かつて国内最大級の出力を誇り日本の近代化を支えた発電所。
湖面に立ち現れる堅牢な姿が往時の面影を今に伝える。
湖面に立ち現れる堅牢な姿が往時の面影を今に伝える。
Text_SAYAKA NAGASHIMA. 写真提供:伊佐市地域振興課
限られた時期にだけ姿を現す
「幻」と呼ぶにふさわしい、歴史の証人
湖の底に眠る遺構ーー。小説の一説のような建造物が鹿児島県伊佐市に実在する。鶴田ダムの水が減る5月から9月にのみ全貌を現す「曽木発電所遺構」だ。
曽木発電所は、明治42年に竣工した水力発電所だ。牛尾大口金山への電力供給を目的に、曽木の滝の水力を活用して建設された。当時においては国内最大級となる6700kWの出力を誇り、その余剰電力を活かして水俣にカーバイド工場が設けられた。これが日本最大級の化学会社の発展へと繋がったことから曽木発電所は「日本近代化学工業発祥の地」とも称される。
現在、内部への立ち入りは不可だが、対岸の公園から外観を望むことができる。外壁のみとなってなお、老兵のごとき威厳を放つ佇まい。歴史の重みをぜひ足を運んで感じてみてほしい。
中世ヨーロッパの古城を思わせる、重厚な煉瓦造りの外壁。冬は一部が湖面から覗くのみとなる。
明治期のポストカードに写された、かつての曽木発電所。創設者は近代化学工業の父、野口 遵(したがう)。平成18年登録有形文化財、平成19年近代化産業遺産に認定。
曽木発電所遺構展望公園
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住所: 鹿児島県伊佐市大口曽木 営業時間: 通年 料金: 無料 交通: 鹿児島空港より車で55分 お問合せは、伊佐市大口庁舎(0995-23-1311)まで
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