりも多い状態を指す。肥満や運動不足などにより、脂質の吸収と消費のバランスが崩れることが原因で引き起こされる病気のため、肥満度を表すBMIや腹囲の数値などには注意したい。直接的な症状は表れにくい病気だが、この状態が続けば動脈硬化を引き起こし、狭心症や心筋梗塞などの重篤な病気につながることもある。食事療法、運動療法、薬物療法を主軸にした治療をしっかり行おう。
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更年期障害
ホルモン量の変化による不調。男性への影響も明らかに
性腺ホルモンの低下によっておこる心身の不調で、ホルモンの働きに変化が起きる40代から顕著になることが多い。これまで女性の病気だとされてきたが、近年では男性にも影響があることが分かってきている。症状は体のだるさやほてりなどのほか、不安を強く感じる、やる気が低下するなど主に精神的症状として表れやすいのが特徴。ホルモン分泌を増やすことはできないが、ホルモンの維持に一定の効果があるといわれている、生活習慣を整えることが重要だ。
50代のチェックポイント
脳や心臓系の病気、がんなど、命の危機にもつながりかねない病気が音もなく近づいてくる、この年代。早期発見、早期治療のために定期的な検診を受けること、体調管理への意識をより高めることが大切なポイントとなる。
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脳卒中
死亡率が高く後遺症にもつながる危険な病気
脳の血管が詰まったり、破れたりすることにより、脳が障害を起こすこの病気。がん、心臓病に次いで日本人の死因第3位にあげられる。また仮に命を取り留めたとしても麻痺や失語症などの後遺症が残ることもあり、非常に危険な病気として注意が必要だろう。脳卒中は高血圧、糖尿病、脂質異常症など、血管へ悪影響を及ぼす生活習慣病から引き起こされることが多いため、日頃から生活習慣の管理を徹底し、予防意識を高めていきたい。
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虚血性心疾患
突然始まり、継続する胸の痛みに注意
心臓に血液を送る冠動脈(血管)が弱まったりすることによって起こる病気の総称。冠動脈が細くなって心臓に血液を送れない状態を狭心症、冠動脈が閉塞し、心臓に全く血液が流れなくなる状態を心筋梗塞という。重症の場合は命にも関わるため、胸の痛み、冷や汗、吐き気などが突然現れ、持続するようであれば医療機関を受診する必要がある。病気の危険因子となる動脈硬化を防ぐため定期的な健康診断で血圧と脂質異常症、糖尿病の数値をチェックしよう。
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出典:厚生労働省「平成29年 患者調査」
40代から徐々に罹患率が高くなる虚血性心疾患は、50代の罹患率が40代の2.5倍にも及ぶ。命の危機と隣り合わせな病気のため、早めの備えが重要となる
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50代のがん
死亡原因の第1位。定期的な検診を習慣に
年齢を重ねるごとに発症リスクが高くなる、がん。50代はその境界線ともいえる年代だ。特に注意したいのが、男性のがん死亡率の中で群を抜いている肺がん。次いで膵臓、結腸、肝臓がんだろう。どのがんも自覚症状が出にくい疾患であり、症状が出たときには進行している可能性が高いため、定期的ながん検診で早期発見を目指そう。またがん全般の予防には、禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、運動などが有効なため、積極的に取り入れたい。
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出典:公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計2024」より2022年のデータ
年齢別のがん死亡率。死亡率の上昇が始まるのがちょうど50代であり、その後は年齢とともに死亡率が上昇していく。この危険な病気には、常に備えておきたい
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前立腺肥大症
排尿障害をきたす男性特有の病気
前立腺が肥大化し尿道や膀胱を圧迫する男性の病気で、頻尿や残尿など様々な排尿障害をきたす。命にかかわる病気ではないが、QOLを著しく低下させる病気のため、注意が必要。原因は解明されていないが、加齢に伴う男性ホルモンの減少や肥満、高血圧などが関与するといわれており、食生活の見直しや運動が大切だ。軽度であれば薬物療法で対処できるが、悪化してしまうと外科的手術が必要に。排尿に違和感を覚えたらすぐに、病院を受診したい。
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白内障
加齢とともにほぼ全員が罹患。侮れない目のかすみ
光を集めてピントを合わせる働きを持つ、眼の中の水晶体がタンパク質の変性によって濁り、視力が低下する病気。症状は様々だが、目のかすみが主だ。加齢によって眼内に老廃物が蓄積することが原因で起こるため、年代が上がるほど罹患率が増え、50代では約40%、80代ではほぼ全員が罹患するという。一方、点眼や内服薬、重度でも手術によって視力回復が見込めるため過度に恐れる必要はない。気になる症状があれば、病院を受診しよう。
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五十肩(肩関節周囲炎)
加齢とともに魔の手が迫る肩の関節痛
肩甲骨と上腕骨をつなぐ肩関節に痛みが生じ、肩を上げたり、水平に保ったりすることが難しくなる関節痛の一種で正式な疾患名は肩関節周囲炎。40代は四十肩、 50代は五十肩と発症時期によって呼び方が異なる。原因は肩関節にある腱板と関節包という組織が、加齢に伴って炎症をおこすことにあるといわれている。ほとんどの場合、時間経過によって改善するため、悪化させないケアが大切で、患部のストレッチや入浴による血行促進などが効果的だ。
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アルツハイマー型認知症
生活における困難をもたらす不可逆性の脳疾患
認知症の一種。不可逆的な進行で記憶力や思考能力がゆっくりと障害され、最終的には日常生活を送る能力さえも失いかねない脳疾患。初期症状として記憶障害が現れることが多いが加齢による衰えもあるため兆候に気づきにくく、発覚時には周囲のサポートが不可欠となる場合も。本格的に発症率が増える60代よりも前に発症する若年性認知症となるケースもあるので、前兆がどう表れるかなどの知識を身につけ、予防意識を高めることが重要だ。