TOP MAGAZINE特集 一生に一度は見ておきたい 日本の夏祭り

一生に一度は見ておきたい
日本の夏祭り

八百万の神信仰を持つ日本では、古来神々に五穀豊穣、健康などを祈るさまざまな儀式(祀り=祭り)が行われてきた。
特に台風や害虫、疫病の増える夏は、盆行事と合わせて多くの祭りが行われ、各地の歴史や風土に基づき山車や踊りなど多様な形で今に伝承されている。
夏は日本の伝統文化、信仰が息づく祭りの季節。その魅力を改めて体感しよう。

Text_ENO.

山車

山車は、〝神様が降りてくる依り代〞。神様が見つけやすいよう、派手に装飾したり、巨大化したりと地域ごとに進化を遂げた。形状や場所によって、「山」、「鉾(ほこ)」、「屋台」と呼び名が異なるのも山車の特徴だ。

祇園祭/京都

祇園祭

稚児が乗る長刀鉾の前祭巡行 ©JAPAN IMAGES

平安時代から続く夏祭りのルーツ

7月1日から1ヶ月かけて行われる京都の夏の風物詩。“コンチキチン、コンチキチン”のお囃子(はやし)とともに京の街を練り歩く山車は山鉾と呼ばれ、絢爛豪華な飾りは西陣織のほか舶来の織物などもある。美しく装飾された山鉾は国の重要有形民俗文化財で、「動く美術館」と評される。

由来

平安時代に京都で流行した疫病を鎮めるために行った祇園御霊会が始まりといわれる。鉾に悪霊を下ろすことで災いを防ごうとし、移動できる鉾が現在の山鉾となった。この祭りが全国に広まり各地の夏祭りのルーツになったともいわれる。

Check!

17日と24日の山鉾巡行は必見。「長刀(なぎなた)鉾」をはじめ、祇園祭らしい数々の山鉾に見ほれる。独特な音色の祇園囃子は山鉾によって少しずつ異なるので、聴き比べて楽しむのもおすすめだ。

祇園祭

開催日: 2025年7月1日(火)~31日(木)
会 場: 京都府京都市東山区祇園町北側625 八坂神社ほか

戸畑祇園大山笠/福岡

戸畑祇園大山笠

夜の提灯大山笠 ©戸畑祇園大山笠振興会

心沸き立つ「ヨイトサ、ヨイトサ」の掛け声

見るべきは、昼と夜とで姿を変える、巨大な「大山笠」。昼間は幟(のぼり)を立てる幟大山笠が、夜間は309個の提灯が灯る提灯大山笠になる。華やかな昼の装飾から一変、光のピラミッドとなった提灯大山笠が、「ヨイトサ、ヨイトサ」と力強い掛け声に合わせて進んでいく姿は、まさに圧巻だ。

由来

享和2(1802)年村内に疫病が蔓延し、人々を非常に苦しめたため、ご祭神・須賀大神に平癒祈願を行ったところ、ようやく終息した。そこでお礼のため、翌年7月に山笠を作り神社に奉納したのが始まりといわれる。

Check!

26日(土)に戸畑区役所前で行われる「戸畑祇園大山笠競演会」では、各地域の大山笠、小若山笠が集結する。クライマックスの提灯大山笠自由競演では、追い抜きありで豪快に競う山笠の迫力を堪能できる。

戸畑祇園大山笠

開催日: 2025年7月25日(金)~27日(日)戸畑祇園大山笠競演会は26日(土)18:30から
会 場: 福岡県北九州市戸畑区千防1-1-1 戸畑区役所前、浅生一号公園周辺

くわな石取祭/三重

本楽春日神社前「渡祭」

本楽春日神社前「渡祭」 ©桑名市観光協会

鉦(かね)や太鼓で〝日本一やかましい祭り〞

石取祭の山車を祭車(さいしゃ)という。祭車43台が一堂に会する、その迫力はすさまじい。後部に付けられた鉦や太鼓を一斉に叩くことから「日本一やかましい祭り」といわれる。試楽日(しがくび/本楽の前日)の午前0時、一斉に「叩き出し」が行われる瞬間は、まさに轟音の渦だ。

由来

桑名市の南部を流れる町屋川の栗石を、桑名宗社(春日神社)の祭礼に合わせ奉納していた江戸時代の神事が独立して、今の形に発展したといわれる。石には霊が宿るとされ、その「石を取る」ことが祭名の由来である。

Check!

優美な石取祭車は数千点の部材からなる。祭車が整列している昼間の時間帯に彫刻や装飾品をじっくり鑑賞したい。日が落ちてからは、灯火で夜空を焦がしつつ延々と巡行する姿が一幅の絵のようだ。

くわな石取祭

開催日: 2025年8月2日(土)試楽、3日(日)本楽
会 場: 三重県桑名市本町46 桑名宗社(春日神社)

ねぶた

ねぶたの発生には諸説あるが、奈良時代に中国から渡来した「七夕祭」と、古くから津軽にあった精霊送り、人形送り、虫送りなどの行事が一体化し、紙と竹、ローソクの普及により灯籠が作られ、それが変化して人形や扇の形のねぶたになったと考えられている。

青森ねぶた祭/青森

青森ねぶた祭

令和6年度ねぶた大賞(制作/北村麻子) ©(公社)青森観光コンベンション協会

東北の夏を彩る迫力のねぶた

巨大なねぶたは神話や歴史などをモチーフにし、表情、眉毛の一本一本に至るまで細かく表現されていて、その美しさはまさに芸術だ。闇夜に浮かぶねぶたの姿は幻想的で、声を失うほど。ねぶたの周囲で「ラッセラー、ラッセラー」とにぎやかに踊る跳人(はねと)たちが祭りを盛り上げる。

由来

7月7日の七夕祭は、穢(けが)れを川や海に流す禊(みぞぎ)の行事として、「ねぶた」と呼ばれる灯籠を流して無病息災を祈った。これが「ねぶた流し」と呼ばれ、現在の青森ねぶた祭の海上運行に表れている。

Check!

跳人は誰でも当日に飛び入り参加できる。跳人の衣装(正装)を着ていること、勝手な鳴り物などを持ち込まないことなどが条件。予約や登録は不要。衣装は地元の百貨店等で購入、レンタル可能だ。※詳細はHPで

青森ねぶた祭

開催日: 2025年8月2日(土)~7日(木)
会 場: 青森県青森市中心部(JR青森駅付近 東側)

※有料観覧席あり(詳細は上記サイト参照)

火と水

火は、万物の活力の源を表す。一方で、水は古くからの崇拝の対象である滝や川、海の本体であって、生命の源とされる。古代から火と水は穢れを取り払う霊力があると信じられ、火祭り、水祭りが各地で行われている。

那智の扇祭り/和歌山

那智の扇祭り

扇神輿を迎える大松明 ©(公社)和歌山県観光連盟

大松明の炎が参道に乱舞する

年に一度の里帰りとして、12柱の熊野の神々を那智の滝の姿を表した高さ約6mの「扇神輿」12体に移し、巡幸する。参道では白装束の男たちが重さ約50kgの大松明を抱え、石段を駆けめぐる。燃え盛る大松明の火が乱舞し扇神輿を迎える様は、勇壮かつ神聖。「那智の火祭り」とも呼ばれるゆえんだ。

由来

神武天皇は那智御滝を神として尊び崇め、熊野12柱の神々を併せて祀った。仁徳天皇5(317)年、那智山中腹の現在地に造られた社殿にその神々をお遷しした故事から始まった神事といわれる。

Check!

午前に熊野那智大社境内で奉納される「那智の田楽」は、田楽舞を創成期の形そのままに伝えている、全国的にも数少ない例で、国の重要無形民俗文化財、ユネスコの無形文化遺産である。

那智の扇祭り

開催日: 2025年7月14日(月)
会 場: 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1 熊野那智大社ほか

天神祭/大阪

天神祭

勇壮な船渡御 写真提供 大阪天満宮

大阪の空を染める“火と水の祭典”

陸渡御(りくとぎょ)は、御鳳輦(ごほうれん)、牛車、鉾などの大行列が大阪天満宮から天神橋北詰めの乗船場まで進む。夜には、大川(旧淀川)に約100隻の船が行き交う船渡御(ふなとぎょ)が行われ、夜空を彩る花火、川面に映る篝火(かがりび)から、“火と水の祭典”とも呼ばれる。

由来

天暦5(951)年に天満宮のあった浜から神鉾を流し、流れついた浜に斎場を設け、「禊祓い(みそぎはらい)」を行った。その折、領民が船を仕立ててお迎えしたのが始まりとされ、1000年以上の歴史を誇る。

Check!

陸渡御をじっくり見るなら、おすすめは大阪市中央公会堂(通称:中之島公会堂)前。大人数の女性陣が魅せる傘踊り、獅子舞、地車、鳳神輿と玉神輿など、祭りの熱量が弾ける様を堪能できる。

天神祭

開催日: 2025年6月下旬吉日~7月25日(金)宵宮7月24日(木)、本宮7月25日(金)
会 場: 大阪府大阪市北区天神橋2-1-8 大阪天満宮ほか

踊り

盆踊りは、平安中期の僧・空也上人が始め、鎌倉時代の時宗の開祖・一遍上人が全国に広めた「踊り念仏」を起源と考える説が有力。踊り念仏はお盆の行事と結びつき、先祖の霊を迎え、死者を供養するために踊られていた。

郡上おどり/岐阜

郡上おどり

一緒に踊りたくなる!熱気あふれる踊りの輪 ©郡上市観光連盟

4日間徹夜で踊り続ける

30夜以上にわたって続くロングランの祭りの中でも、8月13日から16日まで4日間踊り続ける「徹夜おどり」は注目だ。リピーターも多く、普段は静かな城下町が人であふれる様子は圧巻。街全体が踊り一色となる中、踊りの輪に入って踊るのも、缶ビール片手に熱気を満喫するのも郡上おどりの醍醐味。

由来

江戸時代に郡上八幡城主・遠藤慶隆が、士農工商の融和と町の一体感を深めるために藩内の踊りを城下町に集め、奨励したことから始まったといわれる。400年以上の歴史を持つ伝統芸能として、現在も愛されている。

Check!

郡上おどりは、誰でもすぐに参加できることが魅力。服装も自由で、特別な装備は一切不要だが、下駄があればなおgood!。踊り方はとても簡単で、踊りの輪に飛び込んでみれば、その楽しさにきっと夢中になる。

郡上おどり

開催日: 2025年7月12日(土)~9月6日(土)徹夜おどりは8月13日(水)~16日(土)

会 場: 岐阜県郡上市八幡町市街地

徳島市阿波おどり/徳島

天神祭

祭りのフィナーレを飾る圧巻の総おどり ©徳島県

踊り子も観客も巻き込む熱狂の渦

阿波おどりには、法被姿で力強くダイナミックに踊る「男踊り」と、浴衣に編み笠と下駄姿で踊る優美な「女踊り」があり、どちらもにぎやかな鳴り物の軽快なリズムに合わせて踊る。「連」と呼ばれる踊りのグループが多種多様で個性的な振り付けの踊りを披露し、街は熱気に包まれる。

由来

天正14(1586)年、徳島藩の藩祖・蜂須賀家政が城下の人々に城内での無礼講を許した際の踊りが始まりとする説のほか、鎌倉時代の念仏踊りから続く先祖供養の踊りを始まりとする説がある。

Check!

総勢約600人の踊り手による究極の阿波踊り(8月11日/アスティとくしま/有料)や、代表として選ばれた各連の踊り(8月12日~15日/あわぎんホール/有料)は屋内舞台で楽しめる。

徳島市阿波おどり

開催日: 2025年8月11日(月・祝)~15日(金)11日は屋内公演のみ
会 場: 徳島県徳島市(Sansan藍場浜演舞場、あわぎん南内町演舞場、紺屋町 株式会社バル演舞場、ローソンでハピろー!両国本町演舞場、新町橋 Uber | 電脳交通 演舞場、レッドブル 新町橋東おどり広場、レッドブル 両国橋南おどり広場、あわぎんホール、アスティとくしま)

※有料観覧席あり(詳細は上記サイト参照)

※有料観覧席は、販売条件、販売状況など詳細確認の上ご利用ください

※2025年7月1日現在の記事です。詳細はお問い合わせください。

others