伝統に敬意を払いながら既存の手法を吟味し常にアップデートする
「mondo」の宮木康彦さんからバトンを受け継いだのは恵比寿の鮨店「恵比寿えんどう」の遠藤記史さん。 日本の風土が育んだ上質な素材をさらに高みへと導く。
Words_TOMOMI KATO
Photographs_KIYOSHI TSUZUKI
Profile
遠藤 記史さん
1986年生まれ、東京都出身。鮨店を営む実家に育つも、18歳から単身イギリスにサッカー留学し、現地のクラブチームでもプレー。長い海外生活を経て、改めて日本の食文化の豊かさに気付き、25歳で帰国し鮨職人の道を志す。六本木や広尾の名店で修業を積み、2019年に「恵比寿えんどう」を開店。
「恵比寿えんどう」店主の遠藤記史さんは、実家が鮨店という環境で生まれ育ち、鮨職人の仕事をずっと間近に見てきた。とはいえ、当初は同じ道を進むつもりは無く、高校卒業後プロサッカー選手を目指し単身渡英。思いが変化したのは、海外生活の中で客観的に日本の食を見つめ直したからだという。
「特に生魚の美味しさは日本が一番。日本の食文化の素晴らしさに改めて気付いたことで、それまで距離を置いていた鮨への強い憧れが生まれました」
鮨をはじめとする和食の世界には、昔から変わらぬ伝統が脈々と息づいている。しかし遠藤さんは、その伝統を「ただ受け継ぐのではなく、常にアップデートさせていきたい」と語る。
「例えば現代には、江戸時代にはなかった冷蔵庫があります。にもかかわらず全て昔と同じ手法を踏襲していては、どうしてもちぐはぐな部分が出てきてしまう。先人たちの知恵と技術に敬意を払い、伝統を咀嚼した上で、未来へ繋ぐための進化を追求したいと考えています」
江戸前鮨では珍しい鰻の握りも、そのアップデートの表れだろう。「なぜ鮨には鰻がないのか?」という疑問を突き詰め、吟味し、現在の形に辿り着いた。鰻の握りにお茶をペアリングするのも、「恵比寿えんどう」ならではのアプローチだ。鮨店では「あがり」のイメージが根強いお茶を、料理の味を引き立てる存在として提案している。
「美味しいことはもちろん大前提ですが、美味しいだけの料理では魅力は半減してしまいます。時代の変化や流行に左右されない、芯の通った伝統に則りつつ、良い意味で固定観念を覆すような一貫を目指したいですね」
RESTAURANT INFO店舗情報
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恵比寿えんどう(えびすえんどう/恵比寿)
住所: 渋谷区恵比寿南1-17-2 4F▶︎MAP 電話番号: 03-6303-1152 営業時間: 12:00~、17:30~、20:30~ 休業日: 不定休 料金: 28,600円(税込) URL: https://ebisu-endo.jp/